平 凡蔵。の 創作劇場

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散散歩歩。(1001)青春18きっぷで、百閒さんと、みゆきさんに似た人、に出会う旅。(1)

青春18きっぷの残りが2回分ある。
その1枚を使って、どこかへ行こうと思う。
8月14日(金曜日)。
朝早く起きて、カバンに2017年のJTB小さな時刻表を詰め込んだ。
ダイヤは変わっているだろうけれど、路線図を見るには、まだまだ使える。
最近は、東の方に移動して、帰りに、名古屋の「みゆき」さんで、ビールを飲んで帰るというパターンが多かった。
名古屋方面なら、本数も多くて、また新快速もあり楽でもあるし、何より、名古屋で飲めるというのが良い。
しかも、「みゆき」さんだ。
なので、今回は、方角を変えようと思う。
山陽本線を西に行くか、山陰本線を西に行くか。
夏と言えば、山陰本線に乗りたくなる。
学生時代に、みんなで海の近くの民宿に泊まったりした記憶があるからだ。
でも、今日は、何となく山陽本線に乗ってみようかなと思っている。
岡山から、高松に移動して、うどんを食べるのもいいかと、ちょっと考えたからだ。
ということで、ぼんやりと方角が決まって自宅を出発。
京阪電車の門真市駅から京橋駅まで移動して。
JR京橋駅で入鋏。
そのまま、京橋 → 大阪 → 姫路 → 相生 → 岡山と移動する。
この辺、凡にしてみれば、すごく端折った書き方だけれども、特筆すべきことはなし。
んでもって、岡山に着くまでに、岡山で行きたいところを考えていた。
岡山と言えば、凡の大好きな作家 内田百閒さんの故郷だ。
とはいうものの、百閒さんは、大好きな岡山の子供のころのイメージを大切にするあまり、故郷へは、殆ど帰らなかったようだ。
なので、ゆかりの地ではあるが、これといった見どころがない。
とはいうものの、あることに気が付いた。
お墓だ。
内田百閒さんのお墓が、岡山にある。
今回の目的は、このお墓にお参りと行きましょう。
その前に、お昼を食べておこう。
駅前には、何店舗かラーメン屋がある。
そんな中で、候補に挙がったのが「浅月」さんだ。
岡山の名物のトンカツラーメンがある。
もう1つ候補が、冨士屋さんだ。
この2店舗は、道路を隔てて、向かい合っている。
さて、どちらにしようかと、浅月さんの店の前で見ていたら、後ろからお店の方が来て、店に入って行くところだったので、その時に、おじさんも「どうぞ。」みたいな感じだったので、「じゃ、入ろうかな。」という感じで、入店した。
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店内は、向かい合った固定式の幅広の椅子のあるテーブル席が5つと、奥に座敷があって、座卓が4つあった。
昔ながらの食堂の雰囲気が良い。
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ここは、やっぱり名物の「勝ツそば」を注文。
運ばれてきたラーメンは、スープがたっぷりしているのが素晴らしい。
凡は、何が好きかって、汁が好きなんだ。
なので、スープがたっぷりなのは、非常に好ましいのである。
そのスープは、トンコツだけれど、あっさりとしている。
醤油ベースで、麺は、細めのストレートだ。
さて、カツはというと、予め揚げてあるのだろう。
でなきゃ、あんなに早く運ばれてこないし、見ると、カツの端が焦げているようにも見える。
凡の想像でしかないけれど、予め揚げているトンカツを、鉄板などで温めているのかもしれない。
さて、肝心の味だけれども、スープと麺は、これは美味しかったです。
んでもって、トンカツだけれども、肉も衣も肉厚だ。
若い男子学生とかなら、ボリュームもあって喜ばれるだろうね。
でも、凡には、ちょっと肉厚すぎるか。
凡は、こういう時のトンカツは、肉の薄い方が良いように思う。
トンカツに、重要なのは、カツの衣と油だ。
カラリと揚がったトンカツをラーメンに乗せる。
ジュワっとした油と、サクサクした食感が堪らない。
汁を吸って衣が柔らかくなっても、油が汁に染み出している。
そういう感じが好きなのだ。
