平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
どれも、すぐに読めちゃう短編なので、読んで頂けたら、うれしいです。

創作劇場は、ここをクリックしてください。⇒⇒⇒

散散歩歩。(1077)夏の山陰本線・鳥取。(1)

9月6日(月曜日)。
追加で、京橋のチケットショップで買った青春18きっぷの残りの1回分を使うために出かけようと思う。
行き先は、鳥取だ。
夏になると、山陰本線に乗りたくなる。
なので、最後の1回は、山陰本線を西へ移動しようと思うのであります。
なので、本当なら、京都から西へ乗りたいところなのですが、日帰りということもあり、時間的に早い播但線経由で乗ることにした。
鳥取となると、少しばかり遠いので、朝の6時ごろ家を出発。
京阪電車で京橋駅まで移動して、京橋駅で入鋏。
そのまま大阪駅まで移動した。
んでもって、0651時発の新快速に乗り込む。
大阪駅は、さすがに人で溢れていたが、電車の端っこまで歩いたら、座れた。
そのまま、姫路駅に到着。
IMG_8074.JPG
ここで、お昼ごはんが、何時になるか分からないので、吉例に従って、まねきの駅そばを頂く。
ふと見ると、チーズ駅そばなるものがあった。
面白いなと思ったが、もう天ぷらそばを食べてしまったので、次回に持ち越そうと思ったが、果たして、次に姫路に行くときまで、チーズ駅そばは、メニューとして続いているのだろうか。
そして、播但線のホームに移動。
入線した電車に乗り込んで、ロングシートに座ると、目の前は、女子高生、隣は、女子高生、周りを見渡すと、車内は、ほぼ女子高生が占めていた。
制服が2種類あったので、2つの学校が沿線にあるのだろう。
オッサンばかりの車内と違って、何となく車内の空気が良い匂いに感じる。
でも、喜んでいるのも束の間。
香呂駅(こうろ)に着くと、全員が降りて行った。
電車が動き出して、窓の外を見ると、大名行列の様に列を成して、遠くに見える学校に女子高生が歩いて行く。
2つの違った学校が、同じ方向にあるのだろうか。
そんなことを考えていたら、学校に向かう女子高生の中に、1人だけ、白い日傘をさしている女の子がいる。
果たして、凡が高校生の時に、女の子で日傘をさしている子がいただろうか。
記憶を探って見ても、そんな子は、思いだせない。
どちらかというと、日に焼けた肌が、無理やり思いだそうとする記憶の中に、おぼろげに浮かび上がってくる。
車窓の遠くに見える日傘の女子高生は、凡には特別な女の子に見えた。
紫外線に過敏な白い肌。
サラサラロングヘアーが、時おり吹くアスファルトの焼けた熱を含んだ熱い風に、ふわりと涼し気になびく。
きっと、上品な家庭で、大事に育てられたのだろう。
スカートの裾も、きっと母親が小まめに洗濯をしてアイロンを掛けているに違いない。
プリーツの折り目が綺麗に立っている。
でも、そんな華奢な体つきなのだけれど、凛とした立ち居振る舞いのできる女の子だ。
そんな女の子に違いない。
そんな女の子が、同じ高校の2つ下とかだったら、これはもう、ドキドキだろうね。
「ねえ、お兄さま。(2つ年上なので、それと近所に住んでいて、幼いころから知っているので、こんな呼び方をするんだな。そんでもって、そのお兄さまとは、凡の事だ。)今度の、日曜日は、何してらっしゃるの?」なんてね、悪戯っぽい目つきで聞く訳だ。
女子高生がさ、何してらっしゃるの?だよ、ね、もう、そんな聞き方されたらさ、あらまー、どうなるのよ。ね、えへへへー。(鼻の下、ダラリーン。)
「いや、別に、何も予定は無いよ。」
「じゃ、あたしに付き合ってくれませんこと。あたし見たい映画がございますの。」なんてね。
女子高生が、ございますのだよ。ね、ね。(これまた、目尻が、ダラリーン。)
「映画?それはいいけど。」
「きゃー、ありがとう。お兄さま。やっぱり、映画をひとりで見るのは、ちょっと怖かったの。」
「怖いって。でも、何の映画なの。」
「ええ、ジョン・ウー監督の『男たちの挽歌』なの。」
「まさかの香港映画。しかも黒社会。ついでに、かなり昔の映画。っていうか、よくそんな映画、このあたりで上演するね。」
「あたしの願いが通じたのかしら。あたし、ティー・ロンさんのファンなんです。」
「これまた、マニアックな。しかも、主演のチョウ・ユンファさんじゃないんだ。」
「ええ、でも、お兄さまも、詳しいじゃないですか。また、お兄さまの事が好きになっちゃったかも。あ、ごめんなさい。お兄さま、あたしなんか、お傍に居たらご迷惑ですものね。」
なんてね、そんでもって、そんでもって、と妄想は続くのですが、そのストーリーが終わる前に、日傘の女子高生は見えなくなってしまっていた。
(香港映画を見ない方は、退屈な妄想になっちゃいましたね。ごめんなさい。)
女子高生の降車した車内は、ガラガラで、これはこれで、快適だ。
そして、寺前駅に到着。
ここで30分ほどの乗り換え時間がある。
IMG_8085.JPG
改札を出て、駅舎を眺めたりしていると、ホームに派手な汽車が止まっているのに気が付いた。
