平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
どれも、すぐに読めちゃう短編なので、読んで頂けたら、うれしいです。

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散散歩歩。(886)みゆきさんのラブレター。

みゆきさんの声を聞きたい。
みゆきさんの顔を見たい。
でも、叶わないんだよね。
もう、みゆきさんが、恋しくて、恋しくて、そして、恋しくて。
だから、みゆきさんの写真見て、ヨダレだらだらで。
いや、それはいい、置いておこう。
今日なんて、なみふくのホームページにあるファンレターのコーナーに、ラブレターでも書いてみようかなんて思っている凡がいる。
そういえば、みゆきさんを好きになった頃、あのファンレターのコーナーに、何度かファンレターなのか、気持ちの悪い中年男の一方的な心の内なのか、或いは、ただただ思いだけを綴った幼稚な落書きなのか、そんなのを書いたことがある。
まあ、たぶん、そんなものも、みゆきさんの手許には、届いてはいないだろう。
スタッフの人が、ただただ、毎日、事務的に「デリート」のキーを押し続ける作業をしているのに違いない。
ああいうものは、そういう仕組みになっているはずだ。
それは解っているけれど、何度か書いたことがある。
手紙なんて、みゆきさんにまで、届かなきゃなんの意味もない文字の羅列である。
いくら綴ったって、白い原稿が、変な文字という記号で埋まるだけだ。
それは解っているんだけれど、書きたいなと思ってしまうのが、恋というものなのだろう。
あまりの寂しさに、そんなことを真剣に考えてしまう凡なのである。
まあ、ラブレターを書くかどうかは、まだ決めていない。
おそらくは、日々の生活に追われて、書かない日が過ぎて行くのだろうな。
いや、書こうとパソコンの前に座るかもしれないが、こんなことを書いて、みゆきさんに嫌われないだろうかなんて悩んでいるうちに、キーを打てなくなってしまいそうだ。
読まれない手紙のはずなのにね。
そんなことを考えると、みゆきさんは、誰かにラブレターを書くのだろうかと思う。
昨今の、新型コロナの自粛傾向の毎日だ。
相手の事を心配して、手紙を書いているのだろうか。
愛しているとまでは言わなくても、みゆきさんが心を寄せている男性とか、あの方今頃どうしていらっしゃるのかしらなんて、ふと思う男性とか。
そんな男性に、手紙を書いたりしているのだろうか。
それなら、ひどく羨ましい限りだ。
みゆきさんは、どんな文字を書くのだろうか。
みゆきさんは、どんな言葉を遣うのだろうか。
どんな、話をするのだろうか。
そんなことも気になるが、ただただ、羨ましい。
みゆきさんが、書いてくれるなら、そんな文章の事なんて、どうでもいい。
ただ、白い紙に、「へのへのもへじ」が書いてあるだけで、もう天にも昇る気持ちになるに違いない。
とはいうものの、実際に、みゆきさんに、「へのへのもへじ」を貰ったなら、凡は悩むだろうな。
その「へのへのもへじ」に何かのメッセージを読み取ろうとするだろう。
ユダヤの言葉との共通する音はないだろうかとか。
万葉集の中の恋の歌との共通点とかね。
或いは、その顔の表情から、何かを探しだすかもしれない。
辛い時も、嬉しい時も、常に飄々と生きなさいという意味だろうかとか。
或いは、困った時は、右を向けとか。
お昼ご飯には、ハマムラで中華を食べなさいとか。
あ、これは、京都に住む年配の人にしか解らないジョークではありますが。
そうだ、あの「へのへのもへじ」の目の部分の「の」は、正しく、みゆきさんの美しい白目を表現してるではないか。
凡が、みゆきさんを好きになった瞬間から、ウットリと見ているみゆきさんの白目。
ねえ、凡ちゃん、あたしの白目可愛いでしょってな意味なのかな。
しかし、そんな探求を続けるにも、凡は、そのメッセージを、「愛」という方向に、どうしても結びつけたくなるに違いない。
「へのへのもへじ」は、色んなパターンがあって、「へのへのもへの」とかね。
でも、みゆきさんが呉れたのは、「へのへのもへじ」なんだ。
そこに意味がある。
そう最後の「じ」である。
