平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
どれも、すぐに読めちゃう短編なので、読んで頂けたら、うれしいです。

創作劇場は、ここをクリックしてください。⇒⇒⇒

散散歩歩。(498)凡、アルコール性前頭葉萎縮になっていた。

階段を滑り落ちた次の日。
4月8日。
前日の救急でお世話になった大手前病院で相談した守口敬任会病院に、ミニボンと一緒にタクシーで行く。
何しろ、右手首が骨折しているので字も書けないし、両手が思うようにならないので、ミニボンがいないと何も出来るものではない状態なのであります。
受付をして、整形外科のドアの前で待っていると、ややあって凡が呼ばれた。
中に入ると、スッキリとしたスタイルの女性が椅子に座っていて、凡を見た。
女医だ。
しかも、若い。或いは、30代か。
しかも、綺麗な人である。
しかも、話し方がサバサバしていて気持ちがいい。
これは、すべて凡の好みじゃないか。
昨夜の運命論的な見方でいうと、凡はこの女医さんに会うために、階段を滑り落ち骨折したのだろうか。
少しばかり、顔が崩れてしまうが、横にはミニボンが心配そうに座っていた。
そうなのである、凡は治療するために来たのである。
昨夜のレントゲンを見ての先生の見解は同じだった。
3ヶ所骨折しているという。
凡の指にシビレはないかと指先を先生が触って診てくれる。
至福の瞬間だ。
とはいうものの、凡は治療という行為をするために来たのである。
隣にはミニボンがいる。
不可能だ。
もし、凡が綺麗な女医さんと巡り会うために階段でコケて滑り落ちたという運命の繋がりを探し出すには、ミニボンが横にいては、その道理が立たない。
骨折と綺麗な女医さんとの運命論的な繋がりを見つけることは、不可能なのである。
ミニボンが横にいるということは、他の理由でもって骨折したということである。
しかし、今はそんな繋がりを模索している場合ではない。
凡の両手は、どうにも痛くって、まずは治療が先である。
首の痛みもあり、立ちくらみの症状もあるので、念のために頭から背中にかけてもCTも撮ってもらう。
脳外科で簡単な受け答えをして、レントゲンの受付で待っていると、
ミニボンが、「今日はもう、お酒の飲まへんやろ。」と来たのであります。
「いや、どうかな。」と言うと、
「骨折治るまで飲んだらアカンのと違う?」というのである。
別にお酒を飲んでいて、それでコケて滑り落ちて骨折した訳じゃない。
それに、骨折したからお酒はダメという理屈は、凡の明晰な分析をもってしても、繋ぎ合わせることが出来ないのである。
そんな話をしている間に、順番が来てCT室へと入った。
これも人生初のCTである。
撮り終わって、再度脳外科で頭部のCTの結果を聞く。
これが答えだったのか。
これが、凡が昨夜にコケて滑り落ちて骨折した運命論的な意味だったのか。
しかし突然のことで、にわかには信じたくない。
凡が脳外科の椅子に座ると丸顔の鼻の下に白髪混じりのヒゲをたくわえた年配の先生が、凡の頭の画像を見ながらパソコンに文字を打っている。
ミニボンには見えないが、先生の横にいる凡にはハッキリと見えた。
「カタカタカタ、、、アルコール性前頭葉萎縮。」
パソコンを打ち終わると先生は言った。
「酒は飲むか?」
「はい。」という答えしかない。
すると先生は言った。
「10年早いな。」
凡は、咄嗟にその意味が分からず、「10年早いと言うと。」と聞き直してしまう。
先生は容赦なく言った。
「あんたの脳の萎縮は、今の年齢から言うと10年進んでる。」
「、、、、10年って、そんなあ。」
凡もミニボンも、その説明聞いて、骨折のことが吹き飛んでしまった。
先生いわく、これは500万円ぐらいの量のお酒飲んでるなという。
そんな、今ここで凡の飲んだお酒の累計金額を計算しても、どうなの。
そんでもって、これでは若年性の認知症になるというのだ。
認知症に、、、、。
凡だけじゃなく、ミニボンも驚いている。
「認知症って、そんなん。先生、何か回復する方法ないんですか。」
「先生、薬はないんですか。」
など、必死に安易な方法を先生に聞くが、無いと言う。
ここの先生はみんなサバサバとしていて、話し易いけれど、こんな事もサバサバと言ってくれる。
画像の説明を色々してくれたその後に言った。
「あ、そうや。今日は外傷で来たんやったな。」
いや、今は外傷より気になるねんけど。
とはいうものの、凡の脳の状態も、放っておくことが出来ないようで、9月に再度検査をすることになった。
脳外科を出るとミニボンが言った。
「な。もうお酒やめよ。」
ミニボンの言うことはもっともである。
「でも、今家にあるビール飲んでからでも。」
なんて、往生際の悪い凡であったのではありますが、やっぱり先生にあそこまで言われたら、止めざるを得ないのは、これが運命論的な意味だったのだろう。
こんなことで、こんな日に、こんな形で、ビールを止める事になるとは。
大学生時代から毎日続いたビール人生も、突然に今日この日に、突然に終わったのである。
チーン!
凡の飲酒人生は、ご成仏されました。
南無阿弥陀。
南無阿弥陀。
やむ得ないことは、即ち、仕方がない。
仕方がない事は、人生の常態である。
それに何より、凡もそんなに容易く認知症になる訳にはいかないのである。
凡が認知症になったら、ミニボンが可哀想であるから。
とはいうものの、凡が先にボケるか、ミニボンが先にボケるか、凡が先に死ぬか、ミニボンが先に死ぬか、そんなことは分からないものであります。
或いは、認知症になって、どこか知らないところを彷徨って、どこか知らないところで、倒れて凍えて、或いは、衰弱して、名前も分からない人として、死ぬのも本人に とっては楽なのかもしれないと思う。
もし、凡が認知症になったら、ミニボンにも凡が帰って来なくても探さなくていいと伝えたい。
ずっと認知症のまま一緒に過ごすのは、悲惨過ぎるからだ。
凡の両親は、痴呆症でも認知症でもなかったが、何度も入退院をしたので、そんな人達を、よく見てきた。
病院には、そんな人達を集めた部屋があって、一歩病室に入ると便の匂いが鼻をついて堪らない、食事時間になると、おかずとご飯をぐちゃぐちゃにしたものを、看護婦さんによそ見しながら、機械的に口にスプーンで運ばれる。
父親が、そんな部屋に一時的に入れられたことがあったのです。
凡は1秒でも早く飛び出したかったのですが、父親は凡に「ここは、静かでいい。」と言ったのです。
今思えば、凡に心配を掛けないための言葉だったのか、本当にそう思ってたのか。
とにかくね、介護というのは、いつまで続くか分からない、長い修行のようなものであって、修行と違うのは、お世話をしてもしても、状況は悪なっていく苦行なのであります。
ミニボンでも、他の人であっても、そんな苦行のような凡の介護の為に付き合わせたくない。
ただ、先のことは分からないのだから、分からないことは、考えるのはやめよう。
とはいうものの、認知症にならないように、策は立てなきゃね。
さて、今日の本来の目的である整形外科に、結果を聞きに行くと、 CTの結果には、外傷の問題点はなく、治療方針が決まった。
9日後の16日に再度レントゲンを撮って、骨がズレていなかったらギブス、ズレていたりしたら手術することになった。
手術というのもショックだけれど、病院を出た凡とミニボンには、アルコール性前頭葉萎縮という言葉が重く心に響いていた。
家ではお酒を止めて、外食や旅行の時だけ飲むことにしたらとミニボンは、言うのだけれど、そんな上手く切り替えられるのだろうか。
いっそ、まったく飲まない方が、続きやすいとも思う。
ただ、ただである。
禁酒はしよう。
ただ、ただなのである。
みゆきさんは、お酒を飲むようである。
なので、みゆきさんとデートするときだけは、お酒を飲まして欲しいと、ミニボンにお願いをしたのであります。
と、アルコールのことばかり書いているけれど、これがね、右手首と鎖骨が、どうにもこうにも痛くて、身動きが出来ずに辛いのであります。
本当に痛いのであります。

