7月31日(金曜日)。
青春18きっぷの3つ目のスタンプの日帰り旅の途中です。
前回に、浜松に来た時に、気になっていた資料館に行ってみる。
「浜松市賀茂真淵記念館」
駅からバスで少し移動して、バス停から急な坂道を上ったところにある。
息を切らせながら、上って行った。
入館すると、館長さんなのか、係りの人が、館内の説明などをしてくれた。
まずは、ビデオを拝見。
館内にいる人は、凡だけである。
資料室は、1室のみだけれど、賀茂真淵について、非常に解りやすく知ることができるように展示されている。
また、持って帰れるコピーで作った資料も豊富にあり、それを持って帰るクリアファイルも頂いて、なかなか、熱のこもった記念館だなと思った。
係りの人も、解らなかったら聞いてくださいとか、いろいろ親切にしてくださった。
(同じひらがなでも、その時によって、文字が違うのが面白い。)
この記念館で、一番に興味を持ったのは、五十音図である。
この五十音図は、いつからあったのだろうという疑問を持っていたのですが、契沖という人が作って、賀茂真淵が、またこれを「語意考」で世に示したとのこと。
なるほどな、と納得したのであります。
また、仮名遣いなどについてなどの研究もされて、日本語の遣い方の法則みたいなものを、整理した人でもある。
しかし、その五十音図を考えると、超古代文字に、考えが飛んでしまう。
古代文字、たとえば、ホツマ文字などは、文字の見た目に、どことなく、「あいうえお」の匂いを感じる構成になっている。
(ホツマ文字)
このあたりを、もっと知りたいところなのですが、それについて書かれている物というのは、よっぽど調べないといけないか、タイミングと言うか縁がないと、それに巡り合えないのであります。
誰か、解る人がいたら、教えてください。
小さな記念館だけれど、熱心だし、解りやすいし、何より、これを持ち帰って、さらに調べてみようと興味を抱かせてくれる記念館だった。
来てよかったと思った。
平常展の資料と、「岡部日記」という旅日記みたいなものを買う。
記念館を出たら、すぐ横に、賀茂真淵を祀った「縣居神社」があるので、お参りをして、坂を下っていった。
バスで、浜松駅まで移動。
さて、そろそろ名古屋に向かおう。
浜松まで来たら、帰りは、名古屋で途中下車しないとね。
んでもって、名古屋で途中下車したら、駅前のホテル「ミユキステーションホテル」さんに寄らないとね。
んでもって、そこの1階のお食事処「みゆき」さんでビールを飲まないとね。
あまりの暑さに、「ガツンとみかん」を買って、列車に乗り込む。
アイスクリームも美味しいけれど、アイスキャンデーも、こんな暑い日には、すこぶる美味い。
んでもって、名古屋で予定通り下車して、「みゆき」さんに入る。
店内には、男性1名、女性1名のみ。
取り敢えず、ビールと、名古屋名物の手羽先と味噌カツのセット。
これで、ちょっとやってから、今まで、注文しようしようと思って来るのだけれど、ご飯が付いているので、見送ってきた「みゆき定食」を頼んだ。
今日は、ビールも控えめだ。
そして、みゆき定食。
これが、夢にまで見た、みゆき定食なんだ。
凡は、いささか、テンションが上がるのを覚えた。
兎に角ね、ご飯が大盛りで、凡の場合、ビールを飲んでるので、ここまでの量は要らないけれど、うれしいポイントだ。
勿論、おかずをビールで食べてから、漬物と味噌汁で、全部頂きましたよ。
それにしてもさ、みゆき定食だよ。
ネーミングが最高だ。
勿論、凡の大好きなみゆきさんとは、何の関係もない。
しかし、みゆきさんなんだな。
凡は、死ぬまでで1度でいいから、みゆきさんの手料理を食べてみたい。
切なる願いだ。
まあ、100パーセント、その可能性はないけれどね。
でも、そんなことがあったら、最高だろうな。
というか、みゆきさんは手料理っちゅーもんを作ることはあるのか。
例えば、凡がみゆきさん家に、お呼ばれされる訳だ。
凡は、キッチンのテーブルに坐って、みゆきさんの後姿を見ている。
「ねえ、ちょっと待っててね。」
