平 凡蔵。の 創作劇場

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散散歩歩。(896)不思議な切符を持つ女たち。

先日、京橋駅から学研都市線に乗った時の話だ。
大阪に在住じゃないと、解らない話かもしれないが、未だに腑に落ちない話なので、書いてみようと思う。
誰か、その真相が解る人がいるなら、どうぞ、ご教示願います。
京橋駅から、学研都市線に乗り込んで、ロングシートの席に座った。
すると、凡と同時に、乗り込んで来た中年のご婦人の5人組が、凡の目の前に3人座って、1人がその前に立っている。
そして、もう1人が、凡の隣に座った。
別に、そういうことは、よくあるだろう。
凡は、アイフォンで、みゆきさんの歌を聴いている。
可愛いね、みゆきさんの声は。
すると、見るともなしに、その女性グループの1人が持っている切符が目に入った。
それは、自動販売機で購入したものじゃなくて、マルス券と呼ばれる、みどりの窓口で、わざわざ駅名を指定して購入する切符だ。
普通の切符より、少し大きい。
その切符に印字された文字を見て、凡はハテナと引っかかる。
大阪駅から森ノ宮駅行き。
この不思議さが解るのは、大阪周辺に住んでいる人だけかもしれません。
大阪駅から森ノ宮駅には、勿論、その切符で乗ることが出来る。
その路線は、環状線だ。
でも、今、彼女たちが乗っているのは、学研都市線だ。
京橋駅から木津駅までを繋いでいる。
しかし、この学研都市線には、森ノ宮駅はないのである。