キハ40の気動車の車体の内装も外装も、カラフルに改造して、観光列車にした「うみやまむすび」だ。
凡は、あまり観光列車には興味がない。
もちろん、乗れる機会があるのなら、それは乗りたいけれども、やっぱり、普通に毎日走っている汽車の方が好きなのである。
こんなカラフルな車体よりも、オレンジ色の車体が好きだ。
とはいうものの、一応、写メは撮るのね。
0945時、寺前発。和田山行き。
4人掛けのボックスシートは、それぞれに1人ぐらいが座っている。
凡は、ボックスシートの背もたれの角度を楽しんでいた。
IMG_8094.JPG
んでもって、和田山駅着。
和田山の駅は、いいね。
敷地の向こうに廃舎になったと思われるレンガ造りの建物があったり、ラッセル車が止まっていたり、広い駅の敷地から、ホームの下、目の前のすぐ下にある鉄の2本の線が、遠く、そして遠くまで続く。
この線を辿っていったなら、北海道にも行けるし、鹿児島にも、たどり着くことが出来る。
そこが鉄道の良いところなんだな。
気温も高くなく、気持ちのよい風が、日陰になったホームを吹き抜けていく。
ああ、高架でない駅の素晴らしさよ。
IMG_8100.JPG
IMG_8099.JPG
1049時、和田山発。城崎温泉行。
凡が、座っていると、斜め前のボックス席に、女の子が乗り込んで来た。
そして、半分降りていたブラインドを、上まで上げた。
凡は、「おお。」と注目する。
ブラインドを下げる女は大勢いるが、日が射しているのに、ブラインドを上げる女は、そうそういない。
ブラインドを上げるというのは、車窓の風景を見たいからだろう。
或いは、鉄ちゃんなのだろうか。
小さなリュックを1つ、ただそれだけで、旅をしている。
旅慣れたものである。
しかし、気になる女じゃないか。
やや、細身で、白いTシャツに、Gパン。
肩甲骨辺りまである髪を、後頭部で括ってお団子にしている。
度の強そうなメガネをかけて、白いマスク。
一言でいうなら、凡の好きなタイプの女の子である。
まあ、凡と同じ進行方向に向かって座ってるので、顔は見えないけれどね。
でも、きっと可愛い女の子だろう。
それに、Tシャツだ。
凡は、無地の白いTシャツを着た女の子が、何故か、好きなんだな。
白いTシャツって綺麗だなと思う。
そんな女の子が、スマホを見ている。
そのスマホの画面を、目に力をこめて覗いてみると、オレンジ色の車体が写っている。
まさか、さっき乗ってたキハ41の写真なのか。
すると、その写真を、メールで誰かに送ったようだ。
やっぱり、鉄ちゃんなのか。
友達に、今乗ったキハ41の、めちゃマニアックなことを呟いていたりして。
というか、気動車の写真を撮って送るって、それは間違いなく、鉄ちゃんであるだろう。
白いTシャツの鉄ちゃんの女の子、、、、萌えである。
すると、今度は、地図帳のようなものを取り出した。
その地図帳には、JRの文字が見える。
その地図帳の薄いブルーの色や雰囲気から、アイフォンで検索するも、何の本か解らない。
すると、女の子は、何かを3色ペンで書き始めた。
何を書いているのだろう。
気になるのではある。
しばらくして、また何かを書き込んでいる。
ひょっとして、ぬりつぶしなのか。
これはもう、完全に鉄ちゃんじゃないか。
女の子のひとり旅か。
少し、お話をしてみたい気持ちがしたが、それはやめた。
気持ち悪いヤツと思われるものね。
ひとりで旅に出かけて、乗った路線を塗りつぶしていく。
たぶん、社会人2年生ぐらいなのだろうか。
1年は、夢中で会社の仕事を覚えたけれども、2年目に、ちょっと余裕が出て来た時に、自分って他の人と、ちょっと違うのかななんて思いだして、そういえば、あたし友達って言える人いないのかもなんて、そんなことを漠然と不安に思った時に、旅に出ていた。
何かが、そこに待っているかもしれないと。
でも、何が待っていて欲しいのかさえ、自分でも解らないよ。
ただ、汽車に乗って、知らない土地に降りて見たら、少しだけ、自分を取り戻せた気がした。
そんな感じなのかな。
なんて、凡は、彼女の後姿を見ながら考えていた。
そんな凡の妄想も、彼女の部屋の間取りとか、タンスの中の洋服とか、いよいよ彼女の私生活に及ぼうとしたころに、城崎温泉駅に到着。
ここで、一旦、改札を出て、一瞬、城崎温泉の風景を眺める。
そして、駅弁を検討した。
何しろ、これからまた、鳥取まで乗りっぱなしなのである。
とはいうものの、これから乗る汽車が混んでいて、座れたとしても、満席だったら、それほど大きな駅弁は広げにくい。
なので、小さな「炙りハタハタ寿し」というのを購入。
IMG_8107.JPG
そして、ホームを見ると、既に、鳥取行きの汽車が入線している。
早めに行って席を確保するべきか。
見ると、件の女子鉄ちゃんは、改札を出たところで、慌てる様子もなく、ぶらぶらしている。
旅慣れている。
先を急ぐのなら、すぐに汽車に乗り込んで待つだろう。
でも、件の女子鉄は、今の時間を楽しむように、そこにいた。
こんな子と、旅をしてみたいな。
