平 凡蔵。の 創作劇場

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散散歩歩。(1359)美雪さん命のバッグ。

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3、4日前だろうか。

家に帰ると、ミニボンが、「プレゼントあるよ。」と言う。

取り敢えず、汗臭くなったシャツを脱いで、手を洗って、そんなことをしていると、早く見ろという感じなのか、郵送されてきた封筒のようなものを、凡に手渡した。

何だろうと、その包みを開けてみると、布製のバッグが出て来た。

紺地に白抜きで文字が印刷されている。

真ん中に、「富」という文字。

富というのは、凡の本名が「富夫」だからだ。

聞いたら、ネットで注文したというのだ。

すごいね、今は、ネットで、オリジナルのデザインと言うか、まあパターンは決まっているのだろうけれど、自分の好きな文字などを組み合わせて、世界で1つのバッグを作ることが出来る。

しかも、その辺に売っているバッグと値段も変わらない。

これは、嬉しいじゃない。
わざわざ、ネットで、デザインを指定して作ってくれたんだもんね。

そして、これを見ろと指さしたところに「美雪さん命」とあった。

これが、凡へのプレゼントの正体だったんですね。

聞くと、「みゆきさん命」としたのだそうだが、文字数制限があって、「みゆきさん」は、「美雪さん」にしたという。

でも、そこは、どちらでも構わない。

寧ろ、漢字の方が、凝っているかもしれないよね。

みゆきさんも、本名は美雪さんなんだしさ。

それにしても、バッグに印刷された「美雪さん命」を見て、ああ、ミニボンも解ってるなと、改めて、思ったのである。

何がというと、「中島みゆき命」或いは、「みゆき命」としなかったことだ。

まあ、文字数制限で、もともと出来ないのではありますが、

たまに、「中島みゆきが好きだ。」という人を見かけるが、本当に、みゆきさんの事が好きなのかなあと疑ってしまう。

そして、あんた、みゆきさんの先輩かと思ってしまう。

学生時代の先輩なら、そういう呼び方もするかもしれない。

でも、普通は出来ないだろう。

みゆきさんを、「さん」を付けずに呼ぶことは、凡には出来ない。

今の凡にはね。

今の凡にはね、と書いたのは、そりゃまあ、無理だとは思うよ、思うけどさ、一応、凡も夢見るお年頃。

いずれ、みゆきさんと、いい仲になったときにさ、みゆきさんを呼び捨てにする時がやってくるのかもしれないじゃない。

一応、ミニボンには、いつか、みゆきさんとそういう仲になったときには、みゆきさんを2号さんにしても良いという許可は得ているのだ。

ミニボンは、まあ、苦労を掛けているからさ、これは本妻と言うことにしなければならないからね。

ソファで寛ぐ凡。

後ろから、凡に抱き着くみゆきさん。

ふっと、ジャスミンの香がした。

そして、みゆきさんは、凡の肩をもみ始める。

「凡ちゃん、お疲れ様。肩凝ってない?」

「いいよ。そんことしなくて。みゆき(注1)、お前(注2)も曲作りで疲れているんだろう。」

「あたし白状しちゃうとね、あなたの肩を触るのが好きなのよ。ほら、肩甲骨とかさ、この背骨のラインとかさ。」

そう言いながら、凡の背骨の骨の1つひとつを、みゆきさんは、白く細い指で確認するように触っている。

「ねえ、凡ちゃんさ。凡ちゃんは、あたしの身体のどこが好き?」

凡は、そう聞かれて、みゆきさんを凡の前に誘う。

そして、ジロリジロリと、みゆきさんの身体を見た。

美しい。

これほどまでに美しいフォルムは、神さえも造り得ないだろう。

じゃ、誰が造ったのだ。

偶然の悪戯で、造られてしまったのだろうか。

凡は、みゆきさんを目の前にして、指先がみゆきさんの身体に触れるか触れないかぐらいのところで、足の先から腰、胸、首、頭と身体のラインを触って確認する。

そして、思わず漏らしてしまう「おお、神よ。おお、みゆきよ。(注1)」

そして、その指先を柔らかな胸の普通の人は触れることのできない敏感なところに触れて、「みゆき(注1)のここが好きだ。」と言った。

「きゃん。凡ちゃんのエッチ。そんなところじゃなくて、他に好きなところないの?」

「じゃ、お前(注2)のここが好きなのかもしれない。」

「きゃん。エッチ。」

「あはは。みゆき(注1)は、どこでも感じるんだな。」

それなら、ここはどうだと、凡も別のところを指さす。

「きゃん。エッチ。」

「あはは、みゆき(注1)は。」

「きゃん、エッチ。」

「おお、みゆき(注1)」