画像

(路線図に、森ノ宮駅を入れるのを忘れちゃいました。森ノ宮駅は、環状線の京橋駅と天王寺駅の間にあります。後で修正させていただきますね)
しかも、自動販売機で買った切符ではなくて、わざわざ、みどりの窓口で購入している。
券面に、駅名を表示させるためだろう。
凡は、アイフォンで、みゆきさんを聴いているので、彼女たちの会話の詳細は聞き取れない。
ただ、買った切符の事を話している様子はない。
携帯の画像を見ながら、昔の彼氏が、どうのこうのという他愛もない話のようだ。
ここで考えられるのは、もし彼女たちが鉄道マニアなら、大回り乗車を、まず考えるだろう。
大阪などの都市部では、A駅からB駅に移動するのに、そのルートは、重複しないというルールを守れば、最短距離でなくても良いという規則がある。
例えば、環状線でも、大阪駅から隣の天満駅に行くのに、環状線をグルリと反対周りして、天満駅に行っても良いのです。
これを応用すれば、大阪から琵琶湖を1周して隣の駅の天満駅に行ったり、和歌山あたりを回って、最終的に天満駅に行ったりすることも可能なのです。
凡も、何度か、それをやったことがある。
電車に乗ることが好きだという人なら、電車に乗っていることが楽しいので、休日に、何もすることが無い時にやれば、楽しい休日になる。
ただ、ルールとして、同じ駅を2回通過することは出来ないのと、途中下車も出来ない。
これなら、彼女たちが、大阪駅から森ノ宮駅までの切符を持って、学研都市線に乗っている理由も理解できる。
大阪駅を出発して、京橋から学研都市線に乗って、木津駅まで移動。
そこから関西本線で奈良を通過して、天王寺まで移動。
そして、環状線で、森ノ宮駅まで行く。
或いは、もっと長い距離を稼ごうとしたら、切符の印字の逆方向の森ノ宮駅で乗車して、京橋駅に行き、そして学研都市線で木津駅まで移動して、そこから関西本線で柘植駅まで行って、さらに草津線で草津まで移動し、そこから東海道本線で、京都駅を通過して大阪にたどり着くというルートも考えられる。
さらに、鉄道マニアなら、草津駅から京都駅に行くのに、琵琶湖を1周するというのを付け足すことも出来るだろう。
しかし、そもそも彼女たちは、鉄道マニアなのだろうか。
見た感じ、そんな雰囲気は、まったく感じられない。
ある女性は、少しばかり派手な外人風であり、もうひとりは、少し美人な優等生タイプ。
また、ふっくらとしたお母さんタイプの人や、あとの2人も、至って普通の女性だ。
みんなに共通する匂いみたいなものがない。
ママ友なのかもしれないが、ややそれより年齢が上のようでもある。
或いは、学生時代の友達なのか。
話している温度感で言うと、雰囲気としては、それが1番近い。
いずれにしても、彼女たちが、全員、大回り乗車を知っていて、やっている風には見えないのだ。
或いは、同級生の誰かが、大回り乗車っていうのがあるから、折角だから、電車に乗りながらお話しようよと持ち掛けたのかもしれない。
想像では、そんな感じだろう。
となると、また不思議である。
大回り乗車をするとなると、お昼ごはんを食べることになる。
まあ、木津駅に行って、すぐに天王寺駅に引き返すなら、無理に食べなくても良いけれども、それより長い距離になると、お腹も減ってくるだろうし、お昼を食べることになる。
とはいうものの、最近の駅のホームには、駅そばも無いところが多くて、果たして、その昼食をどうしようと思っているのだろう。
大回り乗車では、途中下車して、駅前の食堂でランチなんてことは出来ないのだ。
普通、同級生と大回り乗車でお話ししようとなったら、乗る前にお弁当でも買って、どこかの駅のベンチで、楽しく食べようという段取りになってもおかしくはない。
でも、彼女たちは、何も持ってはいない。
凡は、もう彼女たちが持っている切符に釘付けだ。
ただ、アイフォンのみゆきさんを切ることはしない。
だって、みゆきさんの声は、可愛いから、どんな時も、ずっと聞いていたいんだ。
それにしても、どうして森ノ宮駅なのだろう。
京橋駅から学研都市線で、大回りをするのなら、何も森ノ宮駅でなくても良い。
隣の天満駅で良いのだ。
大阪駅と森ノ宮駅の運賃は、160円。
大阪駅と天満駅の運賃は、120円。
それなら、大阪天満間の切符を買うだろう。
でも、彼女たちが持っているのは、大阪森ノ宮間の切符だ。
そんなことを考えていると、彼女らの持っている切符の値段が見えた。
1600円。
これはまた、気になる金額だ。
一体、大阪駅と森ノ宮の料金が、1600円というのは、どういうことか。
考えられるのは、回数券だ。
大阪駅と森ノ宮駅の運賃は、160円だから、回数券となると1600円で、つじつまが合う。
凡は、必死で、前の席や、隣の席の女性の切符を見ようと試みるが、微妙な角度で持っているため、チラリチラリとしか見えない。
思い切って、彼女たちに声を掛けてみようかと思ったが、それは怪しすぎるだろう。
そこまで考えたら、凡の降りる駅に着いたので、彼女たちを残してホームに降りる。
そこで、また立ち止まった。
回数券を買う必要があるのか。
回数券とは、同じ区間の切符を10枚買えば、オマケで1枚付いてくる切符のセットの事だ。
彼女たちの人数は、5人。
例えば、普通に大回り乗車をしようとするなら、普通に、大阪駅から森ノ宮駅の切符を、個人で別々に購入するだろう。
わざわざ、回数券にしない。
勿論、回数券は、1回分オマケが付いているので、1枚あたりに換算するとお得だ。
とはいうものの、5人で、11枚の切符とは、如何にも計算が合わない。
残りは、6枚となる訳で、その6枚を使って、また別の日に大回り乗車をしても、1枚余ることになる訳で、中途半端極まりないのである。
勿論、回数券も、残った分を払い戻しすることも出来るけれど、手数料を考えたら、5人で回数券を買うことは無意味だ。
ただ、彼女たちの行動としては、回数券は、印字の区間であれば、どこで乗り降りしても良いので、或いは、森ノ宮駅で待ち合わせて乗車して、京橋から大回り乗車を始めて、最終的に大阪駅で降りる。
その後は、梅田あたりで、スイーツを食べるなんてことも出来る訳で、それなら、彼女たちの雰囲気からは想像に易い。
そこで、そういうことだと、凡自身納得させたのだけれども、どうしても、回数券の謎が気になるのである。
5人の彼女たちに11枚の切符。
或いは、学生時代に、仲の良い友達が11人いたんだ。
そして、何の理由化は知らないが、その内の6人が死ぬ。
今日は、その命日で、敢えて死んだ友達6人の切符を買って、それで彼女たち5人と、死んだ魂の6人で、死んだ誰かが好きだった鉄道に乗ろうという事なのかもしれない。
そんなことまで想像したら、背筋がぞっとした。
それにしても、まだ謎が解けないまま、凡は今日にいたっているのであります。
だれか、鉄道に詳しい人が、その真相を教えてくれるまで、モヤモヤと過ごすことになりそうである。

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