平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
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散散歩歩。(1104)ミステリーツアーに身を委ねて。(1)

旅(国内)

北浜の古いビルの1階にあるバーで飲んでいる。
独りになって、すこし考えたいというか、気持ちの整理をしたい時に来るお店だ。

綺麗に拭き上げられたカウンターの木のぬくもりが、乱れた凡の思考を、鎮静化させてくれる。

「マスター。ラスティペンをお願いします。」

そう言ってから、自分でも可笑しくなって、照れ笑いをした。

このくだりは、テレビドラマ「やすらぎの郷」の石坂浩二さんを真似たつもりだ。

暗い店内に、聞こえるか聞こえないかぐらいの音量で、プラターズの曲が流れている。
1杯目を飲み干して、凡の魂が、日常生活から解き放たれそうになった頃、隣に若い女が座った。

「マスター、ラスティペンをお願いします。」

おや、彼女もまた、やすらぎの郷を見ていたのだろうか。
カウンターに置かれた2杯目の凡のグラスを見て、ちょっと、驚いたようだ。

「あなたも、ドラマ見てたんですか。石坂浩二のファンだったりして。」
「ええ、あたしは、浅丘ルリ子さんのファンなんです。」

「あ、そうなんだ。じゃ、お互いに元夫婦のファンということになりますね。」
そういって、グラスを目の前に持ち上げた。

彼女は、後頭部に膨らみをもたせたボブヘアで、黒いスーツを決めている。
かなりの美人だ。

カウンターに置いたファイルには、英語が書かれているのだが、凡は、英語はまるでダメだものね。

彼女は、その資料に少し目を通したと思ったら、ファイルを閉じて、グラスの酒を半分ほど一気に飲んだ。

「英語の資料って、何かスゴイな。凡なんか、英語はサッパリ。」
「ああ、これですか。仕事で英語は使うもので、、、あたし、外交官なんです。」

「それはすごいな。じゃ、色んな国を飛び回ってるんですね。」
「ええ、まあ。あ、ちょっとゴメンナサイ。」
彼女は、掛かってきた電話に出る。

「オー、イエース。オー、イエース。ペラペーラ、ペラペーラ。サヨナーラ。」

電話が終わると、彼女は凡に言った。
「ごめんなさい。今度、プーチンさんと会うことになってますの。」
「へえ、じゃ今のは?」

彼女は、声をひそめて、「プーチンさんです。」と言った。

「へえ、プーチンさんも英語しゃべれるんだ。というか、英語で話をするの?」

そう聞いたら、急に彼女の顔色が変わった。
口を尖がらせて、ほっぺたを膨らませている。
いや、今時、そんな解りやすいすね方する人みたことないよ。

「あ、ごめん。そこには触れない方が良さそうですね。」
まだ、機嫌が直らない。

「だって、今の電話も国家機密なんでしょ。」
そういうと、その国家機密が気に入ったのか、急に笑顔になっていった。

「そうなのよ。これは秘密よ。」
「あ、そうだ。あなたのお名前をお聞きしていいかな。」
こんな美人に出会える機会は、滅多にない。

「ほへ?あたしの名前?ほへ?、、、うち、よう分からへん。」

鼻から息がもれもれの、アホの声で彼女は言った。
いやいや、名前ぐらい分るだろう。
というか、そのアホの声は何なんだ。

或いは、名前を言いたくないから、ワザとこんな風な演技をしているのか。

「この近くで仕事をしてるんですか?」
「ほへ?、、、ち・か・く?、、、ちんがく?、、、ちぐーく?、、、ちぐー?、、、ぐー?」

いやいやいや、またアホの声だよ。
しかも、近くという言葉が分からないの?
分かるでしょ。

最後には、「ぐー」になってるし、原形とどめてないやん。
「ぐー」なんて、意味わからないよ。

「ほへ?」
彼女は、笑顔で首をかしげて凡を見た。

いや「ほへ?」って、それ一体、何なのよ。

それにしても、ミステリアスだ。
ミステリアスな女に出会ってしまった。

仕事は、バリバリの外交官で、プーチンさんにまで、直に電話出来るエリート。
しかも、かなりの美人。

でも、プライベートを聞いたら、アホだ。
