平 凡蔵。の 創作劇場

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散散歩歩。(1118)青春18きっぷの旅なのに、私鉄がメインの旅なのね。(4)

みゆきさんの妄想

前回のアップから、また随分と時間が経ってしまいましたが、続きであります。
お付きあい頂ければ、うれしです。

3月5日(土曜日)。
青春18きっぷで、静岡まで行って、1泊して、そして、次の日、大井川鐡道を楽しんだ凡なのであります。

この後は、東海道線を、ひたすら西に向かって乗り続けるだけなのでありますが、名古屋で途中下車でもしようかとも思っているところなのです。

家から遠く離れたところで飲むビールは、何とも楽しい。
1泊して、その土地で飲む開放感とまではいかないけれども、その日のうちに、飲み過ぎの状態に至らない程度の状態で、家まで帰らなければいけないという制約もあるけれども、やっぱり、大阪の地元で飲むよりは、遥かに楽しいのであります。

ということで、JRの金谷駅を、1514時に出発して、豊橋で乗り替え、名古屋に、1743時に着。

今日の内に帰らなきゃいけないので、もう店を探している時間は無い。
ということで、吉例に従って、ミユキステーションホテルの1階にある割烹「みゆき」さんに行った。

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先客は、2組だったか。
勿論、若い女の子なんていない。
テーブル席もあるが、いつもの壁に向かったカウンターに座る。
ビールと、名古屋名物の味噌カツと手羽先のセットを注文。

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この店はね、絶品だという料理は無いが、不味いものもない。
詰まりは、どれを頼んでも、普通に美味しいのだ。
だから、安心して、のんびりと飲んでいられる。

今日のような旅の終わりに立ち寄った店で、絶品料理なんて出されたなら、疲れてしまうだろう。
作る方も真剣なら、食べる方も真剣にならなきゃ申し訳ない気もするわけで、いざ、いざ、これが絶品だ、と出されたものを、いざ、いざ、絶品を頂きますぞ、みたいなことになってしまう。
疲れるよね。

たまには、それも良いが、そんなものを食べた日にゃ、また旅を続けたくなるに違いない。

旅の終わりには、突き詰めれば、お茶漬けのようなものが似つかわしいと思うのだが、とはいうものの、まだ、実際には家に帰った訳じゃないし、言うなら、旅の途中だ。

遠くで飲むビールは、特に美味いと冒頭に書いたのは、本当の気持ちで、ビールを美味しく飲むためには、やっぱり、料理も、そこそこ特別なものを食いたい。
詰まりは、お茶漬けと、豪華の中間が、この「みゆき」さんの料理という訳なのだ。

それにしても、最近、テレビの料理番組や旅番組で、「絶品」という言葉を頻繁に聞くが、料理に対して、やたらと絶品を求める姿勢と言うのは、どうかと思う。
絶品至高主義とでも言えば良いのだろうか。

そもそも、料理に限らず、最高を求めるということは、ナンセンスな事だということに気が付かなきゃいけない。

例えば、この前も、芸能人が、どこかの漁村だったかに行って、地元の新鮮な魚を食べているのだが、絶品だとコメントしていた。
まあ、番組上の口だけのコメントだとは思うが、もしそれが本当なら、それは不幸なことである。

その魚が絶品なら、その地元の人が、たまに息抜きに旅行に行ったとしてさ、ホテルで夕食となる。
当然、刺身などの魚がテーブルに乗ることもあるだろう。
でも、それは、普段食べている絶品よりも、低ランクの魚ということになるわけで、折角の旅行の夕食が台無しになってしまう。

いや、そんな例は、数少ないだろうか。
でも、ある料理が絶品だとしても、さらに、その上の絶品がある訳で、そのさらに上の絶品にも、さらにさらに、その上の絶品があるのである。

いや、あるというか、それを求めたくなるのが、人間の欲なのである。

キリの無い絶品を求めて、気が付いたら、自分を失っているということもあるかもしれないよ。
というか、絶品と言うのは、疲れるのである。

もし、自分の家の親が、料理の専門家だったらと思うと、ぞっとする。
家に帰ったら、親が、ホテルのディナーのような料理を作ってくれるんだ。
毎日、毎日、絶品の料理。

まず以て、そんな料理を毎日食べ続けることは可能だろうか。

それに比べて、普通の家庭の料理が、毎日、待ち遠しいのは、普通に美味しいからだろうね。
詰まり、絶品じゃない。
だから、毎日毎日、食べたいと思うのである。

家庭料理が、最高の料理だと言うところだろうか。

考えてみれば、凡の家庭料理というと、まずは、母親の料理を思い浮かべるけれども、冷静になって考えると、実は違う事に気が付く。

凡の家庭料理とは、ミニボンの作った料理なのだ。
母親の作ってくれた料理を食べて来た年月より、ミニボンの作ってくれた料理を食べて来た年月の方が長くなってしまった。
月日の経つのは、今更ながら、早いものであります。

