平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
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散散歩歩。(928)青春18きっぷ。松山から広島の旅。(1)

先月の2月は、中島みゆきさんの夜会「リトル・トーキョー」で、東京へ1月分も含めると、3回も東京へ行っていたので、この春の青春18きっぷは、自粛しようかと思っていた。
お金も節約しなきゃいけないし、何より、まだみゆきさんの、凡の脳みそに微かに残る映像や東京の興奮を、旅をすることで消してしまいたくなかったからだ。
とはいうものの、連休が取れることになったら、ちょっと気持ちも変わって来て、気分転換に遊びに行ってみようかなと思ったのであります。
とはいうものの、青春18きっぷの5回は、期間内に使い切ることは休みの数と照らし合わせても無理だ。
ということで、梅田の金券ショップで、残り2回のきっぷを探そう。
駅前のビルを探しても、どうも高い。
でも、仕方がないと諦めて2回分残っているチケットを買った。
6500円。

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チケットを受け取って、「しもた。」と思った。
別の金券ショップで買えば良かった。
凡の手にある青春18きっぷは、真ん中が折られていて、今にも、その折り目から、ちぎれてしまいそうだ。
このきっぷの前の持ち主は、どんな人だったのだろうか。
始めから売ろうと思っていたなら、こんなきっぷの券面が折れて下地が見えるようになるような保管の仕方はしないはずだ。
綺麗な状態で売ろうと思うものね。
きっぷに押されたスタンプが、折り曲げた反対側に写っているいるから、内側に折り曲げて財布に入れていたのだろう。
スタンプの印面が乾く前に、折り曲げているところを見ると、青春18きっぷ初心者なのかもしれない。
凡が、青春18きっぷを使う上で1番重要なポイントだと思うのが、スタンプを完全に乾かしてから財布やバッグに入れるということだ。
印面が乾かないうちに、そこを触って、スタンプの日付が潰れてしまったら、別に問題はないのだろうけれど、改札できっぷを見せる時に、気持ち良くない。
考えられるのは、前の持ち主の血液型がO型だったのではないだろうかということだ。
何が厄介かと言って、O型ほど厄介な生き物はいない。
することを見ていても、あれ、それで終わりなのと、何をするにも、いい加減なのである。
見ているとストレスが溜まるのだ。
兎角、O型は、厄介である。
ここに付け加えるが、ミニボンは、生粋のO型だ。
辛いね。
そして、悲しい。
繊細な感性の持ち主なら、わが身が、O型の人間として、この世に生を受けなければならなかった、そのわが身の性を呪わずにはいられない筈だ。
普通の人ならね、O型に生まれた理由を、前世の悪因悪業に見つけるために出家しようと考えるものもいるだろう。
或いは、人生の不条理を追求する哲学者になるとかさ。
何かしら、O型であることを、悔やむ気持ちを持つものだ。
普通の人ならね、自分がO型であることを知った時に、もう耐えられずに、泣いて泣いて、そして泣き暮らすだろう。
でも、そんなことに気が付かないのが、O型なのである。
生粋のO型のミニボンも、日々、テレビを見ながら、呑気にお菓子などを食っている。
腹を出して寝ている姿を見ていると思うのである。
可哀想にと。
さて、世間には、O型の嫁や、彼女をもって、日々悩んでいる人いるだろう。
そんな諸兄に、長年、凡がミニボンを見て習得したO型の対処法を教示して差し上げようと思う。
「O型の嫁が、何かをしている姿を見てはイケナイ。」
これに尽きる。
見てはいけないのだ。
O型の嫁が何かをしだしたら、そっと席を立つのが宜しい。