まあ、これは好みだから、このお店の勝ツラーメンは、凡が、どうのこうの言う必要もないけれども、そんな感じかな。
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お店を出て、前にある冨士屋さんの店頭を見ていると、中からお兄さんが出てきて、「今なら、すぐ入れますよ。」みたいな声掛けをしてくれた。
いいですね。
こんなお店は、きっと美味しいに違いない。
第一、 気持ちが良いよね。
うちの店に来てっていう気持ちが素晴らしい。
でも、もうお腹いっぱいで、2軒目は無理だった。
さて、百閒さんのお墓参りだ。
百閒さんのお墓は、東京にもあるが、岡山の墓には、百閒さんの遺志によって、分骨されて、先祖代々の岡山の安住院というお寺にも建てられている。
さて、観光案内所で、行き方を確認したら、ハッキリとは知らないようで、いろいろ調べて、バス停を教えてくれる。
お寺の名前を言うと、年配の方が、「ああ、多宝塔のあるお寺ね。」と言った。
内田百閒さんのお墓というより、多宝塔で有名みたいですね。
さて、すぐにバスに乗って、国富というバス停に移動。
そこから歩いて、安住院に向かうのだけれど、もう、暑いのなんのって。
その暑さだけで、ヘロヘロになっている。
アイフォンの地図アプリを見ながら、近くまで行くと、急に住宅の中に、古い山門が現れた。
でも、その近くにお寺はあるも、安住院じゃない。
さて、どうしたものかと、しばらく、立って迷っていた。
まあ、このまま道なりに行けば、おそらく安住院にたどり着くだろう。
そう思った時に、山門の下に、一人のおじいさんがいた。
年は、85歳から90歳ぐらいだろうか。
凡の事を、立ち止まって、さっきから、ジッと見ている。
凡のことを不審に思って見ているのだろうか。
或いは、凡の事を心配して見ているのだろうか。
そうだ、あのおじいさんに聞いてみよう。
と思って、おじいさんに近づいて、「すいません。安住院は、どっちへ行けば良いでしょうか。」と聞いた。
すると、おじいさんは、この道を上っていけばあると教えてくれた。
やっぱり聞いて良かった。
と思ったのは、ここまでだ。
それから、おじいさんは、続けて言った。
「わたしは、ここで待っています。」
凡は、それを聞いて、その真意が理解できなかった。
すると、おじいさんは、また言った。
「わたしは、ここで待っていますから、どうぞ行ってきてください。」という。
そこで、ああ、このおじいさんは、凡の事を心配してくれていて、ちゃんと行って、そして、帰って来れるかを確認するために、ここで待っていてくれると言ってるんだと理解した。
そうなんだ、ありがとう、おじいさん。
、、、、なんて、呑気にお礼を言ってる場合じゃないよ。
いやいや、この暑さだよ。
こんなところにいると熱中症で倒れてしまうのは、間違いないよ。
なので、「ありがとうございます。でも、暑いので、待っていてくださらなくても、大丈夫です。」と言った。
すると、おじいさんは、「私は、ここで待っていますから。」とまた言った。
困った。
ここで待たれて、熱中症で、倒れでもしたら大変だ。
翌日知ったのですが、その日の気温は岡山で35度だった。
でも、凡の感じでは、アスファルトの照り返しもあって、38度とか39度ぐらいあるように思えたんだよね。
「いえ、今日は、すごく暑いですから、ここで待っていなくても大丈夫ですから。」
と言った。
すると、おじいさんは、「わたしは、ここで待っていますから。」と繰り返した。
実に困った。
「いえ、暑いので、ここで待っていないでください。お願いします。家に帰ってください。もう、ちゃんと行けますから。」と、凡は必死だ。
でも、おじいさんからは、何を言っても「ここで待っています。」である。
こんな会話のやり取りが10回近く続いて、凡は、おじいさんの提案を受け入れる以外に選択肢がないことを悟った。
じゃ、もう、早めにお参りをして戻ってこよう。
そう思って、おじいさんに声を掛けて、安住院に向かった。
途中で、振り返ると、おじいさんは、日のカンカン照っている地面に体育座りした。
ああ、日陰に座ってくれよと、ため息が出た。