なんて、みゆきさんが、凡の方を見るでもなく、ちょっと顔を後ろに向けて、言うんだな。
そのちょっとだけ見えた表情が嬉しそうなんだ。
それで、大きな大皿を持って、テーブルに来る。
「あのさあ、アクアパッツァ作ってみたんだけど。気に入ってくれるか心配だな。」
そう言って、白ワインをグラスに注ぐね。
「うん。美味しいよ。」当然、凡は、みゆきさんの料理を絶賛するだろう。
どんなに美味しいかの、味の細かい表現を、文学的な比喩を駆使して説明する凡を、みゆきさんは、目をキラキラさせながら、見ているんだ。
この場合、みゆきさんと凡の空間には、お母さんや、弟ご夫婦は、いない設定だ。
でも、そこは凡だ。
気になったところは、うっかり指摘してしまうかもしれない。
「あ、でもさ、もう少し、塩味を利かせた方が、凡の好みかな。」
なんて、言ってしまう訳だ。
その瞬間だ。
みゆきさんの表情が一変する。
目つきが、ビックリするほどキツクなって、凡をジロリと見つめるね。
そして、ぼそりと、しかし、ハッキリと、「美味しくない?」と聞くんだ。
「あたしゃね、普段は料理なんてしないんだ。それを、凡とやらの為に作った訳。でも、気に入らないって、マズいって、言う訳なのね。」
凡は、背筋が凍りそうになって、気を失うだろう。
気が付くと、病院のベッドの上だ。
みゆきさんが、マリア様のような絵顔で、凡を上から見つめている。
「ああ、みゆきさん、凡の傍にいてくれたんだ。」
みゆきさんの料理に文句を言ったこと、許してくれたんだね。
「みゆきさーん。」
凡は、すっかり安心して、笑顔でみゆきさんに呼びかけた。
すると、みゆきさんは、急に真顔になって話し始める。
「ねえ、凡ちゃん、さっきの話だけれどさ、あたしの料理のこと。あなたね、美味しくないって言いたい訳なの?」
えーっ、みゆきさん、しつこいよ。
と、みゆきさんの真顔を見た瞬間、また凡は、気を失っていた。
いや、みゆきさんは、そんな怖くない筈だ。
みゆきさんは、優しいはずなんだ。
というか、アクアパッツァなんてものは作らないだろう。
イメージとしては、和食だな。
アジの干物を焼いたのとか、茄子の煮びたしなんてものが似合いそうだよ。
んでもって、テーブルで、差し向かいで、熱燗を差しつ差されつで、、、ああん、考えただけで、最高じゃない。
しかしね。
みゆきさんは、音楽に関しては、天才だ。
だから、料理は、意外に下手であって欲しい気もするな。
ドジで不器用なみゆきさんを見たいよ。
キッチンで、みゆきさんが悪戦苦闘。
髪をお団子にして、白い割烹着を着ている。
作る気満々で、格好だけは一流を決めているんだね。
「ああーっ。違う違う、ん?あ、やっぱりこれでオッケー。、、、ん?」
なんて、大声で叫びながら、やってる後姿を、凡は見ている。
どうにも、みゆきさんが愛おしくて、今にも後ろから抱きしめたい衝動に襲われる。
「みゆきさん、大丈夫?」
「ふへぇ?」焦って料理を作ってるから、得体のしれない声で返事をするね。
みゆきさんは、ランチに、カレーを作っている設定だ。
でも、そこは、みゆきさんだ。
普通のカレーなんて、作らないよ。
で、やっと出来たら、凡の前に置くね。
目の前に、真っ黒で得体のしれないルーの掛かったカレーらしきものが置かれている。
「ねえ、食べてみて。」なんて、最高の笑顔で、みゆきさんが、スプーンを凡に手渡す。
「さあ、早く。」みゆきさんは、嬉しそうに促すね。
目の前には、得体のしれない料理がある。
「早く食べてよ。冷めちゃうよ。」
目の前には、本当に嬉しそうなみゆきさんがいて、凡を見ているんだ。
こんな幸せがあっていいものだろうか。
とはいうものの、得体のしれない料理。
「ねえ、みゆきさんも一緒に食べようよ。」
「やだ。食べるの怖いもん。」
仕方なく、凡は、手渡されたスプーンで、得体のしれないカレーをすくって、口に入れるね。
何とも表現のしようがない味と香りが広がる。
首を傾げている凡を、普段する分厚いメガネの奥で、とびっきり目を垂らして、口に手を当てながら、「くくくっ。」なんて、大喜びしながら見ているんだ。
