平 凡蔵。の 創作劇場

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散散歩歩。(821)青春18きっぷで高知の旅。(2)

7月25日(火曜日)青春18きっぷの高知への旅の途中であります。
11時00分に坂出駅を出た電車は、11時42分に琴平駅に着いた。
ここで12分の待ち合わせで、阿波池田駅行きの電車に乗り換える。
琴平駅のホームには、「金毘羅船々、追風(おいて)に帆かけて、シュラシュシュシュ~」の、あの船をかたどったのだろうか、船の形をした洗面台が拵えてあった。
素晴らしい!と思って近寄ったら、水道は閉められていて、もう洗面台としては使用されていなかった。
「またか。」と、ため息をつく。
旅の疲れを取ってくれる洗面台や水飲み場が、どんどんホームからなくなっている。
凡には、どうにも悲しいのであります。

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阿波池田駅行きの電車に乗り込んで、長椅子のシートに座ると、後から20歳代後半と見える女性が1人で乗り込んできて、凡の長椅子のシートの前の4人掛けのシートに座った。
肩よりも少し長いソバージュで、麦わらのハットを被り、紺色の麻混のコットンのチュニックを、女性向けの旅行雑誌から抜け出してきたような感じで、着こなしている。
夏の信州あたりのリゾート地の白樺の林を吹き抜けてくる風が似合いそうな感じだ。
土讃線には見かけることのないだろう女性なのである。
彼女もまた、ひとり旅なのだろうか。
見ると中々に可愛い。
ただ、所謂、若い女の子の屈託のない可愛さと言うよりも、1人旅に出てみたいと思って土讃線に乗り込んだ、その雰囲気がテレビのCMにでも使えそうな感じなのだ
しかし、350ミリの缶ビールを、チビリチビリとやりながら、アンニュイな感じで、スマホで何かを打ち込んでいるのは、ちょっと自分で作り上げた1人旅のイメージに自己陶酔し過ぎなのかもしれない。
何にしても、目の前に可愛い女の子がいるというのは、これは素敵じゃないですか。
琴平から阿波池田に向かうワンマンカーは、山の隙間を右に左に、レールの曲がりに沿って小刻みに揺れながら抜けていくのは、あたかもオモチャの電車に乗っているようで楽しい。
箸蔵駅の手前ぐらいだったか、単線なのに別の線路に入ってバックした。
こんな勾配なのにスイッチバックなのかなと思ったら、特急通過のために回避だったようだ。
佃駅で停車すると、反対方向から電車が来て、ここですれ違う。
その時に、Tシャツの兄ちゃんが、電車を降りて、向かいの反対方向から来た電車に飛び乗った。
彼は彼で、何かの旅を楽しんでいるんだな。
たぶん鉄ちゃん以外の人に言っても理解してもらえない楽しみ。
ふと前の4人掛けのシートの女の子を見ると、口を開けて寝ていた。
これはイケナイ。
如何にも旅が好きですみたいなTシャツにジーパンの女の子や、部活帰りの女の子が、口を開けて寝ていても、そうだろうなと思うれども、信州のリゾート地の白樺の林の風が似合う麦わらハットの女の子は、口を開けて寝ていてはイケナイのである。
と見ていると、座席に置いていた麦わらのハットが床に落ちた。
まいった。
これはどうすべきなのか。
「ちょっと、お嬢さん、ハットが落ちましたよ。」なんて、女の子の方をポンポンと叩いてお教えてあげるべきなのか。
ウトウトと寝ている女の子が、ビックリして「キャー。」なんてことになったら大変だ。
それに、知らない女の子に、いくらポンポンであっても、無断で触ったりなどしたら、痴漢と間違われても仕方がない。
先ずは、ポンポンは避けるべきだろう。
じゃ、声だけで女の子に知らせてあげるか。
「ちょっと、お嬢さん。」
「ちょっと、お嬢さん。」
「もしもし、ちょっとお嬢さん。」
なんて、もし女の子がぐっすりと寝ていたら、何度も何度も大きな声で話しかけなきゃいけないわけで、周りの人の注目を集めてしまうだろう。
「あのオッチャン、女の子に必死で声かけてるで。」なんて、学校帰りの女子高生に変態扱いされてしまう。
しかも、これで起きてくれたら良いけれども、起きてくれなかったら、「ちょっと、お嬢さん。」の声もフェイドアウトするように止めなきゃいけない訳で、最後の「ちょっと、お嬢さん。」を言った後の沈黙を想像したら、悲しすぎる。
それなら、黙ってハットを拾って座席の置いてあった場所に戻してあげるか。
でも、タイミングの悪さはピカイチの凡だ。
きっとハットを拾ってあげた瞬間に女の子が目を覚ますよ。
んでもって、女の子のハットを持っている凡と女の子の目が合うね。
「ふが、ふが、ふが、ハッとが、ふが。」
凡は、こういう咄嗟の時に言葉が出てこない。
「ふがふが、こんにちは。」
なんてね、訳の分からないことを言っちゃうね。
凡が、風で床に落ちた女の子のハットを親切心で拾い上げてくれたと解釈してくれる確率は30パーセントぐらいか。
それは危険な賭けだろう。
どうしたものかと見守っていたら、目を開けて女の子がハットを拾い上げた。
少しホッとした。

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12時48分に阿波池田駅に到着。
ここで、次の電車まで約1時間ある。
お昼ご飯でも食べようと思って改札を出ると、みんなそれぞれに改札を出て、駅前の小さな商店街のそば屋などに入って行った。
ハットの女の子は、駅の写真などを撮っている。
1人旅。
凡は何を期待しているのだろうか。

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んでもって、小さな駅前の商店街をひと回り。
雰囲気のあるパン屋さんがあったので、あんロールなるものを購入。
これはあとで電車の中で食べてみたが、うぐいす色をしているのが餡で、なかなか面白かった。

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お昼はどこにしようかと迷ったが、21世紀という名前にひかれて喫茶店のようなお店に入った。
店内は、地元の人で8割がた席が埋まっている。
和も洋もある定食の中から、しぎやき重800円という焼き鳥の丼のようなものを注文。
ただ注文しても、まあ時分時だから、なかなか来ない。
20分ちょっと待ったかな、普段はそんなに急がないけれど、今日は電車の時間があるから気になった。
しぎやき重のお味は、凡好みの濃いめの味付けで、美味しく頂きました。

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さて、これからまた土讃線の旅であります。
阿波池田駅を13時49分に発車。
例の女の子はと見たら、凡の席からは遠いロングのシートに座った。
そしてしばらくしたら、また寝ているようだった。
ただ、ソバージュのヘア―を、阿波池田駅まではふんわりとさせていたのを、今乗り込んできたときは、後ろで縛ってまとめていたのが目に留まる。
しかし、よく寝る女の子だね。

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(大歩危あたりの車窓。なかなかうまくとれない)
途中、新改駅(しんがい)で、またスイッチバックをする。
これもまた、それほど高低差があるようにも思えないので、特急通過のためなのかな。
新改駅のホームは、もう誰も乗り降りする人はいないだろうと思える寂れ具合なのだけれど、というか、この駅で降りるなんてことは想像できない駅なのだけれど、如何にも鉄ちゃんと思しき男の子が1人降りた。
土讃線の本数を考えたら、このホームであと何時間過ごすのだろうと思うと、暑さにやられないだろうかと他人事ながら心配になった。
彼の鉄ちゃん魂に乾杯である。
と思っていたら、電車のドアをたたく人がいて、この駅から顔を真っ赤にして、汗でびっしょりになったTシャツの小太りの青年が乗り込んできた。
彼にもまた、ちょこっと敬礼。
そんな光景を楽しんでいると、16時06分、高知駅に到着。
土讃線の電車の中で、アイフォンで今日のホテルを確保している。
あ、そうだと思って周りを見渡したけれど、麦わらハットの女の子は、どこへいったか見つけることができなかった。

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(高知の駅では、べろべろの神様が出迎えてくれる。今日はべろべろに酔っぱらわないようにしなきゃね。)

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コメント

  1. ゆけむり より:

    どんなに素敵な女の子でも、口をあいて寝てちゃ興ざめですね
    まぁウトウトするのはしょうがないけど、ちょっと無防備過ぎますよね(笑)
    しぎやき重は見るからに美味しそうですね
    タレはうな重のタレっぽいのでしょうか?
    なんだか家で真似したくなってきましたよ

  2. 凡蔵。 より:

    ありがとう、ゆけむりさん。
    口を開けて寝ているのは、ちょっと興醒めですが、まあ、可愛い子だったので、それもまた、許せちゃいましたよ。
    可愛い子は、得ですよね。
    んでもって、しぎやき重は、鶏の照り焼き丼と言う感じです。
    タレが多めに掛かってたので、私好みでした。
    最近、余裕が無くて、なかなか先に進めません。明日の休みにでも続きを書こうかなと思っているところです。
    ゆけむりさんも、最近は、忙しそうですね。

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