とはいうものの、こんなことを書いてはいるけれども、稼ぎも悪くて、取り柄も無くて、どうしようもない、優柔不断な、最低なこの凡と一緒にいてくれるのは、いい加減なO型の嫁ぐらいなのかもしれないのではある。
この青春18きっぷの前の持ち主は、凡の推測のO型だったかは、絶対ではないだろうけれど、たぶん、そうだったのだろう。
券面に押されたスタンプを見ると、3月12日に、大阪の八尾駅で1回目が押されている。
そして、2回目が、13日で浅草駅のスタンプだ。
さらに、15日に、仙台駅で入鋏されていた。
なかなか、ハードな旅だね。
仙台駅で押された後は、もうスタンプが無いので、そこから出発点の八尾駅までは、別の交通手段で帰ってきたのだろう。
学生なら時間があるから、仙台駅から、また大阪まで戻ってくるはずだ。
ということは、サラリーマンか。
それでも、仙台で宿泊しないとしても、5日間だ。
休みを取るのも、苦労したのではないだろうか。
1日目は、八尾駅から東京へ移動したのは、なかなかの長旅だ。
大阪駅まで出てから、東海道本線を行くのだろうけれど、東京に着くのは夜の19時頃か。
途中で、昼食をとるのに、或いは、豊橋か、静岡辺りで途中下車したのかもしれない。
豊橋駅を出て、商店街を歩くだろう。
で、ふと気が付く。
歩いている人、みんな可愛いと。
旅に出ると、女性が可愛く見える。
んで思うんだ。
ここで泊るのも一興かと。
そういうのが青春18きっぷの醍醐味でもある。
とりあえずは、豊橋の名物のカレーうどんでも食べたのだろう。
白いシャツにカレーの汁が飛んでも気が付かない。
それがO型だ。
隣に、若い女の子が座る。
彼の好みじゃないけれども、ここは遠い見知らぬ地の豊橋である。
たとえ明日は東京へ向かう彼だけれども、どうにも切ない徒情け。
「みゆきさん、好きなんだ。」
彼は、目ざとく彼女の携帯のストラップが、夜会工場vol.2のちびなみちゃんのチャームであることを見つける。
「えっ、あなたも?」なんて、ことで会話が始まるよ。
「うん、あの笑顔が可愛いよね。そうだ、これからカラオケとか行かない?」なんて、旅先では、大胆になる。
「でも、あなたのこと知らないし、、、、。でも、みゆきさんが好きな人に、悪い人はいないもんね。」
なんてことに発展するのかもしれないだろう。
近くのカラオケボックスに入ると、前の客の女の子の香水が残っている。
やや湿りを感じる空気に、彼は妙にみだらな気分になるのを覚えた。
「何歌う?」
「そうね、やっぱり、みゆきさんかな。あたし、木曜の夜、歌っちゃおうかな。」
「なかなか、面白いところ歌うね。この曲の時のみゆきさんの声、可愛いよね。」
彼女の歌うみゆきさんは、お世辞にも上手いとはいえなかった。
「みゆきさんって、ほんとにミステリアスだよね。」彼女は言った。
「そうだね。血液型も公表していないらしいね。」
「そうそう、何型なんだろう。」彼女も興味があるようだ。
「あなたは何型なの?」と聞いてみる。
「あたしは、B型。」
「へえ、僕はO型だよ。」
「、、、、、、、、、、、、。」
あたしトイレに行くって言って、帰ってこなかった理由を、彼は知らない。
30分待っても帰ってこない彼女に、そうだったんだと気が付いて、カラオケボックスを出る。
急に降り出した雨に、傘をさす気にもなれずに、とぼとぼと駅に向かって歩いて行く。
濡れたGパンの裾が、足首にペットリと引っ付いて気持ちが悪い。
それがO型だ。
でも、それぐらいじゃ、O型は、めげないかもしれないね。
それで、浅草まで移動して、ホテルに泊まったのだろうね。
浅草辺りは、ビジネスホテルも、ややリーズナブルなところが多い。
浅草の夜は意外に早いから、それに昼間の出来事でショックもあって、安い居酒屋でビールを引掛けたら、ホテルに戻ってすぐに寝たんじゃないだろうか。
窓も開かない安いホテルのベッドに横になりながら、彼女の後姿を思い出す。