ホームに停まっている汽車には、すでに何人もの乗客が乗っている。
ボックス席は、誰かが席を使っているので、端っこの方まで歩いて行ったら、最後の車両に空席があった。
すると、ホームの向こうから、件の女子鉄が歩いて来るではないか。
ひょっとして、同じ車両?などと期待をしたら、同じ車両ではあったけれども、凡と同じ側のボックスシートに座った。
残念。
これだと、女子鉄が見えないよ。
でも、同じ車両だからね。
んでもって、竹野駅で、3分ほど停車した時に、後を振り返ってみたら、彼女は、窓の外を見ていた。
何を考えているのだろうね。
んでもって、またまた佐津駅で振り返ると、彼女の持っていた本は、「JR私鉄乗りつぶし地図帳」であることが解った。
やっぱり、完璧に、鉄ちゃんやん。
気が付くと、彼女は、荷物を席に置いたまま、車内をウロウロして、またボックスシートの横の2人掛けのロングシートに座ったり、自由気ままに過ごしている。
旅を楽しんでいるなあと、羨ましく思った。
夏の山陰本線は、楽しいね。
いやなに、彼女がいるから楽しいのではない。
凡の記憶と結びついているからかもしれないが、山陰本線は、ただ乗っているだけで、楽しいのである。
IMG_8110.JPG(ホームの薄っぺらいコンクリートがいいね。)
そして、汽車が餘部駅に着いた時に、女子鉄ちゃんは、リュックを背負って降りて行った。
そして、凡の淡い恋の予感は、切なくも消えていったのでございます。
さて、一人ぼっちになった凡は、汽車に揺られながら、車窓の景色に目をやりながら、山陰本線を楽しんでいた。
すると、別の場所にいた年配のカップルが凡の横のボックスシートに移動してきた。
スーパーかどこかで買った総菜を摘まみに発泡酒を飲んでいる。
ご主人と思われる男性も上機嫌で、奥さんと思われる女性に話をしている。
こんなに話をするということは、夫婦じゃないかもしれないな。
そう思って、やりすごしていたら、ご主人がトイレに席を立った時に、奥さんが、凡に話しかけて来た。
「どこから来たのですか。」と。
あらあら、このシチュエーションは、どう解釈するべきか。
ご主人がいないときに凡に声を掛けてくれた。
その意図は、、、、まあ、あまり深読みはしない方が良さそうである。
ご主人が返ってくると、奥さんを挟んで、少しばかり話をした。
ご主人は、もうリタイアをして年金で暮らしているという。
んでもって、奥さんは、ガンで手術をしたときに、神経も切除したらしく、足が不自由になってしまったという。
さらに、今度また、手術があると言う話をしてくれる。
だから、あたし、もう遊ぶのよと。
コロナだけど、旅行も、ジャンジャン行っちゃうと。
それはそうだよね。
自分の人生は、自分で決めるべきだ。
そんな話をしていると、鳥取駅に到着。
奥さんに話しかけられて、ドキドキした気持ちは、要らぬドキドキではあったのであります。
IMG_8128.JPG
さて、鳥取だ。
とはいうものの、何をするとも決めてはいない。
改札を出て、観光案内所で、いろいろお聞きする。
神話の因幡の白兎の白兎海岸でも行ってみようかと思ったが、日帰りでは、時間が足りないので、それは断念。
とはいうものの、主要な観光名所や、資料館は、閉館しているので、温泉でも行ってみるかと、3つばかり温泉施設を教えて貰った。
さて、まずは、鳥取と言えば、すなば珈琲ということになるのだろう。
駅前のすなばさんに入る。
IMG_8135.JPG
IMG_8134.JPG
んでもって、ホットドッグとホットコーヒーを頼む。
大阪の濃い目のコーヒーを飲んで来た凡には、いささか薄味に感じるが、鳥取に来たからには、すなば珈琲さんに行かないわけにはいかないだろう。
んでもって、食べて飲んだら、すぐに店を出た。
さて、商店街を、ぶらぶら散策して、それでも、これと言ってすることがないので、観光案内所で聞いた温泉にでも行ってみよう。
以前に来た時に街中の日乃丸温泉には行ったことがあるので、今回は、別の「元湯温泉」という施設に行ってみることにした。
温泉と言っても、大きな施設じゃなくて、街の銭湯という感じだ。
IMG_8138.JPG
入口を入ると、すぐに男湯があって、そこから中に入ると、もう脱衣所だ。
自動販売機で、チケットを買って、貸しタオルを貰って入場。
小ぢんまりとした温泉は、湯船が真ん中にあって、水風呂も端にある。
小さいながらも、7、8人が中にいただろうか。
凡も、ボディシャンプーがタダなので、身体を洗ってみようかと思ったら、シャワーの勢いが、驚くほど弱い。
お湯で身体を流すというよりも、お湯で、身体をコチョコチョとくすぐるというような感じで、チョロチョロとしか出ないのだ。
「きゃん、くすぐったい。」なんてね、女の子だったら、言っちゃうぐらいだ。
あとで、席を変えても、やっぱりシャワーの勢いは同じだった。
でも、温泉に入って、疲れもとれたし、持って来たTシャツに着替えて、温泉を出た。
あとは、もう予定が無い。
早めの晩御飯でビールでも頂いて、帰路につくことにしようと思う。