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お寺に行くと、本堂があって、まずは手を合わせる。
んでもって、お墓を探す。
お寺の近くには、いつくものお墓のスペースあって、どこの区画に、百閒さんのお墓があるか解らない。
でも、多分、昔からある区画だろうと、多宝塔の方に向かって歩いて行くと、百閒さんのお墓のプレートを見つけた。
そこに「この奥」とある。
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なので、行ってみたが、その場所が解らない。
ちょうど、年配の男性がいて、墓守なのか、お盆だからお墓参りに来た人なのか知らないが、聞いてみたところ、知らないという。
その区画を、ぐるぐるまわって、そして、ネットにアップされている写真の背景と見比べて、ようやくお墓を発見した。
もっと大きな墓を想像していたのですが、ごく普通の大きさで、しかも、壁のようなところに向かって建っている。
お墓の目の前が壁だ。
なので、壁とお墓の狭いスペースで手を合わせた。
百閒さんのお墓の横には、ずらりと先祖のお墓も並んでいる。
花が供えられていたので、誰かが、たぶん孫とか、そんな人がお参りにきたのかもしれない。
その先祖のお墓を見ていると、古い墓石に「内田栄造」の名前がある。
どっちが、どうなんだろう。
確かに端っこの新しい墓は、百閒さんのものだ。
名前の横に「百閒」の名前もある。
でも、古いお墓にも「栄造」の名前があるのだ。
その辺、誰かに確かめたかったが、それを知る人は誰もいなかった。
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IMG_2772.JPG(奥から見ると、本当に壁の前だとわかる。)
IMG_2768.JPG(百閒さんのお墓)
InkedIMG_2769_LI.jpg(新しいお墓には、百閒の文字もある)
IMG_2761.JPG(古いお墓にも、内田栄造の名前が刻まれている。新しいのと古いのと、どっちに骨は入っているのか)
しかし、こんなことをしている場合ではない。
すごく焦りながら、急いでお墓を探したけれど、それでも、おじいさんが気になる。
早く帰らなきゃ。
多宝塔とかも見てみようと思っていたが、それは、もういい。
そんなことをしている時間は無いのだ。
兎に角、おじいさんのことが気になって、お墓すら、ゆっくり見ている気にはなれないのである。
一瞬、手を合わしたら、急いで、さっきの山門まで戻った。
山門の下には、おじいさんは、いない。
ああ、帰ってくれたんだと思ったら、知らない人の玄関に座り込んでいた。
おじいさんに、待っていてくれたお礼を言った。
すると、おじいさんは、立ち上がって、家に忘れ物をしたと言って、凡と同じ方向に歩き出した。
とはいうものの、このままおじいさんの家まで行くことは出来ない。
そんなことをしたら、また帰れなくなるだろう。
凡は、そのまま、おじいさんにお別れを言って、先に歩きだした。
それにしても、かのおじいさんは、多分、一人暮らしなのだろうな。
じゃなきゃ、こんな暑い日に、家の人も、外に出さないよ。
たぶんだけれど、おばあさんに先立たれて、或いは、今日はお盆だから、お墓にお参りでも行こうとしていたんじゃないかな。
こんな暑い日でも、外に出るくらいだから、年齢的に、暑さも感じないのかもしれない。
ちゃんと家では、クーラーを付けてくれよと祈った。
でも、気になる。
途中で、振り向いても、兎に角、歩くのが遅い。
何度も振り返ったり、立ち止まって、歩くのを見ていたりしたら、また、誰か知らない家の玄関に座り込んだ。
ああ、こうやって、他の人の家の玄関の日陰に座りながら、歩いているんだなと思ったら、少し安心して、そのままバス停に戻ったのである。
まあ、誰かの家の前で座っているなら、何かあったら、その家の人が何とかするだろう。
無理やりに、そう思い込むようにした。
それにしても、実に困ったのである。
バス停に戻ると、次のバスの時間まで、かなりあるので、歩いた方が早いのではないかと歩き出した。
ただ、ものすごく暑い。
おじいさんの事を心配している場合ではない。
凡も、暑さで、ヘロヘロになって、身体の力が抜けて行くように感じた。