さすがに、彼も気が付いて、「ああ、あの時、B型だっていえば良かったのか。」と、ぼそりとシミの付いた壁紙を見ながらつぶやいた。
すると、ツーと涙が頬をつたう。
薄っぺらい枕を抱きしめると、思わず、「ぴーちゃん。」と叫んでしまう。
ぴーちゃんとは、彼が小学生の頃に飼っていた雑種の子犬の名前だ。
そういえば、ぴーちゃんも、妹だけにしか、なつかなかったな。
妹は、そういえばA型だった気がする。
「ぴーちゃん、どうして僕だけO型なんだよー。」なんてことは、O型だから考えないだろう。
いい加減だから。
ただ、わが身に起きている不条理には、漠然と気が付いていた。
次の日は、仙台まで移動しているようだ。
仙台までは、7時間ぐらいあればたどり着けるので、或いは、お昼頃までは浅草の浅草寺辺りを散策したのかもしれない。
早めのお昼を食べて仙台に向かう。
気分転換に、ちょっと贅沢をして天丼を食ったのかもしれない。
仙台のホテルに泊まって、晩御飯は、牛タンのお店に入る。
そんな典型的な観光をするのがO型だ。
でもまあ、それは良しとするか。
きっぷに仙台のスタンプが押されるのは、1日置いた15日だから、まる1日は仙台を楽しんだのだろう。
始めからの目的地は、仙台だったのかもしれない。
とはいうものの、伊達政宗のことなども知らない彼は、ただ、ぶらぶらと街中を歩くしかなかったに違いない。
歩き疲れて、オシャレなカフェに入っては見たものの、お尻のあたりが、こそばゆい。
隣のテーブルに、可愛い女の子が座る。
その彼女がカバンから、みゆきさんの夜会工場vol.2のクリアファイルを取り出したけれども、彼は、もう声を掛けることもしなかった。
可哀想である。
O型は、哀れなり。
その夜は、また牛タンのお店に入ってしまう。
そんなことが出来るのがO型なのである。
お店を出て、酔い覚ましに、定禅寺通を、まだ肌寒い風に吹かれながらあるいていると、青葉城恋唄を知らずに口ずさんでいた。
自分は、大阪の八尾から、はるばる青春18きっぷで、仙台までやって来たんだなと思うと、幸せを感じた。
青春18きっぷのスタンプは、翌日の16日の仙台駅で終わっている。
仙台から、青森辺りまで移動して、そこから飛行機で帰ったのかもしれない。
或いは、またもう1日、仙台を楽しんで、仙台から飛行機で帰ったのか。
しかし、前半の飛ばし具合から想像しても、仙台でもう1日はないだろう。
たぶん、青森に行った可能性が高い。
とはいうものの、ここで青春18きっぷである。
もし、この青春18きっぷに拘るなら、少しばかり事情が違ってくる。
仙台から青森に行くには、途中で第3セクターのIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道に乗らなきゃいけない。
この区間は、青春18きっぷは使えないので、別途3000円ぐらいの別料金が発生する。
この3000円。
たかが3000円、されど3000円なのである。
どういうことかというと、青春18きっぷの1日分のきっぷ代2370円よりも高いのだ。
これを、どう考えるかだ。
諦めて、利用するか、或いは別のルートを考えるか。
或いは、第3セクターに乗るのが嫌だからと、最終日は、秋田の方に行ったのかもしれない。
秋田で泊って、そのまま飛行機で大阪に帰ったか。
それは大いにありうる。
秋田といえば、秋田美人。
そんな根拠もない言葉を信じて行ってしまうのが、O型だ。
秋田で、秋田美人に出会えたか。
それは、分からないが、出会えていれば良いのになと思う。
いくら凡でも、たとえ相手がO型でも、しあわせになってほしいのであります。
しかし、ここで思う。
今まで、この青春18きっぷの前の持ち主を、中年のオジサンだと仮定して妄想しておったが、これは或いは、若い女の子だったのかもしれない。