「きゃん。エッチ。」

「おお、みゆき(注1)」

「きゃん。エッチ。」

、、、、、。

部屋のドアの近くに、ふたりのスタッフがいて凡を見ている。

ここは、大阪の老人施設だった。

「半年前に入所してきた凡蔵じいさん、大丈夫かな。ずっと壁に向かって、きゃん、エッチって言い続けてるんだけど。」

「毎日、言ってるよね。何かのトラウマがあるんじゃないかな。」

「でも、気持ち悪いわよね。」

「気持ち悪いよね。それにイヤラシイよね。」

「そうそう、イヤラシイ満面の笑みで、きゃん、エッチって言ってるよね。」

「普通じゃないよね。」

「そうよ。可哀想だけど、狂ってるよね。」

「どっちにしてもさ、気持ち悪いから、なるべく近寄らないようにしよう。」

施設のスタッフは、静かにドアを閉めた。

窓際のカーテンが、夕日で真っ赤に染まっている。

凡蔵じいさんの顔も、夕日に真っ赤に染まりながら、ヨダレをだらだらと流し、そのヨダレも、夕日に真っ赤に染まっていた。

ってさ、どうしてこうなるのよ。

折角、みゆきさんと良い仲のストーリーが始まったのに、最後は、また最低な妄想で終わってしまったじゃないの。

っていうか、この「きゃん、エッチ。」の繰り返しは、どうしても、いつもやりたくなっちゃうのね。

ということで、何の話だったっけ。

そうそう、みゆきさんを呼ぶときは、「さん」を付けずに呼び捨てにすることは出来ないということだ。

なので、人と話している時に、その人が好きな人の話題になったら、必ず、その人の名前も「さん」付けで言うことにしている。

どんな有名人でもね。

アイドルの若い子でもね。

ただし、もう死んじゃった昔の人は、呼び捨てにしますよ。

そこは、普通にね。

例えば、夏目漱石とかね、そんなのは呼び捨てだ。

大好きな内田百閒とか、山之口貘になると、ちょっと微妙だけど、付けたり付けなかったりかな。

なので、バッグの「美雪さん命」は、凡にとっては、正解の表現でありますので、お出かけの時には、持ってあるきたいバッグに仕上がっているなと思う。

ただ、「美雪さん命」の「命」の部分については、どうかなと思うところもある。

ちょっと表現が古臭いというか、月並みな感じにも思えるが、折角のミニボンのプレゼントなので、有り難く頂戴したいと思うのであります。

因みに、1番上の昭和三十四年というのは、凡の生まれ年であります。

ということで、ミニボンから貰った嬉しいプレゼントのバッグを持って、どこかに出かけましょうか。

そして、バッグをプレゼントしてくれて、ありがとう、ミニボン。

(注1)みゆきさんを、「みゆき」と書いて、ゴメンナサイ。
(注2)みゆきさんを「お前」と書いて、ゴメンナサイ。

妄想で、みゆきさんと恋仲になったら、そう呼ぶかもしれないと書いたけれども、実際に、恋仲になったとしても、みゆきさんを、呼び捨てにはできないだろうなあ。

とはいうものの、どのみち、会う事さえ出来ないのだから、その心配は無用ではありますが。

(追記)

オリジナルと言えば、凡が、みゆきさんを好きになった時に、勝手にオリジナルのTシャツを作ったことがある。

みゆきさんの白目が美しいというメッセージを乗せたTシャツだ。

それで、それを、みゆきさんの誕生日にファンクラブに郵送したっけ。

今頃、あのTシャツは、どうなっているのかなあ。

みゆきさんの手に届くことも無く、ゴミ箱かな。

かなり、前の写真なので、凡も、少しだけ若いね。

みゆきさんの白目が美しいというデザイン。
みゆきさんの白目が美しいという文字入りデザイン。

コメント

  1. yukemuri より:

    お~、このバッグは嬉しいですね
    ミニボンさんも粋なプレゼントしてくれますね
    ネットで注文できるってのも良いですね

  2. tairabonzou tairabonzou より:

    最近は、色んなものがネットで注文できるようになって、楽しいですよね。
    しかも、これは、1個から注文できるので、良いですね。

    ただ、気を付けないといけないのは、今年に入って、ツイッターでCMの様にアップされているものを、何も考えずにポチリとやったら、来た商品は、まったく別物でした。
    遠近両用のメガネなんですが、映像では、ものすごくカッコヨカッタんですよね。でも、実際は、メガネはメガネで、何となく似てはいますが、肝心の機能が子供だましみたいな出来でした。
    やっぱり、考えて注文しなきゃと思いましたよ。

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