顔の形を描くなら、別に「へのへのもへし」だって良いはずだ。
ちゃんと、同じような顔の形に描ける。
でも、「じ」なんだ。
詰まりは、みゆきさんは、こう言っているのかもしれない。
「あのねえ、最後の『じ』って文字あるでしょ。あの『、、』(点々)はね、あれは、みゆき(さん)と凡ちゃんの事なのよ。いつも一緒に、隣に寄り添ってるの。そうだ、右のはね、あたし。んでもって、左のは、凡ちゃんだよ。いつだって隣に引っ付いてるんだからね。ねえ、解った?」
にゃは、にゃは、にゃはははは。
そんな意味が込められているとは知らなかったよ。
凡は、マンションの階下の人に怒られるのも覚悟のうえで、何度も何度も、ジャンプして、転げまわって、んでもって、逆立ちまでしちゃって、喜んじゃうだろう。
そんな、みゆきさんの「へのへのもへじ」解明に、1年ぐらい費やしてしまうに違いない。
そして、ある時、この「へのへのもへじ」が、何の意味もない、みゆきさんの気まぐれだったことに気が付く。
それでも、みゆきさんが、書いたものなら、凡にとっては宝物だ。
何度も、頬ずりして、匂いをかいで(うん、この辺は、ちょっと変態的ではありますが)、んでもって、窓のガラスに透かして見て、みゆきさんの残ってはいない指紋などを探すだろう。
それだけ、嬉しいに違いない。
まあ、「へのへのもへじ」の手紙は、置いておいて。
みゆきさんが、他の誰かに書く手紙の話だ。
さっきのような、時候の挨拶に毛の生えた程度なら、ただ羨ましいで済む。
でも、みゆきさんが、恋い焦がれた人に手紙を書くこともあるのだろうか。
いや、その前に、みゆきさんに、恋い焦がれている人がいること自体、凡には、あってはいけないことなのだ。
悪夢以外のなにものでもない。
そんな事実を知ったなら、胸が張り裂けそうなぐらいに、嫉妬して、或いは、人を恨むことを自分自身の中で正当化してしまうだろう。
「あいつに、不幸が訪れますように。」なんて神様にお願いしたりしてね。
でも、それじゃ、みゆきさんの恋が、無意味になっちゃう。
ここは、みゆきさんの恋を応援すべきなのだろうか。
いや、やっぱり、それは出来ないのではあります。
こればっかりは、仕方がない。
そういえば、ホントかどうか知らないが、みゆきさんが、子供のころなのか、ラブレターを書いたら、貰った男の子が、みんなの前で読み上げたというエピソードを聞いたことがある。
もし、本当なら、その時の、みゆきさんの気持ちは、如何ほどか。
想像するだけで、可哀想で、可哀想で、涙が出てしまう。
その後も、中学生、高校生、大学生の時も、誰かにラブレターを書いたことがあるのだろうか。
そして、歌手の道に進むことになって、そこで知り合った人にラブレターを書いたことがあるのだろうか。
想像すると、なかなかに悔しい。
とはいうものの、過去は、どうだっていい。
凡が好きなのは、今現在のみゆきさんだからだ。
なので、今現在、みゆきさんが、恋い焦がれている人がいるのなら、それは、もう「嫌だーっ。」って叫ぶしかできないけれども、諦めきれない悔しさというか、凡の魅力の無さに対する絶望感というか、それ以前に、みゆきさんに凡の存在すら認識されていないと言う現実に、打ちひしがれてしまう。
ああ、人に恋をすると言う事は、かくも辛いことなのであることか。
もし、みゆきさんが、ラブレターを書くとなったら、どんな文章を書くのだろう。
「突然、こんなお手紙を差し上げて、さぞかし驚かれたことでしょうね。」
なんて、言葉で始まるのだろうか。
文章としては、使い古されているし、やや月並みな感もある。
でも、みゆきさんにこんな書き出しの文章を貰ったら、何が書かれているのだろうと、もうこの文字だけで、心臓は早鐘だよね。
手をブルブルさせながら、先を読むだろうな。
かなり効果的なラブレターだ。
或いは、仕事の延長の顔をしたラブレターとかね。
始めは、「前略」とか「冠省」とかで始まるんだ。
んでもって、「先日の打ち合わせの件、、、、の方が、曲の流れもスムーズじゃないかと思うのですが、如何でしょう。」なんてね。
それで、「あなたの意見もお聞きしたいので、今度、お会いしてご意見お伺いできないでしょうか。」なんてね、そんな感じだ。
それで、最後に「追伸」と続く。