大学を卒業して、これから社会人として1人でやっていかなきゃいけない。
そうすると、時間も思うようには使えないだろうから、卒業記念に旅行でもしてみようと考える。
でも、お友達と仲良くソウルへグルメ旅行なんてことは、どうも違うなと感じている。
今までも、授業が終わってオシャレなカフェで友達と、面白おかしい話をしていても、そう、その時はスゴク楽しいんだけれど、帰り道で、あたしって、これで良いのかなって考えてしまう。
だから、今度の、卒業旅行は、計画の時から1人で行ってみようと思っていたのだ。
それだから、青春18きっぷというのも、女の子としては、少し変わっているのかもしれない。
子どものころから、あなたちょっと変わってるねと言われてきたんだ。
でも、変わっていると自分を評価されることが、少しうれしかった。
血液型で言うと、B型だ。
B型の人間は、一般に、優しくて、頭が良くて、兎に角、悪いところを見つけるのが困難な人が多い。
容姿も、ほぼ、美男美女だ。
因みにではあるが、凡は、B型であります。
素敵だ。
そんなB型の彼女なら、青春18きっぷで卒業記念旅行なんてことも、納得がいく。
それに、ひとり旅も、そうだろうと頷けるのである。
卒業記念だから、ずっとこだわってきたロングヘアーを、思い切ってショートボブにした。
それだけで、自由になった気分になって、大阪駅から東京へ向かって、新快速に乗り込む。
きっと、目はキラキラと輝いてただろうね。
クスリと笑ったら、片えくぼが可愛い。
東京までたどり着いたら、きっと何かをやり遂げた気になっただろうね。
少し疲労もしただろう。
まだ旅慣れしていないから、外で食事をするなんて、これは冒険だ。
或いは、コンビニでお弁当を買って、ホテルで食べたのか。
とはいうものの、B型だ。
そこは、変わっているから、勇気をもって外へ行ったに違いない。
どのお店も、入口まで行っては、立ち止まってしまう。
あたしのような女の子が1人で入っても、かまってはもらえないんじゃないだろうかと不安だ。
そんでもって、悩んで歩き疲れてしまう。
エイヤッっと気合いを入れて、泊っている浅草のホテルの近くの老舗のレストランに入る。
そこで、旅の達人を気取ってビールの小瓶を注文した。
普段は飲まないお酒を飲んで、頬杖をついて窓の外を見る。
「東京だよ。」
細めた目は、中島みゆきさんのような、何とも言えない優しい笑顔だった。
次の日は、きっぷのスタンプを見ると、浅草から仙台に移動している。
そして、仙台で1泊。
何故に仙台なのか。
女の子が、ひとりで、わざわざ仙台に行って何をしたのだろうか。
仙台のスイーツ?
いや、B型は、そんなことには興味が無いはずだ。
或いは、東日本大震災の事を、実際に自分の目で見て考えてみたいということなのだろうか。
B型なら、そういうこともあるだろう。
今も残る爪痕を見て、きっと、彼女は、胸を締め付けられるような気持ちになっただろう。
いや、そんな重いものであって欲しくない。
20代の女の子だもの。
お友達が、仙台にいたとかね。
その場合は、男のであって欲しくはないが、凡と彼女に何も接点が無い訳だから、そんなヤキモチも無意味ではある。
仙台に泊まって、そこから大阪に、青春18きっぷ以外の方法で買ってきた理由を凡は、探してみたい気にはなったのではありますが、その手立てが無いので、ただ、女の子に思いを馳せるだけに終わった。
ただ、きっと、聡明で、可愛い女の子であったに違いないのである。
何しろ、B型なのであるから。
そんな彼なのか、彼女なのかが残した青春18きっぷで、今度は、凡が旅に出ようと思う。
ただ、どこへ行くかは決まっていない。
出かけるのは、3月の27日と28日の2日間だ。

 中島みゆきさんの「リトル・トーキョー」を見に行く前に

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