渋谷はいいですね。
人が多くて、お店も多い。
駅前のスクランブル交差点なんて、自分がドラマの主人公になった気分だ。
知らない人とすれ違う瞬間、ひょっとして凡に縁のある人と、今この瞬間に擦れ違っているかもしれないなんて想像すると、何度も交差点を渡りたくなる。
出会いが恋しい寂しがり屋さん。
さて、どのお店に入ろうかな。
沢山のビルがあって、どのビルにも沢山のお店があるのだけれど、チェーン店が多くて、入る気がしない。
チェーン店が嫌な訳ではないのだけれど、1階に入り口がなくちゃ、どうも1人では入り難い。
ぶらぶらと駅周辺を歩き回る内に、1軒のお店にしようと思った。
「山家」(やまが)さん。
小さなお店だけれど、カウンターもあり、お客さんで賑わっている。
何より大衆的だ。
お店に入って、カウンターの一番奥のレジに近い場所に腰かける。
まずは、生ビール。
そして、焼き鳥がメインのお店なので、ネギ身と手羽先と、ポテトサラダを注文。
値段を見ると、店構えの割には、やや高めの料金設定のように感じる。
ただ、これは東京価格なのだろうか。
東京は、何でも少し高い。
凡の後ろは、2人掛けのテーブルで、満席である。
お店の奥には4人掛けのテーブルがあり、もうすっかり出来上がったサラリーマンが、店員のお姉さんに話しかけては、嬉しそうにしていた。
ここのお店は、料理を作る男性以外は、みんな中国人だった。
表の看板には、「和風居酒屋」とある。
わざわざ、居酒屋に和風をつけなくてもよさそうなものである。
大体において、やきとりは、和風だろう。
それにしても、和風居酒屋で、店員が中国人とは、これもまた乙なものではある。
気が付くと、五輪真弓の「少女」が流れていた。
懐かしいなあ。
カウンターを見ると、凡の左横は、帽子を被ったままホッピーを飲んでいる中年男性。
そして、飲みながら本を読んでいるのです。
わざわざ、今読まなくてもねえ。
アテにしているのは、いわし刺だろう。
ほとんど手を付けていない。
その状態で、ホッピーの焼酎だけを追加した。
ここでは、「中」というそうです。
ややあってお勘定をしたときに、お姉さんの言う金額が聞こえた。
1170円。
安い。
メニューで確認すると、いわし刺が500円、ホッピーセットが400円、中が270円の合計である。
詰まりは、彼はたぶん仕事の帰りに、疲れた体をちょっと休憩させようと、毎日のように、このお店に通っているのだろう。
だから、お金も続かないから、アテはそんなには注文できない。
或いは、ローンの残っている郊外の家が遠くて、そしてお腹も空いているし、長い時間乗ってなきゃいけない電車が来るまでに、ちょっと飲みたいという気持ちなのかもしれない。
そういう意味では、やっぱり1人でも入りやすいお店であって、これは中々にいいお店だと思う。
そして、そのまた左には、やたらに料理を注文する40代ぐらいの男性と、そのまた左には、これまたホッピーを飲みながら文庫本を読む50代ぐらいの男性。
そして、その左には、、、、ん?
何と女性が1人で座っているではありませんか。
お店に入る時に気が付いていれば、その隣にも座れたものを、気が付かなかった。
しっくりと落ち着いた黄色のセーターを着ていて、髪は肩ぐらいの長さである。
これは、どうしても御尊顔を拝さなければいけません。
こんなお店に1人で来るレディは、どんな人なんだろう。
壁のメニュを見る振りをしながら、体を反らせてみたりするけれど、間の中年男性群に阻まれて、見ることができ
ない。
30代か40代か。
時々生まれる隙間から、観察すると、レバーの串を頬張っていた。
仕事帰りに、居酒屋のカウンターで、ホッピーを飲みながら、レバーの串を頬張る。
きっと仕事も、頑張る人なんだろうな。
だから、疲れた時は、こんなお店で元気のでるものを食べたくなる。
それに、きっと独身だ。
恋をすることがあっても、どこか「この人でいいの。」って問いかける自分がある。
そこで立ち止まってしまう。
或いは、男性っぽいところがあって、みんなから女性としてみてもらえない。
だから、好きな人がいても、自分なんて女として見られないしと告白するのを躊躇ってしまう。
自分だけ、ひとり。
自分だけ、取り残されている感覚。
ホントは泣き出しそうなぐらい寂しいんだけれど、泣く場所が無い。
家で泣くなんて悲し過ぎる。
1LDKの真っ暗な部屋に帰って、サークラインのスイッチを入れる。
1人掛けのソファに置かれたキティちゃんのぬいぐるみが「おかえりなさい。」と笑った気がした。
昼間の仕事ぶりから想像できないが、意外にもキティちゃんグッズが、唯一自分を希望いっぱいだったころの少女に自分を戻してくれる。
ぬいぐるみを膝において、にらめっこ。
「笑うとだめよ、あっぷっぷー。」
いつも先にキティちゃんが笑ってくれる。
笑えない、自分。
上京した時に、家から持って来たCDプレーヤーのスイッチを入れる。
「背広の下のロックンロール」(中島みゆきさん)
さて、明日も仕事に行きますか。
ちょっとだけ元気が出た気がした。
そんな彼女の顔を見たいのだけれど、中年男性がじゃまだなあ。
でも、そんな人に違いない。
もう、どうしても彼女を抱きしめてあげたくなった。
ギューっと抱きしめて、そのココロを温めてあげたい。
とはいうものの、急に抱きしめると痴漢になってしまう。
「東京の居酒屋で、泣きながら抱き着く痴漢を逮捕。」
そんな新聞記事が載ったらミニボンが可哀想だ。
「うちの主人、みゆきさんに会いに行くって東京に出かけていったんです。
でも、会えないから、その人がみゆきさんだっていう幻覚をみたんじゃないでしょうか。普段は、そんなことをする人じゃないんです。善良な1小市民なんです。」
なんて、ミニボンのコメントが載ったりしてね。
更に隣で飲んでいた男性のコメントが続く。
「急に、わーんって泣き出したと思ったら、みゆきさーんって叫びながら女性に抱き着いたんですよ。あの時の目を思い出すと、今でも怖くなりますよ。」
人の作り話ほど、怖いものはない。
彼女がお勘定をする時に見ると、もう少し年齢が上かもしれないと思った。
でも、どうも気になる女性である。
こんな女性は、好きであります。
そして、明日からも頑張ってねと、見送った。
さて、凡がお勘定をすると4000円ちょっとだった。
外に出ると、冷たい風と、飲食店の雑多な匂いがジャケットの隙間から滑り込んできた。
もう少し、東京の、渋谷の夜を感じたい、そんな気分である。
(折角東京に来たんだから、ホッピーもたのんだ。)
コメント
やっぱり、渋谷に行った凡さん… なんかかわいい



