平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
どれも、すぐに読めちゃう短編なので、読んで頂けたら、うれしいです。

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散散歩歩。(247)アイラブユー・ほたえてくれ!みゆきさーん。(16)

「みゆきさん、ごめんなさーい。」
悪い凡のお尻をぺんぺんしてください。
とはいうものの、みゆきさんにお尻ぺんぺんしてもらえるなんて、それはお仕置きじゃなくて、ご褒美というものだろう。
そして今、凡はここ東京で、ファンとしてやってはいけないことをやろうとしている。
というか、そもそも凡はみゆきさんのファンではない。
今年の8月にみゆきさんに一目惚れをした1人のハンサムな男性なのである。
ただ、ただ、みゆきさんが好きなのです。
ファンと言うのは、みゆきさんの歌を聴いて「いいなあ。」なんて思ってなるものだろう。
特にみゆきさんのファンは歌にこだわる。
でも、凡はみゆきさんの歌を知らない。
好きになってから聴きだして、今はみゆきさんの歌も大好きだけど。
そして、やってはいけないことであります。
東京へ来たんだから、みゆきさんに少しでも近づきたい。
勿論、今夜はコンサートだ。
でも、普段みゆきさんが生活している空間に、この凡の身を置いてみたいのです。
普段みゆきさんが吸っている同じ空気を吸いたい。
普段みゆきさんが歩いている道を歩きたい。
そう思った凡は、みゆきさんの住む街へ向かっていた。
そして、多分無理であろうけど、みゆきさんに出会えた時の為に、あるものを渡そうとして用意した。
凡の電話番号などの個人情報を書いたメモだ。
本当は電話番号やメールを聞きたい。
でも、突然現れた中年の男性にそんな簡単に教えて呉れるなんてことは、想像できない。
でも、みゆきさんと付き合いたいのであります。
でも、今の凡には、みゆきさんが振り向いてくれるようなものは、何もない。
ないどころか、自分の持っているものは、すべてマイナスなのだ。
ゼロ以下。
ゼロ以下の自分。
ゼロ以下の存在。
そんなもの、存在っていえるのか。
でも、付き合いたい。
なので、メモを渡して、こう言うつもりだ。
「今は、何も持っていないけれど、1年待ってください。もしその1年で、みゆきさんが認めてもらえるものが出来たなら、その時はデートしてください。」とね。
そして、みゆきさんの自宅までやってきた。
素敵な街だ。
そして、家の前で、大きな深呼吸をした。
ああ、これがいつも、みゆきさんが吸っている空気なんだ。
そして、目の前にみゆきさんの家がある。
ということは、今凡の立っている場所から、門や壁といった物体があるけれども、この5メーターか10メーターかの先には、、普段みゆきさんが生活している空間があるということだ。
そして、そこには今朝使った歯ブラシや、寝汗をかいたパジャマがあるということだ。
そして、何より、ひょっとしたら、みゆきさん本人がいるかもしれないということだ。
今まで、テレビなどでストーカーの犯罪のニュースが流れると、気持ち悪い人もいるもんだなあと思っていたのですが、その気持ちも解らないでもないなあと思った。
とはいうものの、凡はみゆきさんに惚れている。
惚れた女の嫌がることをするのは、凡の本意ではない。
この場所からは、もうすぐに離れよう。
長居は無用だ。
みゆきさんには、正々堂々と告白すればいい。
最後に、両手を大きくグルリンと回して、胸いっぱいに空気を吸い込んだ。
さて、これからどこか東京の名所でも行ってみますか。
みゆきさんの家を後にして歩き出した。
用意したメモを渡せなかったことが残念だけれど、どこかに、こころのどこかに、渡せなくてホッとしている自分がいた。
多分、出会えても渡せなかっただろう。
どこまでも、小心な凡であります。

画像

(みゆきさんは、ソーダ味のアイスが好きだという。みゆきさんの行ったかもしれないコンビニで、買ったかもしれないガリガリ君を買って食べた。)

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