こりゃだめだ。
兎に角、必死で、天満屋がある商店街まで歩いて、どこでも良いからと、商店街のコーヒー屋で、オレンジのスムージーを飲む。
そのまま、50分ほど、涼んでいた。
それで、少し回復。
もう1か所、百閒さんに関係するかもしれないところへ行ってみよう。
吉備路文学館だ。
ここは、岡山に関係のある人を紹介した資料館だ。
喫茶店から、表に出たものの、もう暑さにやられているので、タクシーに乗った。
歩いてちゃ、倒れてしまう。
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文学館は、綺麗な建物で、資料は、1階と2階に展示されている。
ただ、百閒さんの資料は、だいたい2メートルもないぐらいの幅の展示である。
それほど、濃厚な資料ではない。
でも、それも含めて、館内を見て回る。
兎に角、冷房が有り難い。
ロビーまで下りて来たら、テレビに映像が流れている。
椅子に座って、ちょっと見てみようと思ったら、そのテレビのビデオの機械のところに百閒さんのDVDが置かれている。
ちょっと気になって、スタッフの方に、このDVDは、どこかで購入することが出来るのですかと尋ねたら、岡山県郷土文化財団で販売されていて、ネットからも買えると教えてくれた。
それで、もし良かったら、今は誰もお客さんがいないので、このDVDをかけましょうかというので、それじゃと、お願いをする。
んでもって、映像を鑑賞。
何より、映像で見れるのが楽しい。
32分のDVDが終わって、スタッフの若い女性の方に声を掛けると、凡が見ている間に、DVDの申し込み先をプリントアウトしたものと、さらに、百閒さんに関係する手作りの資料「内田百閒 ふるさと岡山のまち歩き地図」や、「内田百閒流 『岡山御馳走帖』」なるこれまた手作りの資料をコピーしてくれていた。
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これは、本当に有り難い。
それに、そのスタッフの方の心遣いが、どうにも嬉しい。
こういう資料に書かれている内容というのは、自分で得ようとしたら、ものすごい時間を必要とするものだ。
それに、この手作りの資料だって、ホントに、巡り合わせというもので、得ようとしても得られないし、その存在すら知ることが出来ないものなのだ。
家に帰ってから、中を見てみたが、その内容も、秀逸だ。
面白い!
地図も念入りに調べてあり、百閒さんのファンなら、垂涎ものである。
その時は、内容も読んでいないので、お礼を言って、今、百閒さんのお墓に行ってきたと言ったら、ちょうどお盆で、いい供養になりましたねと言う感じの事を返してもらった。
んでもって、これもここじゃなきゃ、探し当てられないだろう本「岡山の内田百閒」(岡 将男さん著、岡山文庫)を購入。
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それと、ミニボンへのお土産に、ジーンズの生地で出来たブックカバーを買った。
ただ、このブックカバーは、すごく可愛いのだけれど、サイズをあと2ミリぐらい大きくしてほしい。
文庫本、ギリギリか、無理して差し込まなきゃいけないぐらいのサイズだった。
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さて、いろいろ吉備路文学館の人にもお世話になって、道路まで出たが、バスの時間も解らない。
ただ、歩けそうな気がしたので、天満屋方面に歩き出す。
さて、これからだ。
凡は、密かに、ある計画を考えていた。
それは、ツイッターをしている人の情報なのであるけれども、倉敷に、みゆきさんに似た人がやっている居酒屋があるという。
今まで、2度トライしているのだけれど、まだ実現していない。
なので、今日は3回目のトライと言う事である。
ネットの情報によると、18時オープンのはずだ。
今は、16時30分ごろだ。
まずは、電話で、営業しているか確認してみよう。
ちょっと、ドキドキするな。

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