平 凡蔵。の 創作劇場

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散散歩歩。(290)アイラブユー・ほたえてくれ!みゆきさーん。(56)

福岡で泊まるホテルが取れない。
すべて満室なのです。
困った。
なのだけれど、凡のこころには、暖かな春の心地よい風が吹き抜けていく。
ぽかぽかとした春の風がね。
今回の旅の目的であるところの、みゆきさんのコンサートには間違いなく行けるのでありまして、ホテルが取れないなんて、どうでもいいのであります。
とはいうものの、困ったな。
サウナや、インターネットカフェ、深夜喫茶なども東京や大阪ならあるのだけれど、福岡はどうなのかな。
駅のベンチに腰かけて夜を明かすなんてことも、出来る訳で。
そういえば、友人と学生時代に北海道旅行に出かけた時は、お金が無くて2月の寒い駅の待合室のベンチで過ごすなんてこともあった。
でも、若かったからね。
その友人も去年に死んじゃった。
何か、虚しいね。
まだ、生き残っている凡は、折角だからこの世を楽しまなきゃね。
ということで、ホテルはないのだけれど、焦ってはいない。
とはいうものの、2日間ベンチで、その次の日に仕事というのは、いささか中年の体には堪えるものがある。
できれば、ホテルに泊まりたい。
楽天やANAのホームページが駄目だったので、他のサイトで検索をしてみる。
でも、どこもダメ。
唯一、一休ドットコムでは、2件ほどヒットした。
連泊は出来ないけれど、泊まれる。
1泊、24000円。
パソコンの前で、腕を組んで瞑目した。
試練だ。
24000円といえば、2泊だと48000円。
ちょっとした金額である。
今回の交通費とチケット代よりも高い。
これだったら、駅のベンチで夜を過ごして、48000円分美味い物を食べた方が楽しいかもしれない。
伊勢海老や、ステーキ、、、、?
贅沢な食事を書こうと思ったのですが、伊勢海老とステーキしかでてこないところが、寂しい。
でも、みゆきさんを見た後にデラックスなホテル。
これは、素敵な夜になりそうでもある。
みゆきさんもデラックスなホテルに泊まるのだろうか。
夜景の見えるホテルの窓際。
白く柔らかなバスローブを着た凡は、ブランデーグラスを左手にもって、ゆっくりとソファに腰掛ける。
窓の外のヘッドライトの流れを眺めながら、みゆきさんに声をかける。
「みゆきさん。コンサート疲れただろう。シャワーを浴びておいで。」
「ありがとう、凡ちゃん。」
バスルームからのシャワーの音を聞きながら、遠く福岡まできてツアーを終えた感慨にひたる。
ほのかに香るジャスミンの香り。
すると、突然へやの明かりが消えた。
バスルームの前にキャンドルを持ったみゆきさんが立っている。
「ロマンチックだね。さあ、こっちへおいで。みゆきさん。」
「あ、あちちちちーっ。何するのみゆきさん。熱いよ、熱いよ、あちちちちー。」
「お黙り。バスローブを脱いでお尻を見せるのよ。」
暗い福岡のホテルの部屋に鳴り響くムチの音。
「パシーン、パシーン、パシーン。」
そして、凡の悲鳴。
「熱いよ、熱いよ、助けてー、みゆきさーん。」
ムチで打たれて晴れ上がったお尻にロウソクが垂らされる。
耐えられない痛み。
ただ、その痛みに耐えていると、胸のあたりがキューンと熱くなる。
みゆきさんへの愛のキューンとムチとロウソクのキューンが1つになるとき、痛みは愛へと昇華する。
陶酔した凡は、鼻水とよだれを、ダラーんと垂らしながら、みゆきさんを見上げて言う。
「みゆきしゃーん。ズルズル。だいじゅきでーず。」
まあ、みゆきさんと同じホテルの部屋ということは、ありえないので、ここのホテルは、いったん保留としておこう。
さて、インターネットではヒットしなかったけれど、まだ全部のホテルが満室だとは限らない。
ネットには反映されてはいないけれど、空室がある場合がある。
直前にキャンセルされた部屋とか、別枠で取ってある部屋とかね。
なので、ここからは電話作戦である。
福岡市内のビジネスホテルに順番に電話を掛けていく。
「あの、9日と10日なんですが、部屋は空いてますか。」
「すいません。あいにく満室となっております。」
即答である。
「あ、ちょっと待ってください。調べますね。」なんて無い。
即答だ。
よっぽど満室なんだね。
でも、諦めずに電話を続けよう。
すると、「大丈夫ですよ。」というビジネスホテルに出会えた。
それで金額を聴くと、1泊20000円。
そうなんだ。
さらに電話の向こうの可愛い女の子の言葉が続く。
「でも、早く予約しないと、この部屋もなくなりますよ。」
可愛い声の向こうに、意地悪な笑顔が見える気がした。
「さあ、貧乏人よ。この金額が払えるのかい。」
電話の向こうは、暗く湿った空気が満ちていた。
濃厚なバラの香り。
パシーン、パシーン。
ムチの音が、いつ終わるともなく続く。
「よお、貧乏人が。このホテルの20000円が払えるのかい。」
「痛いよ、熱いよー。」
「おまえは、貧乏人のブタだ。ブタは、こうしてやる。」
「痛いよ、熱いよー。」
「いいかい。おまえは、貧乏人のブタだ。私は、貧乏人のブタですって言ってみろ。」
「い、痛いよー。あ、熱いよー。ぼ、ぼ、凡ば、貧乏じんの、ブダでじゅー。」
鼻水とヨダレを垂らしながら、答えた。
受話器の向こうで、サラサラロングヘアーの黒い革のミニスカートの魔女が、にやりと笑う。
そんな状況が、少しばかり、心地いい。
とはいうものの、ここは、どうも気が乗らない。
普通に20000円だったなら、候補の1つにするんだけれど、平日の宿泊価格が5000円台のビジネスホテルに、20000円出して泊まるのは、いささか悔しい思いが貧乏人のこころの片隅に発生する。
泊まっている間も、何か釈然としないものがね。
それなら、さっきの24000円の方が、納得がいくのである。
有名なホテルだからね。
普通に止まっても、そのぐらいの値段だ。
自分のこころに説明がつく。
なので、保留して電話を切った。
受話器の向こうの女の子に、ちょっと心残りを感じながら、電話を続ける。
すると、それから何回か電話を繰り返すと、「リンリロリーン。空いてますよ。」と、可愛い声の女の子が答えたホテルに出会えた。
まるで天使のベルのような可愛い声である。
「リンリロリーン。喫煙室ですが、2日間とも開いています。リンリロリーン。」
普通なら、禁煙室にするのだけれど、喫煙でも問題ない。
値段を聞くと。
「1泊8500円です。リンリロリーン。」
平日に泊まっても、6000円から8000円のホテルである。
それが、8500円なら、納得がいく。
その電話で、すぐに予約を入れた。
「博多グリーンホテルアネックス」
これで、飛行機、コンサートのチケット、ホテルと、すべてが整った。
後は、コンサートへ出発するのみ。
それにしても、天使のベルの女の子のいるホテルに救われたな。
爽やかで晴れやかなベルの音が、今も凡のこころに響いている。
こころ洗われる旋律。
ただ、受話器の向こうからムチを打つ音がしなかったことが、少しばかり寂しかった。

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