ミニボンの料理については、今日は、コメントはしないでおきたい。
こんな愚で凡で、だらしない凡に、料理を作ってくれるということだけで、感謝すべきことに違いないからであります。

よく、こんな凡に、毎日毎日、食事を作っていて、平気だなと思う。
というか、平気じゃないのかもしれないのだけれどね。
普通に考えるなら、面倒くさいことであるに違いない。

ということで、名古屋のミユキステーションホテルの割烹「みゆき」さんで凡は、旅の終わりに飲んでいる

旅の最後に食べる料理に相応しい、普通に美味しい料理である。
今回の旅は、大井川鐡道に初めて乗って、意外と楽しかった。

でも、出会いはなかったね。
もし、出会いがあって、今飲んでいる凡の横に、素敵な女性がいたなら、それは、まさにドリームだっただろう。

そして、それが、みゆきさんなら、スペシャルなドリームということになるのだろう。

「今日の、大井川鐡道、楽しかったね。」
「ほら、シートがボロボロでさ。そんでもって、その修理の仕方が。」
「雑!」
みゆきさんは、凡が「雑!」と言ったときに、同時に「雑!」って、人差し指を凡に向けて、うれしそうに言った。

「本当に、もう大阪に帰っちゃうんだ。」
「みゆきさんも、これから東京なんだね。」
凡は、みゆきさんの盃にお酒を注いだ。

「あのさ、今日、名古屋に泊まっちゃおうか。あたしたち。」
みゆきさんが、凡を見ないで言う。

あたしたち、、、か。
凡は、みゆきさんを抱きしめたくなった。

「みゆきさん、明日、仕事無いの?」
「あるよ。」
「だよね、凡もあるし。」
そう言ったら、みゆきさんが寂しそうに言った。
「だよね。うん。」

あ、ごめん、一緒に名古屋で泊まりたくないっていう意味じゃないんだ。
でも、それをあえて説明するのも傷つけてしまいそうで言い出せない。

というか、臆病な凡は、「うん、泊まろう。」と言う勇気がないだけなんだ。
それから、急に話が弾まなくなって、気まずい雰囲気だなと思っていたら、みゆきさんが、歌いだした。

♪♪ 途に倒れて だれかの名を 呼び続けたことが ありますか ♪♪
(中島みゆきさん 「わかれうた」)

「み、みゆきさん、どうしたの、急に歌いだして。しかも、店の床にうつ伏せになって、寝ころんだかと思ったら、急に起きて座って、スリスリと横に移動したり、、、。」

♪♪ 人ごとに言うほど たそがれは 優しい人好しじゃありません ♪♪

「みゆきさん、大丈夫か。っていうか、凡と別れなきゃいけないから、『わかれうた』ちゅう訳なの?というより、その歌い方は、夜会の『邯鄲』バージョン。うん、まあ、普段見られない姿を見れるのは幸せだけど、お客さんも店の人も集まってきて、不思議な目でみゆきさんを見てるよ。」

みゆきさんは、注目を浴びているのを知りながら歌い続ける。

「ちょ、ちょっと、店のお姉さんまで、みゆきさんの歌に合わせて踊りだしちゃったよ。いや、そんな腕をクルクルまわして、え、それって、モンキーダンス?そんなの若い子知らないよ。っていうか、そっちのオッチャン、ズボン下して、腰をクネクネ?いや、みゆきさんの歌で、そんな踊り踊らないでくれるかなあ。っていうか、ふたりとも『わかれうた』でよく踊れるもんだね。」

