そうだ、ソウルへ行こう！（154）

「今晩、何食べたい。」
玄関のドアノブに手をかけた瞬間ミニボンが言った。
今、凡は急いでいる。
誰でも朝は急いでいるだろう。
なのにいつも、出かける瞬間に聞くのです。
その気持ちは解らないでもないのです。
ミニボン曰く、最近何を作っていいか、思い浮かばないらしいのです。
とはいうものの、今もう時間がないって思っているときに、それを聞かれても思いつかない。
それに、今までミニボンが作ってくれたものは、すべて美味しいと思って食べてるので、何を作ってくれてもいいのですが、本人は悩んでいるようです。
今まで料理に注文をつけたのは、おでんはよく煮てくれということと、玉子のカラザを取ってくれということだけだ。
我が家では、玉子のカラザを玉子のヘソと呼んでいる。
料理をする際に、このヘソを取る人は全体の何パーセントぐらいいるのだろうか。
見た目も気持ち悪いし、食べた時の食感も嫌だ。
思っていると、最近そのカラザを取るスプーンというものを発売していることを知った。
これを発明した人は、エライ！
外食のお店では玉子のカラザを取って調理する人は少ないかもしれない。
でも、きっと味にこだわった高級料理人は、このカラザを取って調理しているはずだ。
そういう繊細なことにこだわる人こそ、真の料理人と呼べるのである。
凡のお願いの甲斐あって、ミニボンは必ず玉子のヘソを取ってくれる。
でも、おでんを良く煮ることは、しっくりとは納得していないようだ。
おでんの具でも、特にごぼ天はよく煮てほしい。
ミニボンは、いつもおでんを作るときに「ごぼ天は、よく煮てくれ。」と凡に聞こえるように言ってからつくる。
でも、作ってくれるのだから、本当に感謝。
とはいうものの、ごぼ天をよく煮てもらえるまで１０年以上かかった。
それでもって、今日の朝である。
「今晩、何食べたい。」
そう聞くので何かリクエストをしようと思った。
でも、時間がないので考えている閑はない。
咄嗟に、テーブルの上にカレーのルーの箱が置いてあるのを思い出した。
「じゃあ、かれーでもいいよ。」
すると、ミニボンが言った。
「デモイイヨと言われて作る馬鹿いる？」
ミニボンに言わせると、どうして「ガイイ。」って言わないのということなのである。
それはそうかもしれない。
それにまだカレーについて言いたい事があるようだ。
（でも、凡は急いでいるんだけどなあ。）
ミニボン曰く、
凡の場合、「晩御飯はカレーです。」という具合にはいかないのだという。
その前に、「おかず」がいるのというのだ。
ビールを飲むためのおかずだ。
から揚げや、サラダ、煮物などのおかずが普段通りの品数が必要なのである。
いつものようにビールを飲みながらおかずを食べて、もうお腹いっぱいとなってからカレーを食べるのだ。
「せやから、そんなん。最後のお茶漬けがカレーに変わるだけで、よけいに手間が掛かるねん。」
それはそうだ、まったくその通り。
おっしゃるとおりであります。
晩御飯の希望が決まらないまま、外へ出た。
お昼前にミニボンからメールが入る。
「馬鹿がデイイと言われてカレーを作っているから、お昼はカレーを食べないでね。」
ありがとう。
我が家では、大きな鍋にいっぱいカレーを作るので、夜に3,4杯食べても沢山残ります。
そんな次の日は、食パンにカレーを塗って食べるのが大好きです。
辛さで食が進んで、３枚食べてしまいました。
そして、次の日の夕食はカレーうどんです。
勿論、お茶漬けの代わりとして。