「近くに美味しいスイス料理のお店を見つけたの。場所は、そこで如何かしら。そうだ、この前、ピンクの可愛いワンピースを買ったのね。でも、ちょっと余所行きみたいだから、恥ずかしくて着れなかったのね。今度、来ていこうかな。でも、ワンピースのあたしを見ても、似合ってないって、笑っちゃダメだからね。」なんて、ちょっと可愛くて、ちょっと思わせぶりな言葉で終わる。
うーっ。
こんな手紙を、みゆきさんに貰ったら、凡は、目からは涙を流し、鼻の穴からは血を流し、口からはヨダレを流して、放心状態になるかもしれないよ。
うん、たぶん、そうなるな。
みゆきさんに似合わない服なんてないんだよ。
でも、みゆきさんは、今度の着てくるワンピースに不安を持っているのが文章から見て取れる。
似合ってないって思われるんじゃないかなってね。
それなら、もしその相手が凡であったなら、みゆきさんを安心させてあげなきゃだ。
凡は、みゆきさんに恥をかかせないために、みゆきさんが買った同じピンクの可愛いワンピースを、わざわざ買いに行って、当日、レストランに着ていくだろう。
もちろん、ピンヒールだ。
そしてみゆきさんに言うね。
「これで、誰もみゆきさんのワンピースを似合わないって笑わないからね。」ってね。
これが男の優しさというものである。
いやしかし、意外と、みゆきさんは、情熱的なラブレターを書くのかもしれないか。
もう始めっから挑戦的なんだ。
「ああ、あなたが欲しい。あなたの唇、あなたの胸、あなたの指が欲しい。あなたのことを思うと、全身の血液が沸騰しそうよ。あたし、その沸騰した血で、パスタを茹でるわ。(と、この辺は、やや意味不明なことも、情熱のあまり書いちゃうのだ)もう我慢できない。早く来て。あたしのところへ、早く来て。ああ、死にそうよ。」なんてね。
そして、最後に「みゆき(さん)」とサインをして、赤いルージュのキスマーク。
こんなの貰ったら、勿論、このキスマークに、凡の唇を重ねるね。
いや、そんなことをしている暇はない。
一刻も早くみゆきさんのところに行かなくちゃ。
タクシーに飛び乗って、運転手さんに、1万円札の2、3枚を握らせて、「早く。飛ばしてくれーっ」って叫ぶだろう。
それか、意外と、みゆきさんは、甘えたさんだったりしてね。
人間は、甘えたさんになると、何故か言葉が猫ちゃん言葉か、赤ちゃん言葉になってしまう。
「ねー、凡ちゃん。みゆきはねー、凡ちゃんの事、好きだニャー。ホントだニャー。だから会いたいニャー。ニャー、ニャー、ニャンニャニャー。」
なんて、、、いや、みゆきさんは、そんなバカじゃない。
とはいうものの、「ニャーニャー。」言ってる、みゆきさんは、さぞかし可愛いだろうなあ。
しかし、何といっても、貰って1番嬉しいのは、ストレートなラブレターだろうな。
封筒を開けて、便箋を広げる。
余分な文字は書いていない。
広く白い便箋の中央に、「あなたが好きです。」と一言だけ書いてあるんだ。
そして、左端に「みゆき(さん)」の文字。
もし貰うなら、これが1番嬉しいなあ。
と、あーでもない、こーでもない、と書いておりますが。
まだ、凡はみゆきさんにラブレターは、貰ってないのね。
それが現実なのね。
そして、この先、一生貰える可能性は、限りなくゼロに近いのね。
それが現実なのね。
そして、この先、みゆきさんに出会える可能性は、それもかなりゼロに近いかもね。
それが現実なのね。
ああ、出来るなら、恋人同士って感じじゃなくても、みゆきさんの傍にいたいなあ。
同じ業界の仕事とか出来ないかな。
凡には、そんな才能ないから、、、どうしたらいいの?
仕事でさ、凡の残業が続いている訳。
んでもって、デスクで疲れて居眠りするね。
ふと目が覚めると、前の前に、コンビニで買ったサンドイッチと缶コーヒーが置いてある。
んでもって、そこに付箋が付いていて、みゆきさんの文字。
「テキトウニヤットケ」
ああ、こんな付箋を貰ったら、どんなにか嬉しいか。
とはいうものの、そんなシチュエーションになる可能性は、これまたゼロに限りなくちかいんだよね。
そんな可能性のことを考えたら、急に寂しくなって、みゆきさんでなくても、誰でも良いから凡の傍にいて欲しいって思っちゃったヨ。
みゆきさん手紙.JPG(この手紙で、あんたを落としてみせる。)

