平 凡蔵。の 創作劇場

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散散歩歩。(1078)夏の山陰本線・鳥取。(2)

9月6日(月曜日)。
青春18きっぷの最後の1枚を使って、夏の山陰本線を楽しむために出かけました。
んでもって、日帰りなので、早めに夕食を頂いて、帰路につこうと思っているところであります。
鳥取の駅前をブラブラ歩いていると、やっているお店が、やっぱり少なくて、1時間ほど歩き回る。
そこで、以前に来た時に気になっていた民芸風のお店に行ってみようかと思う。
ちょっと店構えを見ると、高級そうというか、少し入りにくい感じだけれど、店先に出されたメニューを見ると、お手軽な定食などもありそうなのである。
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と思いながらも歩き回っていると、以前に来て入ったことのある居酒屋があって、店頭のメニューの看板に目が留まった。
「牛ざぶとんステーキ200g500円」とあるではないか。
ざぶとんという部位がどこなのかは知らないけれど、500円は安いし、何となく肉を食べたいという気持ちも湧いて来る。
一瞬、惹かれたが、やっぱり、前回から気になっていたお店に行こう。
安いというだけなら、別に鳥取でなくてもいいだろうから。
ということで、以前から気になっていた民芸風のお店に入る。
「たくみ」さん。
因みに、しゃぶしゃぶという料理は、この店が発祥だそうだ。
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店内に入ると、まだ誰もいない。
和風の制服を着た若いスタッフがひとり。
入る前は、カウンターがあって、その中に板前さんがいる居酒屋と言うか、割烹というか、そんなお店なのかなと思っていたら、実際は、カウンターは無くて、テーブル席が、長方形のが記憶では3卓、丸テーブルが3卓ぐらいだったか、長方形と丸が、何となく、ぎこちない感じで配置されている。
凡は、丸テーブルに座った。
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んでもって、メニューを検討。
入口には、ハヤシライスセット、鳥取和牛バター焼きセット、和定食、たくみ御膳と4種類が案内されていた。
メニューを見ると、一品メニューも、いろいろある。
スタッフの女の子に、どれがいいか尋ねたら、いろいろ注文するなら、定食の方がいいという。
なので、お店の名前の付いた「たくみ御膳」をお願いした。3480円。
勿論、生ビールを、注文するのは忘れてはいない。
ただ、その生ビール、820円也。
少しばかり高めの設定ではある。
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まずは、小鉢2種。
カレイの肝の煮つけと、茄子の煮びたしのようなもの。
続いて、お刺身と豆腐。
豆腐は、餡かけになっていて、これは美味しかったです。
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ここまで持ってきたら、女の子が、「後はゆっくりで良いですか?」と聞いた。
なるほど、解ってるね。
今までサーブされた料理で、少しばかりお酒を楽しみたいという凡の気持ちを察してくれているのだ。
気分を良くして、更にビールを追加。
すると、後から客が入って来る。
4人は、予約で2階に上がっていったようだ。
そして、若い男の子が1人、ハヤシライスを注文した。
んでもって、遅れてきた男の子が1人、しゃぶしゃぶを注文した。
ひとりで、しゃぶしゃぶを注文するとは、なかなか勇気があるね。
少しばかり、羨ましくはあった。
だって、しゃぶしゃぶ発祥と謳っているお店で、しゃぶしゃぶだもんね。
IMG_8145.JPG(入口の看板)
さて、お酒を、燗を付けて貰って、2合追加した時に、後の料理もお願した。
たくみ御膳は、和定食に、肉料理が付くセットだ。
店頭の立て看板を見ると、そう書いてあった。
そのたくみ御膳の横に、鳥取牛のバター焼きというメニューがあったので、勝手に肉料理とは、バター焼きなのかなと思っていたが、サーブされたのは、牛肉の筋と野菜を煮込んだものだった。
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肉料理には違いないが、ちょっとだけ、がっかりした。
これなら、野菜料理と言っても通じる料理だし、、、肉と言っても、筋だし、、、。
でも、決して間違いではないのではあるからして、素直に頂く。
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そして、いよいよ、この定食のメインとも言える赤カレイの煮つけがサーブされる。
なるほど、見た目も、如何にも美味そうである。
この頃になると、ベテランの女性スタッフが1人増えた。
制服を着ていないところを見ると、この店の経営者なのだろうか。
料理は、どれも美味しくて、もう少しだけ、飲みたくなったので、焼酎のお湯割りを頼む。
鳥取に来て、ちょっと贅沢をしている、この時間が楽しい。
しかし、別の2人の客の食べているハヤシライスとしゃぶしゃぶは、どんな味なんだろうね。
まあ、しゃぶしゃぶは、何となく想像できるが、ハヤシライスは、食べてみたい気もした。
と、そんな時間を楽しんでいたら、赤カレイの煮つけも食べてしまった。
あとは、ご飯と味噌汁である。
美味しい米なら、ご飯だけでも美味しく頂けるというものだけれど、そこはやっぱり、おかずを1品頼んでしまう。
食い意地の張った凡なのであります。
そこでメニューを見ると、浜焼き鯖ねぎ煮とあるではないか。
浜焼きの鯖という名前から、塩味を想像してしまった。
ねぎ煮とあるけれど、甘くない煮物だと思ったのだ。
なので、それを注文。
サーブされたものを、摘まんで口に入れると、醤油味の甘い味付けだった。
ああ、そうなんだと思った。
鳥取に来て、このお店に入ったのは、正解だった。
スタッフも親切だし、料理も、どれも美味しかった。
でも、少しコメントをさせて頂くと、定食の料理が、どれも醤油ベースの甘い味付けなんだ。
最初の小鉢2種も、肉料理の牛筋の煮込みも、メインの赤カレイの煮つけも、どれも醤油ベースの甘い味付けなのである。