アホというより、不可解。

しかし、気になる女である。

凡は、この日常生活から解放された空間で、ミステリアスな女に惹かれていくのを感じていた。

彼女のキャリアに惹かれている訳じゃない。
彼女が美人だから惹かれている訳じゃない。
ミステリアスだから、こころ奪われてしまったのである。

そう、ミステリアスという要素ぐらい、人をしてドキドキさせるものはないだろう。

これは、旅についても同じことが言える。
目的地も分からない旅。

そんなミステリアスな旅は、凡をして夢中にさせる魔力を持っているような気がするのである。
そう、ミステリアスな旅。

詰まりは、ミステリーツアーである。

と、前振りが長くなりましたが、事は去年の11月に遡る。

凡が、朝起きて、布団の中で、まだ怠惰な時間を楽しんでいたら、ミニボンが、新聞の広告を見せて言った。

「こんなのあるよ。」

IMG_0010.JPG

見ると、クラブツーリズムの旅行の広告だ。

その中の、ミニボンが指さしたのは、ミステリーツアーだった。

どこへ行くか分からない旅。

当日になって、添乗員さんが、どこか知らないところに連れて行ってくれる。
ミステリーツアーというものがあることは知ってはいたが、参加したことは無かった。

団体ツアーというのも、結婚してからは、ほとんど行ったことが無い。

値段を見ると、ひとり65000円。
結構な金額だ。

これなら、海外旅行も出来そうな金額だよね。

でも、内容を見て、参加しても良いかと思った。
2泊ともSランクホテルだという。

んでもって、そのうちの1つは、「5つ星の宿」とある。
そんなホテルは泊まったことが無い。

しかも、ツアーだから、2泊3日の旅行中の7食が付いている。

凡は、その広告の一字一句を、舐めるように味わっていた。

新幹線区間は、グリーン車利用。
森に佇むクラシックリゾートホテル。
大パノラマ広がる展望露天風呂。
昼食は地元の名産にこだわった夫婦膳。
人気の観光地での街歩きやお買い物。

こんな贅沢な旅があるのだろうか。

しかも広告の写真のホテルは、如何にも、高級そうだ。

「行ってみようか。」
と、すぐにミニボンに答えた。

ミニボンとの旅行も久しぶりだしね。
それに、団体ツアーというのも、久しぶりだ。

自分が何も計画を立てなくても、旅行会社の添乗員さんが、どこかに連れて言ってくれて、美味しいものを食べさせてくれて、高級なホテルに泊めてくれる。

凡とミニボンは、だだ、出発地点に行って、あとは、すべて任せておけばいいのだ。

ただ、楽しいだけの旅じゃないか。

ということで、去年の11月にネットから予約を入れた。
そのミステリーツアーに、今年の1月の13日から15日まで行ってきたのであります。
今回は、そのレポートという事なのでございます。

まだ、今も続いているミステリーツアーの種明かしをすることになるかもしれませんが、まずもって、そのミステリーツアーのレポートであることを宣言しておきますので、もし、これから参加される予定のある方は、読まないでいてくださいね。

というか、凡のページなんか、見る人少ないし、検索してたどり着いてくれる人は、ミステリーツアーについて調べているということだもんね。

そこは別に、たどり着いて、良かったねというか、ありがとうという感じだと思うので、そのままレポートしたいと思うのであります。

さて、出発前の凡であります。

ミステリーツアーというものに初めて参加するのだけれど、どんな風にツアーが進んでいくのか興味津々なのでありまして、それに、ミステリーというからには、謎解きをしたくなるのは、人情というものでありましょう。

誰でも、参加を決めた人は、どこにいくのだろうかと、想像して楽しんでいるのじゃないかな。
その想像もまた、ミステリーツアーの楽しみの1つかもしれませんね。

ということで、申し込んだ時は、まだ漠然とした予想しか考えていなかった。

新幹線利用はグリーン車とあるからして、新大阪集合なら、西なら九州あたりか、或いは、山口とか。
2泊だから、博多に行って、そこから熊本とか大分を周るのかもしれない。