と、ゆーだけで感涙しましたし。。
って、溜め息 あたしも同じでしたもん
と散歩するのが好きでした


そして、わかります
確実に、みゆきさまが 歩んで おられた路を
同じ 地面と風景の中を、自分も 歩んでいる感激
♪縁なき人、顔をあわせ、すべもなくすれ違う…♪ 人びとのほうが圧倒的に多いんですが、そんな事は関係ない…
私も、東急本店の何歩か先に、住み込みで働いてた時は、夜会で 毎日 みゆきさまが 何歩か目におられる
♪スクランブル交差点の渡り方♪ は、絶対に 渋谷ですょねぇ… 最後の、はァ~ぁ
だから、私、人ごみより、代々木公園とNHKを抜けて 原宿とか表参道まで、
みゆきさまに読んで貰った
考えると、今流行りのパワースポットなんですね
明治神宮から表参道への方向。本能が導かれていたのかも。
みゆきさまも渋谷周辺のパワーを既にお見通しなんですね
私も、渋谷、杉並、世田谷、中野、新宿は 命ある時に もう一度は廻りたいと まだ 想って おりますの

それでも、ゆっくり食事の間もなく満員電車でとって帰った。


私の故郷のような 土地ですから。
ここからは、さほど旅とまでいかず、日帰りで行ける距離では ありますが…
人混みが 苦手で、方向音痴ときてる
よくも住んでいたと振り返るが。
東京とは、人混みの街なのである。
それが懐かしいのもある。
某、有名デザイナーの縫製をしているので、
去年春、六本木のショーに、仕事帰り行ったのが 最近。
しかも、最近のsubwayは全く未知なるものだったので、仕事帰りの友達に付き合って貰ったのだ
夏は、東京駅を乗り継いだのみ軽井沢だったし…
東はさっぱり わからん
秋のショーは、出来立ての渋谷ヒカリエだったのだが…
new好きの社長のお供はしたくない… ので、
やっぱ一人 旅がいいね
大丈夫の言葉ありがと
ありがとう、うかれぶたさん。
やっぱり行っちゃいましたよ。
だって、みゆきさん読本で、かつてのみゆきさんの定宿だって書いてあったんだもん。
だれだって、泊まりたくなるよね。
ね。
実際に、みゆきさんが、このホテルのこのドアを入ってきて、どこかは知らないけれど、どこかの部屋に泊まっていたんですよ。
できることなら、同じ部屋に泊まりたかったけれどもね。
でも、今、同じ空気を吸っていると思うとうれしいです。
当時のみゆきさんは、この部屋で、何を考えてたんだろうなって思ったです。
スクランブル交差点は、大阪にもあるけれど、ぜんぜん違う。
人の多さが違うね。
でも、この交差する人が、ひょっとして、ぼくに縁のある人なんじゃないかって思うのは、まだ救いがあるのかもしれないな。
この交差する人が、ひょっとしたら、ぼくの恋人になるあかもってね。
でも、実際は、妄想だけれど。
もうそうは、タダだもんね。
それにしても、うかれぶたさんは、かっこいいなあ。
有名デザイナーの縫製なんてさ。
何か、東京してるっていうイメージ。