詰まりは、どれも同じ味付け。
コースを最後まで頂くと、いささか、飽きてくる。
いや、こんなことを申し上げるのは、申し訳ないけれどもね。
味付けも塩味、渋み、甘み、酸味、、、ちょっと、詳しい分類は知らないけれども、色んな味がある。
食感にしたって、煮た食感以外にも、焼いた食感、生の食感などね。
それらを組み合わせることで、コースに楽しみが出てくるのではと思うのであります。
たとえば、今回の定食だって、メインが煮物なら、小鉢は、淡白な野菜の白和えとか、或いは、ウスターソースで食べる料理が途中に入っても大胆な変化が出てくるし、まあ、料理の素人が偉そうにいうことじゃないけれども、醤油味の甘い味で通すよりも、良いのじゃないかと、これは凡のコメントであります。
そういう流れがあっての、浜焼き鯖のねぎ煮の醤油ベースの甘い味だ。
まあ、これは凡が頼んだから、凡の責任ではある。
でも、ひょっとして、最初に注文を聞いてくれた女の子に、ちょっと1品、ご飯のおかずとして追加したいんだけどと相談していたら、どうなっていたのだろうね。
「あ、凡ちゃん。今までの味付け、甘い味付けばっかりなんて思ってるんでしょ。だから、違う味が食べたくなったんでしょ。」
と、悪戯っぽい笑顔で言う。
と、ここで、いきなりお店の若い女の子のスタッフが、凡ちゃんと来たのは、変じゃないかと思われるかもしれないが、凡がお店に入ってきた時から、何となく、凡と女の子は、ちょっと相手が気になっていたんだ。
んでもって、メニューを注文した時に、話が弾んでしまって、お互いに好意を寄せていることを知ってしまう。
そんなわけで、その時に、凡が凡であることを、シズカ(一応、女の子の名前だ)がシズカであることを、そして、これが運命の出会いであることを、お互いに認識しあったのである。
お互いに愛し合っているということが解ったなら、あとは早い。
愛という感情の流れに身を任せるだけだ。
それに、凡とシズカが会っていられるのは、1時間も無い。
旅先での偶然の出会いと、そして、別れなければならない運命に、ふたりのテンションは、最高に達していた。
一瞬に、愛をかける。
まさに、この瞬間である。
客とスタッフという関係から、指さえも触れることの叶わないでいる。
そんな愛は、激しく心の内に燃えていく。
ああ、もしすべての束縛から自分自身を開放することが出来たなら、今すぐにでもシズカを抱きしめているだろう。
そんな感情を、お互いに内に秘めながら、客とスタッフとしての会話が続く。
そんな設定である。
いささか、無理くりな設定ではあるが、旅をしている凡には、自然な流れに思えてしまう。
「うん。今までの料理、全部、醬油ベースの料理ばかりだからね。」
「でしょ。そんな顔してた。凡ちゃん、顔見たら、何考えてるか、すぐ解るもんね。」
もう、凡ちゃんった、しょうがないなあ。
食いしん坊なんだから、みたいな、ちょっと愛しみを込めた目で凡を見ながら、そのあと、視線を天井に向けて、メニューを見ることもなく胸のところで抱きしめて、考えるふりをする。
この時、女の子の脚は、やや内またになっていると、ちょっと萌えである。
「じゃーねー。激辛のカレーライス。どう。意外な展開でしょ。」
「ああ、でも、それいいね。凡は、カレー大好きだから。じゃ、それ頼むよ。」
「無い。」
「えっ。無いって。」
「激辛カレー、メニューにないねん。」
「って、メニューにない料理、提案してどうするのよ。」
「あははは。言ったら喜ぶかなと思って。ごめんね。」
「もう、シズカは、面白いね。」
なんてね、そんな感じで、凡の違った味を食べてみたいという気持ちを察してくれたかもしれないな。
とはいうものの、その時は、女の子に料理のアドバイスを聞くことなく、浜焼き鯖ねぎ煮を頼んだのである。
んでもって、ああ、また醬油ベースの甘い味だったなと思ったのである。
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すると、ベテランのスタッフさんが、「良かったら、これ食べてください。」とご飯のおかずに、小さな小鉢をテーブルに置いた。
見ると、最初に小鉢で出て来た、カレイの肝の煮つけだ。
ああ、また醬油ベースの甘い味付けじゃないか。
とはいうものの、スタッフさんのおもてなしの心を、感じながら、頂きました。
ということで、鳥取で、ちょっと贅沢な夕食を頂きまして、店を出たのであります。
出る時に、ちょっと振り返ると、若い女の子が、誰にも聞こえないように、唇が動いた。
「ア・イ・シ・テ・ル。」
凡も、声に出さずに言った。
「ボ・ン・モ。」
また、ひとり、鳥取の地の女に、寂しい涙を流させてしまった。
旅をする土地土地で、これから何人の女に、涙を流させればいいのだろうか。
愛に生きることの悲しさを感じながら、駅に向かった。
店には、時間半ぐらいいただろうか。
気分も良くて、少しばかり飲み過ぎたようだ。
鳥取駅、1907時発。上郡行きに乗り込む。
何を思ったか、というか、もう食欲中枢がマヒしてしまって、気が付いたら、デザートまで買って、汽車の中で食べていた。
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すっかり日の暮れてしまった車窓を眺めるでもなく、眺めている。
今乗った鳥取から、因美線を走って、東津山から姫新線に乗り替えて、姫路に向かうという手もあるのだけれど、それで行くと、青春18きっぷのまま行くことが出来るのだけれど、もう時間的に無理なので、智頭から上郡まで、第3セクターの智頭急行を使うことにした。
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上郡駅に着いて、智頭急行の部分の料金を支払おうと思ったら、運転手さんが、何も言わないので、智頭線1日フリーきっぷをお願いした。
1日フリーきっぷと言っても、この片道1回しか乗らないのだけれど、こっちの方が、少しだけ安い。1200円。
上郡から姫路に移動して、新快速で大阪駅まで。
環状線で京橋まで移動して、今回の青春18きっぷの旅は終了した。
京阪電車で、門真市まで乗って、何とか今日中に家に帰り着いたのでありました。
今回も、最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございました。

