平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
どれも、すぐに読めちゃう短編なので、読んで頂けたら、うれしいです。

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そうだ、ソウルへ行こう!(14)

バイキングの話である。
ある時、凡は友人と食べ放題の店に行ったことがある。
その友人はバイキングのいいところは、そのお金を払えば、料理を食べてもいいし、食べなくてもいい。その余裕がいいのだ、と言ったのだ。
他のレストランでは、何も食べないでいることは出来ない。
しかし、食べ放題の店なら食べなくてもよいからいいのだというのだ。
そう言われれば一理ある。
しかし凡は凡人であり愚人なのであるからして、そんな芸当は出来ない。
食べに行っても、箸を置くよりも箸を持っている時間のほうが長い凡にとっては、その目的は無理というものだ。
何がなんでも食べ続ける。
そんな凡にとって一番の敵は、「がっかりバイキング」と凡が言っているもので、宣伝と現実が全然違うお店である。
広告で、特別メニュー「てっちり食べ放題」「焼きタラバガニ食べ放題」などと謳ってるホテルがあったので入ってみると、ホテルの従業員が取り分けてくれる方式であった。
しまったと思ったが仕方がない。
順番を待って取り分けてもらうと、小さな小鉢に河豚を1欠片入れ豆腐と野菜を1欠片ずつ恭しくいれて手渡してくれた。焼きタラバの時もそうだ、写真とは似ても似つかない薄いカニの足を恭しく2本乗せて渡してくれる。
凡の前のお兄さんが、もっと乗せてくれと言ったのだが、お一人1皿ですと断られテーブルに戻っていった。
彼のやや肩をすぼめた後姿が切なくて、見ている凡が泣き出しそうになった。
テーブルに戻ったお兄さんは、ポンとテーブルに2本の薄いカニの足を置いた。
その前に奥さんと男の子が一人。
「お父さん、カニの足2本しかもらえなかったよ」
そんなことも言ったかもしれない。
でも、奥さんは楽しそうに目の前の料理を食べていた。
「普段食べられへんから、カニの足いっぱい食べてね」そんなことを奥さんが言っているのかもしれない。
男の子はお父さんの取ってきた薄いカニの足の1本を美味しそうに前歯でこそぎ落としながら食べていた。
凡はその家族の笑顔を見たとき、ホッとしました。こんながっかりバイキングなのに家族が笑顔で食べているなんて、なんて素敵なことなんだろう。
しかしソウルで行くバイキングはがっかりであってはならないのだ。
今日も見ていただいて、ありがとうございます。

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