コメント

  1. より:

    凡さんへ?
    わ・た・し。。。
    あなたが恋しくて!愛しくて!たまらず。
    こんな時間(AM1:04)になっても眠れずに、こうして
    凡さん❣️への思いを綴っております。
    先日は、企画書へのアドバイス有り難うございました。
    また、天かす抜きのうどんも、仕事の最中でしたので、
    胃がもたれる事も無く嬉しい差し入れに感謝しています。
    あの、、、? 女性の私から誘うべきでは無いとは思いつつ、凡さんの私への真剣なお気持ちに気づいた時。はた!と我が心に問うてみると、素直に凡さん❣️にお逢いしたいわ!と。恥ずかしながら、このような手紙を世間では、恋文と言うのかしらね。
    そうそう、今朝、テレビで、ルビーチョコレートをお造りになられるお店が京都にある‼️と知り。是非とも、凡さんと行きたいーわ。浴衣を着て行くわね。
    夕涼み出来そうな場所、あると良いけれど。
    凡さん❣️へ、つらつら思いを書き連ね。
    今、赤面。封筒には、星の王子様切手。風情が無いかしら。
    お便り、お待ち申し上げております。
    ガハハハ‼️
    み!ゆ!き⁉️ より。

  2. 平 凡蔵。 より:

    ありがとう、碧さん。
    熱烈なラブレター。
    碧さんのお手紙を拝見して、凡は、もう天にも登る気持ちであります。
    昨夜は、嬉しさのあまり、碧さんのお手紙を、素肌に抱きしめて眠りにつきました。
    すると、どうでしょう。
    碧さんが、凡の夢に現れたではありませんか。
    まだ見ぬ、碧さんでありますが、凡には、はっきりとあなたの笑顔が見えたのです。
    マリア様の様に微笑む碧さんが。
    高い天にまします碧さん。
    そのあなたに向かって、凡は、階段を一段ずつ上っていたたのです。
    そして、あと一段であなたを抱きしめられるという時になって、
    無情にも目覚まし時計が鳴ってしまいました。
    気が付くと、ヨダレを垂らしながら、爆睡していたではありませんか。
    しかし、ああ、どうして、神様は非情なのでしょう。
    あのまま、碧さんと出会えていたならば、どんなに幸せな事だったかと。
    しかし、それは夢の話。
    出来ることなら、この現実の世界で、あなたに巡り合って、愛を確かめあいたい。
    そうだ、碧さんの京都のチョコレートのお店の話。
    この凡蔵、しかと、碧さんのお気持ちお察しいたしました。
    これから京都へ馳せ参じ、件のチョコレートのお店の前で、お待ちしております。
    そうだ、初めての御対面なので、この凡と解るように、ピンクのワンピースを着て、ピンヒールをはいて、お化粧バッチリで、フラダンスを踊りながら待っています。
    これなら、簡単に凡を探し出せるでしょう。
    愛詞を決めておきましょう。
    碧さんが、「なかじま」と言ったら、凡は「みゆきさん」と答えます。
    これで、出会いもバッチリですね。

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