大分なら、別府温泉もあって、展望露天風呂というのもあるだろう。

或いは、東に向かったなら、東京方面だな。
そこから、草津温泉とか、福島あたりまで行くこともできるだろう。

博多も東京も、新幹線なら3時間あれば着くし、その後、観光する時間も十分に確保できる。

それに、何しろ、グリーン車だからね、どちらかというと、3時間ぐらい座り心地を楽しんでみたい。
そんな想像をして楽しんでいた。

このあたりは、夢が膨らむ時だよね。

そうしている間に、12月の終わりごろになって、「旅のしおり」なるものが送られてきた。

見てみると、往路は、新大阪に集合して、新幹線こだま708号で、名古屋まで移動。
名古屋から、特急ひだ5号で、「とある駅」まで移動とある。

んでもって、帰路は、「とある駅」から、特急しなの16号で、名古屋まで移動して、新幹線こだま735号で、新大阪まで帰ってくるというものだ。

ここまで書いたら、もう半分、答えを言っているようなものじゃない。

勿論、1日目の「とある駅」から3日目の「とある駅」の間は、まったく分からない。

でも、どこあたりへ行くのかは、もうこれで分かってしまった。

後で、添乗員さんが言うには、本当にミステリーなツアーもあるようで、当日まで分からないというツアーもあるそうだ。

新大阪駅に集合して、みんなが、新大阪集合なら、きっと新幹線だなと思っていたら、新大阪の在来線に連れていかれて、そこからサンダーバードというのもあったそうで、その時は、みんな「あれ?」みたいな感じだったそうだ。

ということで、使う列車が解ってしまったら、もう凡の謎解きも、詰めの段階に入ってしまう。

広告の写真から、ホテルを割り出した。

最近は、ネットで調べられるので、時間があれば、意外と簡単に見つけられてしまう。

謎を解くのは楽しいけれど、果たして、それがツアーとして楽しくなるのかは疑問ではあるが、凡は、面白がって、ホテルをまずは特定した。

広告に1泊目と2泊目という記載があるが、これは順序が逆になる。

凡の想像した答えは、こんな感じだ。

まずは、名古屋から高山本線で、高山に移動。
何故、高山かというと、ホテルが、ホテルアソシア高山リゾートだからだ。

となると、高山に着いて、まずは、観光することになるのだろうけれど、行くとなると白川郷あたりか。
合掌造りの集落があって、世界遺産にもなっている。

そこで、地元の食材にこだわった昼食を頂いて、午後は、高山市内観光。
そして、ホテルに宿泊。

2日目は、ホテルから蓼科へ移動。
理由は、ホテルが蓼科東急ホテルだからだ。

その間の観光地といえば、新穂高ロープウエイとか、去年行ったところと被るところがあるかもしれない。
んでもって、蓼科に泊る。

最終日は、多分、塩尻から特急に乗る筈だから、観光としては、諏訪湖周辺。
或いは、諏訪大社を1つ2つ周るのかもしれない。
パワースポットが1つぐらいコースに入っていても面白いじゃない。

と、そんな予想を立てて、期待に胸を膨らませていた。

別に予想が外れても、これまた楽しいし、それがミステリーツアーの面白さだろう。
むしろ、予想が外れることを期待したいと言うか、外れることを楽しみたい。

ホテルだけは、これは間違いないけれどね。
広告の写真が間違ってなかったらね。

それにしても、新幹線利用はグリーン車と、大々的に謳っていたけれども、「こだま」だったんだね。
しかも、新大阪から名古屋への移動。
微妙だ。

しかし、まあ間違いじゃない。
まずもって、ここで凡の予想が外れましたね。
なので、外れたことを楽しまなきゃなのであります。

ということで、胸を膨らませて、待っていると、ミステリーツアーの当日がやってきた。

コメント

  1. yukemuri より:

    お~、ミステリーツアーですか?
    自分は参加した事ありません
    なるほど、凡蔵さんぐらい旅慣れていればパンフレットの画像から泊まるホテルが特定できちゃうんですね
    泊まるホテルが分かれば訪れる観光地もほぼ予想が付きますよね
    新幹線のグリーンは嬉しいですが、こだまで大阪から名古屋ってのは短い気がしますね
    それでも1時間ちょっとは乗っているのでしょうかね
    ツアー代金としてはお高いので、良いホテル、美味しい食事、移動は豪華なバスなんでしょうね
    それはそれで楽しみですね!

  2. 平 凡蔵。 より:

    ありがとう、yukemuriさん。
    わたしも初めてのミステリーツアーだったんですよ。
    ワクワクドキドキでしたよ。
    んでもって、まったく考えずに参加するという方法もあるのでしょうけれど、
    予想して、当たった外れたって思いながら参加するのもあるでしょうし。
    どっちが楽しいのか難しいところですね。
    泊まるホテルは、広告の写真が、ここまで載ってますからね。
    クラシックホテルとか、暖炉の写真とか、地域が解ればネットで検索したら、
    意外と簡単に見つけられたんですよね。
    今回は、Sランクホテルといことで、ちょっと豪華な旅になるんじゃないかと期待して参加しましたよ。
    なんせ、そこそこの値段のツアーだし。

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