平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
どれも、すぐに読めちゃう短編なので、読んで頂けたら、うれしいです。

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散散歩歩。(276)アイラブユー・ほたえてくれ!みゆきさーん。(42)

渋谷はいいですね。
人が多くて、お店も多い。
駅前のスクランブル交差点なんて、自分がドラマの主人公になった気分だ。
知らない人とすれ違う瞬間、ひょっとして凡に縁のある人と、今この瞬間に擦れ違っているかもしれないなんて想像すると、何度も交差点を渡りたくなる。
出会いが恋しい寂しがり屋さん。
さて、どのお店に入ろうかな。
沢山のビルがあって、どのビルにも沢山のお店があるのだけれど、チェーン店が多くて、入る気がしない。
チェーン店が嫌な訳ではないのだけれど、1階に入り口がなくちゃ、どうも1人では入り難い。
ぶらぶらと駅周辺を歩き回る内に、1軒のお店にしようと思った。

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「山家」(やまが)さん。
小さなお店だけれど、カウンターもあり、お客さんで賑わっている。
何より大衆的だ。
お店に入って、カウンターの一番奥のレジに近い場所に腰かける。
まずは、生ビール。
そして、焼き鳥がメインのお店なので、ネギ身と手羽先と、ポテトサラダを注文。

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値段を見ると、店構えの割には、やや高めの料金設定のように感じる。
ただ、これは東京価格なのだろうか。
東京は、何でも少し高い。
凡の後ろは、2人掛けのテーブルで、満席である。
お店の奥には4人掛けのテーブルがあり、もうすっかり出来上がったサラリーマンが、店員のお姉さんに話しかけては、嬉しそうにしていた。
ここのお店は、料理を作る男性以外は、みんな中国人だった。
表の看板には、「和風居酒屋」とある。
わざわざ、居酒屋に和風をつけなくてもよさそうなものである。
大体において、やきとりは、和風だろう。
それにしても、和風居酒屋で、店員が中国人とは、これもまた乙なものではある。
気が付くと、五輪真弓の「少女」が流れていた。
懐かしいなあ。
カウンターを見ると、凡の左横は、帽子を被ったままホッピーを飲んでいる中年男性。
そして、飲みながら本を読んでいるのです。
わざわざ、今読まなくてもねえ。
アテにしているのは、いわし刺だろう。
ほとんど手を付けていない。
その状態で、ホッピーの焼酎だけを追加した。
ここでは、「中」というそうです。
ややあってお勘定をしたときに、お姉さんの言う金額が聞こえた。
1170円。
安い。
メニューで確認すると、いわし刺が500円、ホッピーセットが400円、中が270円の合計である。
詰まりは、彼はたぶん仕事の帰りに、疲れた体をちょっと休憩させようと、毎日のように、このお店に通っているのだろう。
だから、お金も続かないから、アテはそんなには注文できない。
或いは、ローンの残っている郊外の家が遠くて、そしてお腹も空いているし、長い時間乗ってなきゃいけない電車が来るまでに、ちょっと飲みたいという気持ちなのかもしれない。
そういう意味では、やっぱり1人でも入りやすいお店であって、これは中々にいいお店だと思う。
そして、そのまた左には、やたらに料理を注文する40代ぐらいの男性と、そのまた左には、これまたホッピーを飲みながら文庫本を読む50代ぐらいの男性。
そして、その左には、、、、ん?
何と女性が1人で座っているではありませんか。
お店に入る時に気が付いていれば、その隣にも座れたものを、気が付かなかった。
しっくりと落ち着いた黄色のセーターを着ていて、髪は肩ぐらいの長さである。
これは、どうしても御尊顔を拝さなければいけません。
こんなお店に1人で来るレディは、どんな人なんだろう。
壁のメニュを見る振りをしながら、体を反らせてみたりするけれど、間の中年男性群に阻まれて、見ることができ
ない。
30代か40代か。
時々生まれる隙間から、観察すると、レバーの串を頬張っていた。
仕事帰りに、居酒屋のカウンターで、ホッピーを飲みながら、レバーの串を頬張る。
きっと仕事も、頑張る人なんだろうな。
だから、疲れた時は、こんなお店で元気のでるものを食べたくなる。
それに、きっと独身だ。
恋をすることがあっても、どこか「この人でいいの。」って問いかける自分がある。
そこで立ち止まってしまう。
或いは、男性っぽいところがあって、みんなから女性としてみてもらえない。
だから、好きな人がいても、自分なんて女として見られないしと告白するのを躊躇ってしまう。
自分だけ、ひとり。
自分だけ、取り残されている感覚。
ホントは泣き出しそうなぐらい寂しいんだけれど、泣く場所が無い。
家で泣くなんて悲し過ぎる。
1LDKの真っ暗な部屋に帰って、サークラインのスイッチを入れる。
1人掛けのソファに置かれたキティちゃんのぬいぐるみが「おかえりなさい。」と笑った気がした。
昼間の仕事ぶりから想像できないが、意外にもキティちゃんグッズが、唯一自分を希望いっぱいだったころの少女に自分を戻してくれる。
ぬいぐるみを膝において、にらめっこ。
「笑うとだめよ、あっぷっぷー。」
いつも先にキティちゃんが笑ってくれる。
笑えない、自分。
上京した時に、家から持って来たCDプレーヤーのスイッチを入れる。
「背広の下のロックンロール」(中島みゆきさん)
さて、明日も仕事に行きますか。
ちょっとだけ元気が出た気がした。
そんな彼女の顔を見たいのだけれど、中年男性がじゃまだなあ。
でも、そんな人に違いない。
もう、どうしても彼女を抱きしめてあげたくなった。
ギューっと抱きしめて、そのココロを温めてあげたい。
とはいうものの、急に抱きしめると痴漢になってしまう。
「東京の居酒屋で、泣きながら抱き着く痴漢を逮捕。」
そんな新聞記事が載ったらミニボンが可哀想だ。
「うちの主人、みゆきさんに会いに行くって東京に出かけていったんです。
でも、会えないから、その人がみゆきさんだっていう幻覚をみたんじゃないでしょうか。普段は、そんなことをする人じゃないんです。善良な1小市民なんです。」
なんて、ミニボンのコメントが載ったりしてね。
更に隣で飲んでいた男性のコメントが続く。
「急に、わーんって泣き出したと思ったら、みゆきさーんって叫びながら女性に抱き着いたんですよ。あの時の目を思い出すと、今でも怖くなりますよ。」
人の作り話ほど、怖いものはない。
彼女がお勘定をする時に見ると、もう少し年齢が上かもしれないと思った。
でも、どうも気になる女性である。
こんな女性は、好きであります。
そして、明日からも頑張ってねと、見送った。
さて、凡がお勘定をすると4000円ちょっとだった。
外に出ると、冷たい風と、飲食店の雑多な匂いがジャケットの隙間から滑り込んできた。
もう少し、東京の、渋谷の夜を感じたい、そんな気分である。

