平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
どれも、すぐに読めちゃう短編なので、読んで頂けたら、うれしいです。

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そうだ、ソウルへ行こう!(111)

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さて、出国手続きもしてしまおう。
折角だから、出国した後の免税店なんかの雰囲気も味わいたい。
綺麗なお姉さんが香水の香りをぷんぷんさせながら、声を掛けてくるのは何だか嬉しい。
あの香水の香りをかぐだけで、海外旅行に来たんだなと実感する。
さてさて、とはいうものの、あまり香水の香りを楽しんでもいられない。
早めにゲートに向かおう。
何しろ、今回はデラックスクラス。
搭乗する際に、真っ先にアナウンスで呼ばれます。
まずはこの「真っ先に搭乗」を体験してみなくちゃ。
ゲートの椅子に座るも、何だか落ち着かない。
トイレへ行ったり、きょろきょろ辺りを見たり、飛行機の写真を撮ったり、久しぶりの海外旅行です、遠足に来た嬉しくて堪らない子供のようです。
ふと隣の椅子を見ると、凡と同じぐらいの年のカップルがいた。
男性はすらっとしたスーツ姿。女性は上品なツーピースのスーツに7センチのヒール。
上品に椅子に腰掛け搭乗を待っている。
きょろきょろすることもなく、むしろ無表情に見えるほどクールな感じで座っていた。
「ひょっとしてビジネスクラス」かな。
凡は、一目見ただけでビジネスと判るカップルに「負けた」と思った。
こっちは「タダ」のビジネスだけど、向こうは「本物の」ビジネスだ。
まだ、ビジネスと決まったわけではないが、どう見たってそうに違いない。
そんなことを、きょろきょろしながら考えていましたら、搭乗口からアナウンスがありました。
「待ってました。」
ここであんまり急いで行くと、にわか作りのビジネスだと判ってしまいます。
早く早くと思いつつも、ゆったりと「いつものことなんですよ。いつもビジネスだから焦ってはいませんよ。」というような雰囲気で立ち上がり搭乗口に向かいました。
搭乗口には、ビジネスと書かれた入り口とエコノミーと書かれた入り口があります。
凡はもちろんビジネスと書かれた入り口にゆっくりと堂々として向かいました。
よしこれで真っ先に搭乗するということを体験できるんだなと思って、ふと横を見ると、なんとエコノミーの乗客がすでにぞろぞろと搭乗していくではありませんか。
「みなさん、みなさん。今のアナウンス聞いていました?先にビジネスクラスの搭乗が先だってアナウンスがあったでしょ。」
そんなアナウンスも虚しく、凡はエコノミーと一緒に機内に乗り込むこととなったのであります。
ああ、ビジネスなのに。
機内に入ると飛行機が小さいためか、デラックスクラスの座席は右に2席、左に2席の3列分なので12席のみしかありません。
ここは選ばれたもののみが座ることを許された聖域なのである。
そのデラックスな空間の最前列に座った。
横を見るとさっきの本物のビジネスが座った。やっぱり。
デラックスの座席は確かに横幅はゆったりとしているが、前後のスペースは思ったほど余裕はなかった。
席に座るとスチュワーデスさんがコートをお預かりしますと言ってきた。
凡のコートは袖口が擦り切れてボロボロになったコートだ。
ちょっと恥ずかしい。
「あの、これはね。普段はもっといいコートを着てるんだけどね。何か英国製の上等なやつをね。でも、今日はソウルに行くのにね、天候も判らないし捨ててもいいコートを持ってきたんですよ。」って言い訳したかった。
でも、スチュワーデスさんはまったく意に介していない。
そらそうだ、仕事だからですね。
皆が乗り込むと、一番前のカーテンを閉めて、何やらカチャカチャ音をさせている。
「待ってました。ウエルカムシャンパンだ。」
今までエコノミーに座っていても前のほうからカチャカチャ凡のことを羨ましがらせていたあの音だ。
さあ、今度は凡が後ろのエコノミーの皆を羨ましがらせるぞ。
シャンパンでソウルに乾杯!

コメント

  1. とっちゃん より:

    なんと無礼なドリームの搭乗客ですね
    やはり、デラックスが搭乗してから遠慮気味に乗り込んでもらわないと困りますよね
    いよいよウェルカムドリンクですね
    なんだか子供の頃見た紙芝居のようで、続きが早く見たくてウズウズドキドキしてきました

  2. 凡蔵。 より:

    とっちゃんさん。
    いつもドリームで乗るときは、順番を守ってるのにね。
    でも、そこは「えっ、そんなー。」と思っても、クールな表情で行きましたよ。
    でも、いちいち、そんなことで一喜一憂してるのはやっぱりにわか作りのデラックスだからでしょうね。

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