ああ、最高だ。
こんな普段のみゆきさんを見れるなら、どんな得体のしれない料理でも食べてやる。
でも、不思議な味だ。
「ねえ、みゆきさん、このカレー、何入れたの。」
「ああ、隠し味でしょ。そうそう、チョコレート入れた。コクがでるんだってさ。」
「あ、そういえば、コクが出たら、しつこくなるから、あっさりさせようとして、レモンも入れたの。あれ、入れすぎちゃったのかな。」
「そうだそうだ、凡ちゃんの身体の事考えてさ、リコピンの豊富なトマトでしょ。それに、腸に良いっていうから納豆でしょ。食物繊維も必要だから、ゴボウを擦って入れたり、消化を良くするのに、大根おろしも入れたよ。ビタミンEは、ピーナッツでしょ。海藻も必要だから、ワカメ。味付けもさ、マヨネーズは誰だって好きだよね。それから、これがさ、最大の工夫なの、味噌よ、味噌。どう、カレーに深み出てる?」
「、、、うん。そうだね。美味しい気もする。」
「ぷぷ。」みゆきさんは、嬉しそうに笑って、「そんな訳ないでしょ。」って言うね。
「あたしもね、失敗作だなって。でも、それを凡ちゃんが食べてくれて、それが嬉しいの。」
でも、どうしても、味に納得がいかなかったので、みゆきさんに聞いた。
「ねえ、みゆきさん。カレー粉入れた?」
「あっ。忘れた。あはははは。じゃ、これ何の料理だろうね。」
そんなドジなみゆきさんは、最高に可愛いだろうなあ。
しかしね。
凡が、食べたいのは、もっとシンプルなやつだな。
みゆきさんと、ちょっとしたハイキングに出かけるんだ。
遠くじゃない、近くの何でもない公園とかね。
んでもって、「どこかで、ランチしようか。」なんて、凡が言うさ。
すると、みゆきさんは、「あ、そうだ。おにぎり作ってきたんだ。」なんて、恥ずかしそうにバッグからタッパーを取り出すんだ。
木陰になったベンチに座って、タッパーを開けると、小さめに握ったおにぎりと、玉子焼きに、赤いウインナーが入ってる。
そんな手料理が一番食べたいものである。
おにぎりだよ。
みゆきさんが、あの美しい手のひらにご飯を乗っけて、握ってくれたおにぎりだ。
美味いとか、マズいとか、そんな次元は、遥かに超えている。
ただ、そこに、みゆきさんのおにぎりが存在していると言う事、それ自体が奇蹟なのである。
ある意味、そのおにぎりは、凡にとっては、みゆきさんの分身のように見えるだろう。
そのみゆきさんの分身を、モグモグと食う訳だ。
詰まりは、みゆきさんを食っているのと同じなんだ。
凡の妄想の中で広がるカニバリズム。
イケマセン、少しばかり変な方向に行きかけました。
それにしても、大切な人が握ってくれるおにぎりほど、美味しいものはないだろう。
味が美味しいというよりも、幸せな気分になる美味しさなんだな。
それにしても、まあ、みゆきさんが、凡の為に、手料理を作ってくれることは、まずもって、ありえないだろうな。
それなら、あと10年とか、20年とかして、みゆきさんが、もし歌手を引退するようなことがあったら、どうか、みゆきさんに小料理屋でもやって欲しいな。
それこそ正しく、「お食事処 みゆき(さん)」だ。
カウンターの向こうに、白い割烹着を着た、少し年の増したみゆきさんがいるんだ。
凡は、熱燗を、チビリチビリやりながら、みゆきさんを見ている。
最高のお店だろうな。
とはいうものの、そんなお店が出来たなら、きっと、みゆきさんのファンで、超満員。
予約は、10年待ち。
ああ、凡は生きてられるかな。
なんて、妄想は置いておいて。
今は、現実のお食事処「みゆき」さんで、みゆき定食を美味しく頂いたのであります。
んでもって、ここまで来たら、もう1軒と、名古屋駅構内で、台湾ラーメンを、汗を、ダラダラ流しながら、食べて、帰路の列車に乗り込んだ。
1920頃、名古屋発。
んでもって、大阪の京橋駅に1030過ぎに到着。
京阪電車で、自宅まで帰ったのであります。
日帰りにしては、大いに楽しんだな。
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