平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
どれも、すぐに読めちゃう短編なので、読んで頂けたら、うれしいです。

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散散歩歩。(22)窃盗団の仲間

駅や人が集まるところに、ちょっと変わったというか、ヘンな人がいることがありますよね。
凡はそんな人が気になってしまう。
学生時代に本屋で立ち読みをしていると、浮浪者のような少し汚い格好の男性が何やらぶつぶつと独り言をつぶやいている。
「うん、こうして息を止めると、だんだん苦しくなってくる。うん、これが真空というものだ。」
そんなことをずっと小さな声でつぶやき続けている。
「おっちゃん、それ真空と違うで。」と突っ込みたいところだけれど、何しろヘンな人なのでじっと聞いているしかなかった。
勿論、その場を離れればいいのだけれど、凡はこんな人が気になる。
しかし、これが後々大変な事になるとは、この時は思わなかったのである。
凡はこのときに聞いた、このフレーズが、頭にこびり付いて、忘れる事が出来なくなってしまったのです。
この時から、もう30年近くなるのですが、まだ頭の中にこびり付いていて、ふと油断したときに思い出すのである。
昨日も通勤途中に思い出した。
思い出したからといって、ものすごく大変な不利益がある訳ではないけれど、思い出してもちっとも嬉しくない。
しかも、息を止めて苦しいから真空なんて、そんなどう考えたって間違っている情報やん。
おっちゃん何て言うこと言ってくれたんや。
恨んでみても仕方がない。
これから何百回、いや何千回「これが真空だ。」を思い出すことになるのだろう。
ああ、忘れたい。
しかし、これも凡の人生のオマケなのか。
しかし、いらないオマケである。
先日、仕事帰りの京阪電車に乗っていました。
ドアの近くのつり革に摑まっていると、隣の女性の動きがおかしいのです。
あたりをキョロキョロ見回したり、メモをとったりしています。
「ん?何かの調査?秘密の潜入捜査官なのか。」
ピーピングトムの凡は、その人のメモを覗いてしまいました。
というか、覗こうと思って無理やり覗いたんじゃなくて、そのまま凡が立っている位置から見えてしまうのです。
メモを覗くと、「この車両に窃盗団の仲間何人いる。」と書いてある。
窃盗団?
しかも、その仲間?
女性捜査官は、何度も何度もキョロキョロを繰り返しては、メモを取っている。
「何人いる」の下に「11人」と書いてあって、それを二重線で消してある。
その下にも、何回も「何人」とかいては、消してあるのです。
それに、何やら計算式のようなものが書いてあって、女性捜査官は自分で色々計算をしているようだ。
「大変ですね、ご苦労様。」
そう声を掛けたくなったが、ちょっと怖い。
更に見ていると、女性捜査官はあたりを見回してはメモを取り続けた。
最後に見ると、「9人」とあった。
どうやらこの車両には窃盗団の仲間は9人いるようだ。
凡は窃盗団の仲間をどうやって見分けるのが非常に気になったが、聞けなかった。
女性捜査官は凡の駅の一つ前で降りたのだけれど、どうするのかなって走り出した電車のドアに顔を引っ付けてみていると、彼女はそのメモをクシャクシャって丸めて駅の窓から外へ投げ捨てた。
えーっ。
そんなことをしたら、今までの調査は何だったんだ。
ひょっとして駅の窓の下に、黒ずくめの男性がいて、そのメモを受け取っているのか。
ひょっとして、スパイなのか。
「9人」の意味は「作戦決行?」
でも、何の作戦だ。
今までの彼女の行動の意味を考えながら歩いて帰ったがその答えはでなかった。
それにしても、駅の外であのメモを拾ったら気持ち悪いだろうな。
帰り道、歩きながら女性捜査官のことが気になってしょうがなかった。
女性捜査官と凡と、どっちがヘンなのでしょうか。

コメント

  1. koji より:

    面白いですね。
    素晴らしい観察力!
    その人は『操作官ごっこ』をしてたのかなあ?
    ・・・痛風は良くなりましたか?
    マッコリはジンロが好きです。
    ペットボトルのヤツ。少し甘いので炭酸をちょっと加えてサワー風にして飲んでますよ。

  2. oriver より:

    その方小説でも書いているのでしょうか?!
    色んな人がいますが、その偶然に出くわす凡蔵。さんは強運だと思う♪
    あ!だからと言って暴飲暴食はいけません。
    釘をさしておきます!(笑)
    凡蔵。さんのこと、読めてるでしょ♪(笑)

  3. 凡蔵。 より:

    ありがとう、kojiさん。
    マッコリの炭酸割りを聞いてから、飲んでみたくて仕方がないのですが、通勤の途中にはマッコリを売っている店がありません。
    30分ぐらい遠回りしたらあるので、こんど試してみます。
    楽しみです。

  4. 凡蔵。 より:

    ありがとう、oriverさん。
    この人の私生活にも興味があるんです。
    家では普通の主婦で、いいお母さんだったりするのでしょうか。
    ある日、娘が京阪電車の中でお母さんを発見する。「お母さん」って声を掛けようとしたら、お母さんは捜査中。
    、、、なんて、色々想像が膨らんでいきます。
    暴飲暴食、、、ダメですか。
    oriverさんに、読まれていましたね。

  5. emi より:

    こんにちは。
    「なぜ人数を数えていたのか」も気になりますが、「なぜメモを捨てたのか」がさらに気になります。
    考えてみれば謎だらけですね~
    凡蔵。さん、きっとこの出来事も真空おじさんと同様、ふとした時に思いだしそうですね。
    …というか、私が思い出しそうです。
    衝撃的かつ興味深い話でした

  6. 凡蔵。 より:

    ありがとう、emiさん。
    そうなんです、この女性の事もまた忘れられなくて、ふとしたときに思い出しそうです。
    どうして、変なことは忘れられないのでしょうね。
    思い出したいことは、全然思い出せないのに。
    よく、死ぬ前とか大怪我をしたときに、今までの人生のことが走馬灯のように浮かんでくるって聞くのですが、こんな変な記憶ばかりが走馬灯のように浮かんできたら、ちょっと嫌だな。
    楽しいことばかり浮かんで来て欲しいですね。

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