11月6日(水曜日)。
湯快リゾートのあわら温泉「青雲閣」さんに到着した。
部屋のキーを貰うと「223」だ。
これは、どうにも縁起が良い。
因みに、この223の意味が解らない人に説明をすると、223は、みゆきさんの誕生日の2月23日の事だ。
ただ、それだけのことなんだけれど、これが実に嬉しいのであります。
部屋は、まだ、畳や壁紙も新しい感じで、しかも、14畳ぐらいあるのだろうか、それにテーブルセットがあって、結構広い。
窓の外はというと、狭い吹き抜けになっていて、簡単に言うなら、窓の外は、狭い空間があって、向かいが別の部屋の窓だ。
まあ、この辺りは、凡は、窓からの眺めを重要視しないので、オッケーだ。
ただ、ブラインドを閉めないと、向かいの部屋から丸見えだけれどね。
(窓の外。吹き抜けがあって、向こうは、障子の窓。)
しかし、これもまた、もしミニボンと一緒じゃないとなると、面白い設定となる。
窓を開けると、向こうの窓も開けられている。
こっちは、凡のひとり旅。
向こうも、可愛い女の子のひとり旅。
それだけで、凡のこころは舞い上がって、心臓は早鐘だ。
でも、向こうも窓を閉めようとはしない。
寂しがり屋さんなんだ。
凡と一緒でね。
まずは、温泉に入るだろう。温泉だから。
んで、部屋に戻る。
窓際の椅子に座って、自動販売機で買った缶ビールのプルトップをカシリと開けるよ。
んでもって、窓の外を見る。
向こうの女の子も、同じように温泉上がりで、窓際に座っている。
濡れた黒髪をタオルで乾かしながら、「ローヤルさわやか」を手にして、面白そうに瓶の説明を見ている。
ローヤルさわやかは、福井県の人なら誰でも知っているサイダーだそうだ。
凡は、まだ飲んだことが無いんだけどね。
女の子は、おそらく、売店で、珍しい物を見つけたって、ちょっとはしゃいだ感じで買ったね。
ひとり旅の高揚感も手伝って、ちっさな「きゃっ。」っていう言葉も漏らしただろう。
んでもって、今、窓際に座って、そのローヤルさわやかを見ているんだ。
すると、女の子が凡に気が付くね。
凡は、女の子に缶ビールを、ちょっと上に持ち上げて、「乾杯」と笑ってみせた。
女の子も、はにかんだように、下唇を、ちょっと噛んで、ローヤルさわやかを持ち上げて、「お疲れ様。」と言うさ。
凡が、女の子のローヤルさわやかに気が付いて、「その飲み物何?」なんて、ジャスチャーをしちゃうだろう。
女の子は、「下の売店で、、、」とか、さわやかを指さして、「美味しい」なんてことをジェスチャーまじりに教えてくれる。
んでもって、「美味しい」っていう言葉の後に、両目でウインクをするんだ。
ちょっと笑顔で、両目を、ちょっと強めにつぶる。
凡は、何にやられるかといって、女の子の両目のウインクには、イチコロにやられてしまう。
ウインクはね、片目でするものだけれど、あの片目のウインクには、何か、ウインクする人の自信というか、立場的に高位にある状態というか、そんな相手との位置関係を感じるのだ。
間違っても、弱者というか、下の物が、強者、上の物にウインクはしない。
だから、ウインクをする女は、厄介なんだ。
凡が、女の子にウインクして貰えないから、こんな理屈を並べている訳じゃないんだ。
いや、それもあるかもしれないが、確かに、凡の位置は下位にある。
もちろん、凡も片目のウインクをして欲しいよ。
絶世の美女からウインクをされたら、そりゃ嬉しいだろう。
でも、その後だ。
このウインクは、どういう意味なのと、あたふた、あたふた。
いや、どうしたら良いのよ。
凡が、美女にアクションを起こさなきゃいけないのか、そんなことを考えたら、手に汗びっしょりで、呂律も回らないし。
助けてくれー。
そうこうしている間に、美女は、帰ってしまう。
美女にしてみれば、誰にでもやるただの挨拶。
凡にとっては、一生に1回あるかの一大事。
そんなヘトヘトになるウインクなら、凡に投げないでほしい。
でも、両目のウインクは違うんだな。
立場の上下はないんだ。
「どうも。」とか「お疲れさま。」とか、或いは、「解ってるよ。」みたいな軽い感じなんだけれど、凡の事が嫌いじゃないよという意味も含まれている気がするんだ。
両目のウインクを貰ったからといって、凡が何をしなきゃいけないと言う事は無い
ただ、その両目のウインクを、貰えばいいだけだ。
しかも、貰ってウットリとする心地良さがあるんだ。
或いは、みゆきさんの笑顔に似ているのかもしれない。
見ている人をウットリとさせて、受け入れてくれる。
許しや、癒しや、そんなのが現れている。
いや、やっぱり、みゆきさんの笑顔は、別格だから、両目のウインクと比較することはできないに違いない。
何と言っても、みゆきさんの絵顔は、唯一無二の美だからね。
でも、両目のウインクには、みゆきさんの笑顔にないものがある。
「幼さ。」だ。
守ってあげたいと思わせる、無防備さがある。
だから、凡のような、無力なものが、やられてしまうのだろう。
まあ、兎に角、窓の向こうの女の子は、そんな両目のウインクをするわけだ。
凡は、すっかり、やられてしまって、虜になってしまうだろう。
んでもって、夕食の時に、レストランへ行くと、彼女がいる訳だ。
話をすると、凡は、60歳、彼女は、20歳。
んでもって、両親は既に亡くなっていて、その遺産が何十億もあると言う。
んでもって、彼女は、超年上好みで、60歳ぐらいが好きだと言う。
んでもって、凡の事を気に入って、毎月お小遣いを渡したいという。
んでもって、奥さんがいても、日陰の身で良いという。
んでもって、んでもって、んでもって、、、、。
と、あり得ない妄想に、浸ってしまったが、あり得ない上に、イヤラシイと来ているので、これを読んだ人にヒンシュクをかわないか、ドキドキである。
なんて妄想は、今回はミニボンと来ているので、まずは置いておいて、現実の部屋である。まあまあ広くて、快適だ。
さて、温泉に行きましょうか。
温泉施設は1階にあるのだけれど、ホテルのロビーや他の施設だったところを、レストランに改築したようで、1階から行こうと思えば、そのレストランを通り過ぎないといけない。
ただ、凡は2階なので、階段を1つ降りれば良いだけだ。
(どうしても、みゆきさんの誕生日の23番を選んでしまう。)
温泉は、内湯、バブルバス、サウナ、露天風呂とあり、洗い場も多い。
しかも、凡が行った時間は、4、5人だったので、ゆっくりとすることができた。
さて、温泉から上がったら、他にすることは無い。
無料のマッサージ機をしたり、売店を冷やかしたり、あとは、部屋で明日の予定を考えながら、恨めしく窓の向こう側の部屋の障子を眺めるのであった。
しかし、後から考えたら、向こう側の部屋は、建物の外の景色に向かって窓が付いている筈だから、凡の見ている窓に見えるのは、向こう側の廊下の窓の障子だったようだ。
詰まり、廊下の障子を見ながらイヤラシイ妄想にふけっていたということのようである。
実際の図面を見たら、やっぱり、そうだったのであります。
(凡の窓の外は、吹き抜けを挟んで、向かは、廊下だった。)
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