平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
どれも、すぐに読めちゃう短編なので、読んで頂けたら、うれしいです。

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散散歩歩。(67)セルロイドの万年筆。

白いワイシャツの袖を腕まくりして、机に向かう。
濃いグリーンのランプシェイドに、ピースの紫煙を燻らせながら、髪の毛をかき上げ、深いため息をついた。
黒いエボナイトの万年筆のキャップを外し、クリーム色の原稿用紙に筆を走らす。
ブルーブラックのインクが知的な想像を文字に変える。
「サラサラのロングヘアーの、、、」そう書いた後、額に皺をよせて目を瞑った。
そんな光景が中学生の頃はカッコいいと思っていた。
凡は煙草は吸わないのですが、万年筆には、まだ憧れがある。
中学の頃は、万年筆と時計が大人を感じさせる重要なアイテムだった。
今のように中学生でも携帯電話を持つことが普通の時代では、想像も出来ないだろうし、万年筆なんてハナから要らないものだろう。
当時の中学時代だったか中学コースという雑誌を年間購入すると、最初に特典がついてくる。
その特典というかオマケが万年筆だった。
何ともそのオマケが魅力的で、親に頼んで雑誌を予約してもらって、万年筆を貰うことが出来のではあります。
しかし、その書き心地は、滑りも悪く、インクの出かたもイマイチで、ものすごい意気込みで持つことができたのに、内心がっかりしたのを覚えている。
さて、そんな万年筆に対する憧れの気持ちは、中年になった今も続いていて、文房具売り場の前にくると、ついついショウケースを覗き込んでしまう。
そんな凡に、またまた心をくすぐられる番組が昨年の暮れに放映されていた。
それは、関西テレビの朝の番組で、関西の街を何の予定もなく、ぶらぶら歩いて回るという内容です。
その中で城東区のある小さな文房具店が写った。
文房具店といっても、表の扉は閉まっているので、外からは何のお店か、また営業しているのかもわからない。
でも、そのお店は昔のセルロイドの万年筆を扱っているお店だったのです。
その番組を見てから、どうしても行きたいと思っていたのですが、なかなか行けずにいました。
そして、先日ですが、時間が出来たので、ミニボンと行ってみようということになったのであります。
大阪の城東区にある「西尾製作所」さんです。
実はここは、両親が住んでいたマンションのすぐ近くにあったのですが、今まで気が付かずに通り過ぎていました。
お店の前に来ると、戸が閉まっています。
外から見える棚には鉛筆が並んでいました。
戸をあけて中に入って、声を掛けた。
奥の部屋から奥さんが出て来たので「テレビで見たので来ました。」と告げた。
それで、奥さんも意味が解って、快く迎え入れてくれた。
すぐに戸棚の中の万年筆を取り出して、テーブルの上に広げてくれる。
その万年筆は、どれも昔の文章書きが使ったであろう雰囲気を持っていて、見ているだけでこころが踊る。
しばらくして、奥から旦那さんが出てきた。
椅子に座って話を聞く。
どれも戦後すぐの万年筆で、旦那さんも今の時代売れるとは思わなかったそうです。
テレビで放送されてからは、1か月ぐらいはすごい反応だったそうで、お客さんも多かったとのことです。
中には東京から来て、ネットオークションなんかに掛けるために、沢山買っていかれるお客様もあるようです。
すごく気さくなお二人で、テレビ放映後の色んなお客さんの話や、奥さんの病院の話など、50分ぐらいはお話をしていたでしょうか。
万年筆を買いに来たのですが、それよりはお二人のお話が楽しく、ゆっくりとした時間を愉しみました。
万年筆は、古いものなので、どれも完璧という訳ではなさそうで、調子が悪かったら持って来てと奥さんがおっしゃる。
「きっと、調子が悪いと、持ってくるような気がする。そんな気がする。」なんておっしゃって、少し可笑しかった。
折角なので、ミニボンがピンクのセルロイドの万年筆。
凡は、セルロイドの万年筆と、エボナイトの万年筆と、フーボーというプラスティックで出来た万年筆を買った。
それぞれインクの入れ方なんかをお聞きして、また、中のインクの部分のコルクを交換してもらう。
1本2000円

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それぞれ硫酸紙の袋に入れてもらって帰る。
ペン先はステンレスなので、すらすらという感じではないが、カリカリという音が、また昔の学生が使いそうで、うれしい。
どれも時代を感じさせるお気に入りになりそうだ。
さてさて、今日買った万年筆は、調子が悪くなって、また見てもらいにくることになるのだろうか。
でも、またお二人と話をしに行きたいのではあります。

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横のレバーでインクを吸いあげるタイプ

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これにはインクを入れる手作りのスポイドもつけてくれた。

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フーボーでできた万年筆。色がきれいだ。

コメント

  1. koji より:

    いいですねえ、万年筆。
    ボクもいまだに憧れがありますし、一時期、使っていました。
    滑らかな書き味は、長く書いても疲れないですよね。
    いまは、4色ボールペンと水性ペンばかり使っていて、風情がありませんね(笑)

  2. とっちゃん より:

    凡蔵さん万年筆とは渋いですね~
    自分なんかは字が下手なんで、万年筆なんかだと最悪の字になっちゃいますよ・・・

  3. 凡蔵。 より:

    ありがとう、kojiさん。
    最近は万年筆を使うシーンって少なくなりましたよね。
    仕事はほとんどボールペンかシャーペンだし。
    でも、何か惹かれるものがあるんです。
    余裕がないと、使えない筆記用具ですよね。

  4. 凡蔵。 より:

    ありがとう、とっちゃん。
    私も、字は下手ですが、インクの字って、ちょっと上品に見えたりしますよね。
    でも、生活のシーンではそれほど使うことがないですね。

  5. oriver より:

    素敵なお話しです(*^_^*)
    オシャレな大人の雑誌の中ほどになるコラムを読んでいるようでした。
    万年筆ってこの年になっても「大人のもの」って感じがします。万年筆風の物を良く使います。なぜだか、いつもより字がキレイにみえます(^^ゞ

  6. 凡蔵。 より:

    ありがとう、oriverさん。
    今回は、お店のお二人とお話できたことが、何より楽しかったです。
    また、行きたいのですが、そんなに沢山セルロイドの万年筆もいらないし。
    万年筆の調子が悪くなったら行けるんだけど、調子が悪くなるのを期待するなんて妙ですよね。

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