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(折角東京に来たんだから、ホッピーもたのんだ。)

コメント

  1. うかれぶた より:

    やっぱり、渋谷に行った凡さん… なんかかわいいひよこ
    そして、わかりまするんるん
    確実に、みゆきさまが 歩んで おられた路をexclamation×2
    同じ 地面と風景の中を、自分も 歩んでいる感激ぴかぴか(新しい)
    ♪縁なき人、顔をあわせ、すべもなくすれ違う…♪ 人びとのほうが圧倒的に多いんですが、そんな事は関係ない…
    私も、東急本店の何歩か先に、住み込みで働いてた時は、夜会で 毎日 みゆきさまが 何歩か目におられるるんるん と、ゆーだけで感涙しましたし。。
    ♪スクランブル交差点の渡り方♪ は、絶対に 渋谷ですょねぇ… 最後の、はァ~ぁダッシュ(走り出すさま)って、溜め息 あたしも同じでしたもん猫
    だから、私、人ごみより、代々木公園とNHKを抜けて 原宿とか表参道まで、
    みゆきさまに読んで貰った 犬と散歩するのが好きでしたぴかぴか(新しい)
    考えると、今流行りのパワースポットなんですねぴかぴか(新しい)
    明治神宮から表参道への方向。本能が導かれていたのかも。
    みゆきさまも渋谷周辺のパワーを既にお見通しなんですね猫

  2. うかれぶた より:

    私も、渋谷、杉並、世田谷、中野、新宿は 命ある時に もう一度は廻りたいと まだ 想って おりますの猫
    私の故郷のような 土地ですから。
    ここからは、さほど旅とまでいかず、日帰りで行ける距離では ありますが…
    人混みが 苦手で、方向音痴ときてるボケーっとした顔
    よくも住んでいたと振り返るが。
    東京とは、人混みの街なのである。
    それが懐かしいのもある。
    某、有名デザイナーの縫製をしているので、
    去年春、六本木のショーに、仕事帰り行ったのが 最近。
    しかも、最近のsubwayは全く未知なるものだったので、仕事帰りの友達に付き合って貰ったのだ冷や汗それでも、ゆっくり食事の間もなく満員電車でとって帰った。
    夏は、東京駅を乗り継いだのみ軽井沢だったし…
    東はさっぱり わからんふらふら台風
    秋のショーは、出来立ての渋谷ヒカリエだったのだが…
    new好きの社長のお供はしたくない… ので、
    やっぱ一人 旅がいいね猫
    大丈夫の言葉ありがと

  3. 凡蔵。 より:

    ありがとう、うかれぶたさん。
    やっぱり行っちゃいましたよ。
    だって、みゆきさん読本で、かつてのみゆきさんの定宿だって書いてあったんだもん。
    だれだって、泊まりたくなるよね。
    ね。
    実際に、みゆきさんが、このホテルのこのドアを入ってきて、どこかは知らないけれど、どこかの部屋に泊まっていたんですよ。
    できることなら、同じ部屋に泊まりたかったけれどもね。
    でも、今、同じ空気を吸っていると思うとうれしいです。
    当時のみゆきさんは、この部屋で、何を考えてたんだろうなって思ったです。
    スクランブル交差点は、大阪にもあるけれど、ぜんぜん違う。
    人の多さが違うね。
    でも、この交差する人が、ひょっとして、ぼくに縁のある人なんじゃないかって思うのは、まだ救いがあるのかもしれないな。
    この交差する人が、ひょっとしたら、ぼくの恋人になるあかもってね。
    でも、実際は、妄想だけれど。
    もうそうは、タダだもんね。
    それにしても、うかれぶたさんは、かっこいいなあ。
    有名デザイナーの縫製なんてさ。
    何か、東京してるっていうイメージ。

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