平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
どれも、すぐに読めちゃう短編なので、読んで頂けたら、うれしいです。

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散散歩歩。(525)うな重に大丈夫ですか。

24日は土用の丑の日。
うなぎを食べる日と誰かが決めた日である。
凡は仕事帰りにコンビニに寄った。
一時はアルコール性の前頭葉萎縮だと言われて禁酒をしていたが、めまいで通っている脳のクリニックの先生が大丈夫だというので、また晩酌が復活したのでありまして、コンビニでビールでも買って帰ろうかと寄ったのであります。
ふと棚を見ると、うな重を売っていて、半額のシールが貼ってある。
半額のシールの横のプライスのシールを見ると940円だ。
ということは、470円ということになる。
ご飯の上にうなぎが2枚乗っかっていて、その甘辛いタレの味を想像すると食べたくなってきた。
しかし、コンビニでうなぎというのも趣にはかける。
とはいうものの、気分はうなぎだ。
既に甘辛のタレが凡の想像のなかでは口の中で何とも言えない旨味を展開している。
土用の丑の日にコンビニのうなぎとは、どうも趣にはかけるのではあるが、これも半額の縁だ。
普段なら買わないが、ここは縁ということで買ってもいいだろう。
そう思ってレジに持っていった。
するとどうだ、店員さんがうな重のレジを通すときに940円と言ったのだ。
普通なら、940円と言った後に「半額です。」などと言うのがルールとまでは言わないが、スーパーでもそう言ってこちらを安心させてくれる。
でも、目の前の女の子は言わない。
不安になって、凡は聞いた。
「あの、これ半額ですよね。」
すると、店員は言ったのだ。
「これが半額の値段です。」
凡は愕然とした。
コンビニで、定価が1880円のものがあるのか。
それを迂闊にも凡は、レジまで持ってきてしまった。
するとどうだ、多少他人が見ても明らかに動揺していたのだろうか、店員は、「大丈夫ですか。」ときたのである。
しかし、この大丈夫ですかと言う言い方はどうなんだと凡は言いたいのである。
このような表現は、若い店員が使うことが多い。
だけれど、そんな風に聞かれるとどうにも、気持ちが悪いのである
凡の気持ちは大いに大丈夫じゃない。 既に腰が引けてしまっているのである。
普通なら、ここは「よろしいでしょうか。」というべきではないだろうか。
それなら、まだ納得がいく。
この質問に対する答えは単純だからだ。
良いか、ダメかだ。
たとえ、腰が引けていても良いと答えれば、それは買うということであって、そこに何の矛盾がない。
後悔はするのかもしれないが、凡のこころは納得がいく。
然るに、この大丈夫ですかという質問は、どうだ。
レジまでうな重を持って来てしまったのだから、今更いらないとは言えないだろう。
ましてや、目の前の店員は女の子だ。
こんな時に限って女の子なんだ。
そして凡はうな重を持ってきてしまった。
そして、買わなきゃいけない状況である。
それは仕方がない。
よし、買おう。
とはいうものの、凡の心中は、大いに腰が引けている。
できることならキャンセルしたい。
でも、それはしない。
だから、買うのである
しかしだ。
ここで大丈夫ですかと聞かれたら。
女の子には大丈夫だと答えねばならない。
しかしだ。
凡の心中は大いに穏やかじゃない。
腰が引けているんだ。
ということはだ、凡の心中と女の子に答える言葉が違うことになる。
ここが大いに気持ちが悪い。
言葉と行動に矛盾が生じているんだ。
とはいうものの、矛盾を起こさないためには、「大丈夫じゃないよ、でもレジまで持って来てしまったんだから買うよ。」と言わなければいけないが、これは恥ずかしだろう。
そこで、大丈夫と答えることになるわけだが、大いに気持ちが悪い。
この大丈夫ですかとという質問ぐらいタチの悪い質問はないだろう。
そんな気持ち悪さを覚えながらもうな重を購入して、コンビニを出た。
でも、コンビニで940円のうな重を買ったという後悔が凡を大きく包み込んでいた。
なので帰り道ミニボンに電話をした。
すると言うのである。
「ネガティブ川柳に書いたらいいやん。」と。
そうだ、いいネタができたと思えばいい。
そして、ミニボンは付け足した。
「転んでもタダで起きたらアカンで。」
その帰り道、ずっとこの一連の悔しさを575に当てはめてみるのだけれど、どうにも575じゃ収まりきれない。
家に帰って、「これ鹿児島産やて。」などとつぶやきながら、気持ち悪くも件のうな重をいただいたのでございます。
なのだけれども、どうにも575にはならないのであります。
「半額の、シール、、、、。」
「うな重の、、、、。」
「コンビニで、、、、。」
やはり出来ない。
どうも、転んだまま、タダで寂しく起き上がることになるのでありましょうか。
はたまた、転んだままなのでありましょうか。
なんとも悩ましいうな重なのでありました。
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平 凡蔵。の本。


◆「アルカディアのレフュジー」

 中島みゆきさんの「一会」を見に行く前に
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