コメント

  1. ケロちゃん より:

    その時、その時の感情が書かれている所が面白いですねー。
    以前にある人のトルコ旅行記なる本をよみましたが、本人の感情表現がほとんどなく、行動記録だけのつまらないものでした。
    読者は書いた人が、何を感じたかを知りたいものです。
    凡さんの文には、もうええわというくらい、妄想まで書かれていて面白いねー‼️

  2. yukemuri より:

    チーズ駅そばですか?
    普通のかけそばにチーズがトッピングしてあるのでしょうか?
    珍しいですね
    自分はカレーそばにチーズトッピングが大好きで良く食べますよ
    なんと女子高生だらけの電車ですか?
    夢のような路線ですね(笑)
    それからガンで手術をした奥さんがコロナでもジャンジャン旅行しちゃうって言う気持ち、凄く良く分かりますね
    人にはそれぞれ事情がありますからね
    自粛自粛で時間を無駄に使うのだけは避けたいですからね
    やはり自分の人生は有意義にって思うし、それを実践されている女性もあっぱれだと思いますよ
    鳥取かぁ~
    鳥取砂丘とか境港とか行ってみたいなぁ・・・

  3. 平 凡蔵。 より:

    ありがとう、ケロちゃんさん。
    読んでくださって、感謝です。
    妄想は、何か、入れたくなるんですよね。
    それと、自分自身、老後というか、後になって、読み返して、ああ、そうだったって思いだしたいので、結構、詳しく書いているつもりなんです。でも、その細かいところが、料理のおかずが、隣の席のおかずより、1個すくなかったとか、そんな、情けない細かさなんですけどね。

  4. 平 凡蔵。 より:

    ありがとう、yukemuriさん。
    女子高生だらけの電車は、うらやましいでしょう。
    んでもって、旅行は、対策をしながら、どんどんすればいいと思うんですよね。
    まあ、その理由は、長くなるので、割愛させていただきますが、というか、そのことについて、1度書いておいた方がいいかなとも思う時もあるんです。
    どういう考えで、旅行などしているのかとか。
    そこは悩み中ですが、それは置いておいて。
    このところ、旅行の計画が、続いておりまして、この鳥取の次は、高山に今日行って帰ってきました。
    そんでもって、来週は、松山です。
    この松山は、奥さんの付き添いなので、自由な時間はありませんが、飛行機に乗れるだけ、嬉しいのではあります。

タイトルとURLをコピーしました