平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
どれも、すぐに読めちゃう短編なので、読んで頂けたら、うれしいです。

創作劇場は、ここをクリックしてください。⇒⇒⇒

そうだ、ソウルへ行こう!(57)

ソウルの女の人は美容に敏感なようだ。
ちょっとした整形なら気楽に手術することも出来るそうだ。
安いコスメティックを紹介する雑誌やテレビ番組をよく目にする。
美しくなりたいというのは女性の永遠のテーマかもしれない。
しかし、日本にもすごい猛者がいるのを凡は見た。
兵庫県の三田というところで電車に乗っていたときのことである。
凡が座席に座っていると、斜め向かいに20代の女性が座った。
内心少しばかり喜びを感じていると、そのお姉さんは座席に座るなり大きなバッグから化粧品を取り出して顔に塗りだしたのだ。
よく電車の中で化粧をする人を見かけるが、化粧の下地から始めた人は初めてだ。
お姉さんは手際よく顔にファンデーションを塗っていく。
その手さばきは見事だ。
「ここはあんたの自宅か。」凡は心の中でつぶやいた。
それが終わると、今度は紐で縛った大きな包みを取り出してきた。
紐を解いて左右に開きさらに上にも開くと大小さまざまな化粧筆が入っている。
その数は30本をぐらいだろうか、その他にも化粧につかうであろうと思われる見たことがない道具が収められている。
それをガチャガチャガチャと言わせながら開けて、今度は仕上げをしだした。パレットのような凡はよくしらないが色の粉を顔に筆で塗っていく。
「あんたは、絵描きか。」と凡は心のなかでつぶやいた。
その手さばきも見事だ。
化粧というものは思ったよりも難しい。
凡は眉毛が薄いので一度ミニボンのまゆずみで眉毛を書いてみたことがあるのだが、クレヨンしんちゃんのような眉毛になってしまった。鏡を見ながらかいたのであるが、凡には化粧は無理だ。眉毛も薄いままでいこうとあきらめたのである。
ほんの5分ほどで女性の化粧は完成した。
「あ、いや完成していなかった。」凡はまた心の中でつぶやいた。
化粧はまだ完成していなかったのである。
お姉さんは、こんどはつけまつ毛をとりだしたのである。
凡は電車の中でつけまつげをつける女性は始めて見た。
どうして、付けまつげをつけるときや、ビューラーをつかうときや、アイラインをつけるときは、女の人は口を半開きに
するのだろうか。
そのお姉さんも、口を半開きにして、付けまつ毛をつけた。
「やっと完成したな。」凡は心の中でほっとした。
と同時に駅について、お姉さんは道具をガチャ、ガチャ、ガチャをいわせながら、しまいこんでホームに降りていった。
事だ。
凡は、心のかなではそのお姉さんに拍手を贈っていた。
そうだ、ソウルでは電車の中で化粧をするお姉さんはいるのだろうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました