平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
どれも、すぐに読めちゃう短編なので、読んで頂けたら、うれしいです。

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散散歩歩。(275)アイラブユー・ほたえてくれ!みゆきさーん。(41)

渋谷東武ホテルにチェックインをすると、少し広い部屋にアップグレードしていますよと、カウンターの女性が言った。
629号室。
部屋に入ると、思ったより狭い。

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もとより部屋が狭いという事は知っていた。
インターネットの口コミをチェックしてみると、誰もが狭いということと、古いということを書いている。
なので、狭いだろうとは思ったのですが、アップグレードしていますよと、わざわざ言ったほどには、広くはなかったということであります。
ただ、多分だけれど、ベッドがシングルではなくて、セミダブルだということ。
これをグレードアップと言ったのでしょうね。

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バス、トイレも、普通のユニットで、やや狭いかもしれない。

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そして、外を見ようとカーテンを開けると、すりガラスだった。
外が見えない。
普通のアップグレードしていない部屋だったら、外が見えたのにね。
でも、まあ寝るだけだから。
ただ、凡にとって、このホテルの、この部屋について、どうのこうのいう気持ちは全くない。
東京に今回泊まるなら、みゆきさんの泊まっていたこのホテルしかないからです。
それにしても、みゆきさんは何号室に泊まっていたのだろう。
そして、夜をどういう風に過ごしていたのだろうか。
みゆきさんの部屋にはインスタントラーメンが山のように積まれていたという噂も聞く。
或いは、部屋を出て、渋谷のどこかに1人で食べに行くというようなことがあったのだろうか。
それでは、凡も晩御飯でも食べに出かけるとしましょうか。
ロビーに下りると、ソファがあった。

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みゆきさんの「悪女」も、こんなロビーからイメージしたのだろうか。
♪ホテルのロビーも、いつまで居られるわけもな~い♪
ちょっと、腰かけてみて悪女のフリ。
♪涙、ぽろぽろ、ぽろぽろ、流れて涸れ~てから♪
なんてね。
でも、どうして凡が悪女にならなきゃいけないのよ。
しかも、泣く必要があるのだろうか。
女じゃなくて、男だしね。
そしてしかも、悲しくなんてなくて、嬉しくて嬉しくて堪らないのに。
この涙は歓喜の涙なんでありますよ。
誰もいないロビーで、1人笑いながら泣く中年男性。
「あはははー、うぇーん。」
人が見たら怖いだろうね。
「ママ、どうしてあのオジサン笑いながら泣いてるの?」
「アカン、見たらアカン。」
「何で見たらアカンの。」
「ちょっと頭おかしい人やから、近くにいったらアカンで。」
上品なママと子供の、憐みの目。
「おじさんだって恋をするんだからね。恋をしたらね、みんなこうなっちゃうんだよ。だから君も大人になったら、こうなっちゃうんだよ。自分でも怖いよ。他人から見ても怖いよ。君も怖くなっちゃうんだよ。」
腑抜けた目で見返した。
実際には涙は流れなかったが、不審人物であることには間違いがない。
ホテルを出ると、その周りを歩いてみる。
みゆきさんの行ったかもしれないお店があるんじゃないだろうか。
でも、たとえあったとしても、分らないよね。
全身の感覚を総動員して、感じ取ろうとしたが、駄目だった。
仕方なく、今日の晩御飯のお店を探しながら駅の方に向かった。
若い男女が、右から左へ、左から右へ、前から、そして後ろから、笑顔で、そして無表情で、渋谷全体がスクランブル交差点のように、それぞれの人生が交差している。
そのスクランブルの真っただ中にいることが、まだまだ繋がる縁の可能性を凡に気づかせてくれた。
「待っててね、可愛いおねえちゃん。」
えっ?そっちの縁かいな。

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(夜の渋谷東武ホテル)

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(凡の泊まった部屋は、建物の一番端っこで、ドアを開けると細い部分を抜けたところにベッドがある。)

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(楽天から予約を入れたので、ポカリスエットを特典で、もらった)

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