コメント

  1. 北のトド より:

    みゆきさんに新しい動きもなかったため、当ブログ数日振りに訪れてビックリしました。大変な災難にあっていらっしゃたのですね。あまりご無理なさいませんように。一日も早い回復を祈っております。

  2. うかれぶた より:

    凡さん、お見舞い申しあげます。
    しかし、即入院とかの大事には至らなくて 良かったです。
    痛みと不自由さとの戦い、大変ですが、がんばって下さいね(^-^)/
    と、今頭痛と、踵の痛みだけでまいっている私。痛みだけは、生きてる証しにしてほしくないですぅ。
    そりにしても、骨折繋がり?!とは痛い話ですが… 今日、彼の お友達が 大腿骨骨折の入院から3ヶ月目で 退院。お迎えのお手伝いに、、、。
    去年の今頃は、彼が 大腿骨骨折で入院してて、退院後も松葉杖生活。
    何もかもが 大変。なのを見ているだけで、普通のありがたさを感じます。
    でも、骨折のおかげ?で出逢えたとも言えるし(*^-‘)でも、お友達にお世話になったお返しに、彼の休日はずっとお友達の方へ行ってる、寂しさ(__)
    酒が飲みたくなる…
    みゆきさんも、最近ウィスキーもプラスしてるみたいだし。。でも、みゆきさん、骨折凡さんを気にかけていると思いますよ♪
    お大事に(^^)

  3. 凡蔵。 より:

    ありがとう、北のトドさん。
    そうなんですよ、思ってもいなかった災難というか、私の不注意で階段を滑り落ちてしまいました。
    それも不注意と今言いましたけれど、足の先が上がってなくて躓いたのか、それだったら齢のせいなのかもしれなくて、その瞬間を覚えていないというのは、或いはボケの初期症状なのか、いずれにしてもエライことになっています。
    まだ出勤できる状態でなく、この先の予定がたちません。
    足は元気なんですけれどね、手が使えないと何もできないものですね。

  4. 凡蔵。 より:

    ありがとう、うかれぶたさん。
    うかれぶたさんは、頭痛と踵の痛みですか。
    人間、痛いと、ホント弱気になるというか、ダメですよね。
    もっともっと強い鎮痛剤が発売されることを日々願っております。
    それにしても、彼もその友達も、大腿骨骨折ですか。
    私は、その繋がりには入りたくないなあ。
    大腿骨は、それは怖いな。
    お酒はね、、、寂しいうかれぶたさんに付き合って飲みたいのですが、
    なんと今、家では禁酒しているんですよ。
    アルコール性の委縮の場合は、元に戻る可能性もあるという説もあるので、
    取りあえずは、お酒を減らして、B12とかの有効な成分も補って、次の検査までには結果を出したいなと思っています。
    それもこれも、みゆきさんとお酒を酌み交わすためなのであります。

タイトルとURLをコピーしました