と、そんなヘンテコな時間は過ぎて、いよいよ、みゆきさんとの別れの時間。

みゆきさんは、凡を見送りに在来線のホームにいた。

「ねえ、凡ちゃん。あたしたち、これから駆け落ちしちゃおうか。」
「無理だよ。だって、大阪には、ミニボンも待ってるし。」

「うん。解ってるよ。言ってみただけ。じゃ、あたし、東京へ帰るね。」
そう言って、みゆきさんは、ホームを歩いて行ってしまった。

そして、ホームに、大垣行きの特快が、入ってきた。
電車に乗り込み、ドアが閉まろうとした瞬間、凡は、みゆきさんへの愛に気づく。

「やっぱり、みゆきさんを愛してる。」
ホームに飛び出して、みゆきさんの消えていった後を追いかける。

「み、みゆきさーん。愛してるよー。」
誰が見ていたって構わない。
凡は、みゆきさんへ愛を伝えたかった。

そして、ホームの端まで走って行ったら、ホームの立ち食いそばで、みゆきさんは、きしめんを食べていた。

絶品の笑顔で、「あーっ、やっぱり名古屋に来たら、きしめんよね。」
大きな声でそう言って、まわりのサラリーマンと大笑いをしている。

凡の事は、もういいのね。
凡の事は、忘れちゃったのね。

その幸せそうな顔を見て、凡は、次の電車に、静かに乗り込んだ。
さようなら、みゆきさん。
さようなら、名古屋。

というか、名古屋のミユキステーションホテルの割烹「みゆき」さんで、みゆきさんの妄想をして、また、フラれてしまった。

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凡は、熱燗に切り替えて、イワシの干物と、めんたい玉子焼きを、頼む。
このイワシは、絶品に美味かったです。

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最後に、ご飯を頂こう。
うな丼の小。
これは、半身だと書いてあって、1500円だった。

贅沢をしたい気分だったが、そこは、金額を見て、小にしたが、ご飯の上の切り身3切れは、すこしばかり寂しい気もするが、国産うなぎなので、安いと言えるのかもしれない。

ということで、「みゆき」さんで、普通に美味しい料理を頂きまして、普通なら、このままJRということになるのだろうけれど、やっぱり、向かってしまう。

名古屋駅の台湾ラーメンの店「味仙」さん。

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今回は、台湾ラーメンのみ。
辛い物好きな凡ではありますが、流石に、この店のラーメンは、辛い。

麺を啜り込まないように、スープを啜らないように注意して、スープまで、完食完飲。

それにしても、毎回、思う事だけど、このラーメンは、果たして美味いのだろうか。

美味いラーメンというなら、もっと他に、美味いラーメンを食べさせるお店が、沢山ある。
それに、値段にしても、何も知らないで、このラーメンを食べて、いくらかって聞かれたら、600円と答えるだろう。
850円とは、なかなかの設定だ。

でも、何故か、名古屋に来たなら、食べてしまう。
辛い、辛いと呟きながら、食べてしまう。

絶品でもない、普通に美味しいというのでもない、でも、食べてしまう辛いラーメン。

その理由を考えてみるに、たぶんだけど、この辛さが、脳をマヒさせる効果があるのだろう。
脳をマヒさせて、日ごろのストレスを発散させてくれる。
それが、この台湾ラーメンじゃないかと思うのだ。

なので、毎日がストレスの今の社会が続く限り、この台湾ラーメンも、人気のお店であり続けるんだろうなと思うのであります。

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ということで、もう時間がない。
ホームに戻って、アイフォンの指示に従って、電車に乗る。

すると、「穂積」なんて駅で乗り替えることになった。
考えてみれば、後に来る新快速かなにかに乗っても同じじゃなかったかと思う。

またしても、アイフォンのというか、ヤフーの乗り換え案内に、翻弄される凡なのでありますが、間違いなく、大垣、米原と、すすんで行って、大阪から京橋まで帰り着いた。

そして、京橋駅で、青春18きっぷの旅は終わった。
2313時、京橋駅着。
そこから、京阪電車で帰宅。

今回もまた、アテも無く家を出たのではありますが、大井川鐡道さんにも乗ることが出来て、まずは、良かったのではないかと思ったのでございます。

ということで、最後まで、お付き合いいただきありがとうございました。

コメント

  1. `yukemuri より:

    凡蔵さん一押しの味仙の台湾ラーメン食べてみたいです
    きっとすごく美味しいんでしょうね
    それにしても鰻重はちょっと寂しいですね
    これなら小さなドンブリックにしてほしいですよね
    凡蔵さんはふらっと旅に出られて良いですね
    フットワークが軽いというか行動力があるというか、旅に対する積極的な気持ちが大きいんでしょうね
    羨ましいです

  2. より:

    ありがとう、yukemuriさん。
    味仙の台湾ラーメンは、オススメというか、何故か食べてしまうというラーメンで、
    きっと、その辛さから、これはダメだと判断されるケースの方が多いかもです。
    なので、名古屋に行かれても、もし食べるとしても、最後の最後に食べてください。
    他に、もっと満足するラーメンや、食べ物があると思いますので。
    うなぎは、見た目ちょと寂しいですよね。
    でも、うなぎやで、これなら寂しいけど、まあ居酒屋なので、、、。
    というか、もっとうなぎが乗っているのもあったのですが、値段で、これにしたんですよね。
    なので、仕方なしというところです。

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