コメント

  1. yukemuri より:

    居酒屋の看板にある大山とりの一枚焼き、それから山賊スペアリブも気になりますね
    なんだか凄く美味しそうな気がします
    しゃぶしゃぶ発祥のお店ですか?
    へ~、なんだ格式あるお店のようですね
    たくみ御膳、なかなか良いですね
    品数が多くて楽しいし、色々なのを食べられて良いなぁって思いましたが、なんと、ほとんど同じ味付けだったんですね
    しかも醤油味ベースの甘い味とは、これはちょっと飽きちゃいますね
    う~ん、なんでですかね???
    でも最後のご飯セットはおひつでご飯が出てきてるし、一品サービスしてくれたからまぁ良かった感じですね
    ハヤシライスも気になりますが、一杯飲むならやっぱりたくみ御膳でしょうね
    自分は子供の頃鳥取にちょこっと行ったらしいのですが、その記憶が無いので行った事無いのと同じなんです
    だからやっぱり鳥取砂丘を見てみたいなぁって思っています

  2. 平 凡蔵。 より:

    ありがとう、yukemuriさん。
    看板は気になるでしょ。何しろ値段が安い。
    しかも、ボリュームもありそうだし。
    普通の庶民的な居酒屋なんですが、思わず入りそうになりました。
    んでもって、民芸風のお店は、なかなか良かったですよ。
    スタッフも親切でしたし、料理も美味しかったです。
    ただ、同じ味付けがね。
    鳥取は、観光地があるといえばあるし、無いと言えば無い感じなんですよね。
    ただ、今回は、時間が無かったので、観光は考えてなかったですけど。
    鳥取砂丘は、行ったことがありますが、砂丘から見える日本海の砂浜が、何か怖かった記憶があります。
    でも、古い古い記憶ですけど。

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