旅に出て、食堂などに入る。
寡黙な主人が厨房でゴソゴソと動いていたかと思うと、サッパリとした感じの美人の奥さんが、その料理を運んでくる。
テーブルに置いた瞬間から、ふわりと良い匂いが漂っている。
そんな時だ、注文した筈の料理なのだが、どこか雰囲気が違う。
何も聞かずに、それを口中に放り込むと、うん、なかなかイケル。
今までに食べたことのない味付けだが、何が違うかは説明ができない。
説明は出来ないが、美味い。
ああ、この店に入って良かったと思う。
こういうのが、旅のオマケというものだろう。
こんなこともあった。
随分と前の日常の話だ。
回転ずしに入ると、隣に座った兄ちゃんが、マグロの皿を取った。
回転すしに入って、イヤホンで音楽を聴いているなんて、凡は理解できないなと思っていた。
すると、兄ちゃんは、マグロの寿司の上に、ガリを乗せた。
ケッタイナことをするなと見ていると、今度は、その上に、甘ダレを回しかけたのだ。
おいおいおい、一体、どういう味覚をしているのだ。
と思ったら、パクリとやった。
兄ちゃんは、美味いとも不味いとも、判然としない表情で、音楽を聴いている。
これを邪道だと決めつけるのは、凡の流儀に反する。
好きなように食べるのが1番だし、第一、凡は、その味を知らないから批判する理屈も無い。
というか、この食べ方が気になって仕方がない凡になっていた
とはいうものの、流石に、兄ちゃんの横で真似る訳にもいかない。
凡は、後日、回転ずしに行って、兄ちゃんの食べ方でマグロを口に入れた。
美味いというものではなかったが、不味いと否定する理由も見つからない。
これはこれで、あってもいいじゃないかと思った記憶がある。
そんな新しい味や、新しい食べ方に出会うのは楽しい。
普段は、料理をしない凡でも、家に帰って作ってみたくなるのである。
開高健さんの小説に、「新しい天体」というのがある。
凡も、学生の頃に読んだ。
ストーリーは、官庁の余った予算を使うために、役人が全国の美味い物を食べ歩くと言う食レポ的な小説である。
食いしん坊な凡は、読みながらヨダレをタラリと落としたものである。
小説の冒頭には、
「新しい御馳走の発見は人類の幸福にとって天体の発見以上のものである
B・サヴァラン『美味礼賛』」
と、書かれている。
そこから、小説の題名を取ったのだろう。
凡も、旅に出た時や、日常で、新しい味に出会うことがある。
最近では、伊豆の食堂で、青とう醤油というものを知った。
そして、それを家に帰って、また作ってみたのだ。
今回は、そんな自宅での料理レシピをご紹介したいと思う。
なのだが、その内容は、全く以って新しくない。
しかも、回転ずしの兄ちゃんのマグロと同じようなものである。
所謂、邪道。
でも、凡の気に入ったものなので、どこかの誰かが試してくれたらなあと思う。
その感想が、不味いでも、何でも構わない。
面白いなと思ってくれさえすれば成功だ。
題して、「発見したくない天体」とでもしておきましょうか。
ということで、早速もって、その1であります。
「青唐醤油。」
これは、今年の伊豆の旅行で出会ったものだ。
感じとしては、冒頭の文章の美人の奥さんの展開に似ている。
凡が、フライを頼むと、それなら、これを試してみてと奥さんが、料理と一緒に持って来てくれたのが、青唐醤油だった。
これは、ほぼ醤油なのだが、ふわりと青唐の香りがするのが最高なのである。
気に入ったので、奥さんにレシピを聞いて帰った。
この青唐醤油に関しては、ミニボンも珍しく気に入ったようで、帰って早速作ってくれた。
ただ、スーパーに行っても、青唐は売っていない。
「青唐と獅子唐は、違うのかな。」とミニボンが聞くので、「同じだろう。」と凡も答えて、とりあえず、獅子唐を買って帰って、ミニボンが作った。
それを冷や奴に掛けてみると、なかなか風味が良い。
でも、ミニボンが、ちょっと違うと言うのだ。
もっと、ピリっとしていたと。
なので、ネットで、青唐と獅子唐を調べてみると、やっぱり違うんですね。
同じような種類の植物なのだけれど、簡単に言うと、辛さが違う。
青唐は辛くて、獅子唐は、それほど辛くないのだ。
ということで、改めて青唐を買ってきて、今度は凡が作った。
さて、そのレシピは、
まず、青唐を刻む。
そして、醤油に、それを入れる。
数日置いて完成と、スコブル簡単である。
(青唐を刻む)
(醤油に浸すというか、醤油に刻んだ青唐を入れる。そして1日、2日待つ。)
(何に掛けても、美味しい。)
伊豆の食堂の奥さんのレシピによると、出来た青唐醤油を濾して、醤油だけを使うというものだったが、ネットで調べると、この刻んだ青唐も、醤油が沁み込んで、熱いご飯に乗っけても美味しいと書かれていたので、凡は、そのレシピで作った。
ということで、早速、実食。
青唐の風味と、ピリっとした軽い辛みが堪らない。
刺身や、フライ、というか、どんな料理にも合います。
凡のお気に入りは、冷奴に青唐と青唐醤油をたっぷり乗っけて、それを白ご飯に乗せて食べると言うのが、1番のお気に入りである。
さて、その2であります。
「ラッキョポテサラ。」
これは、鳥取の居酒屋で出会ったメニューだ。
これも作り方は至極簡単。
ただ、ラッキョの漬物とポテトサラダを混ぜるだけ。
はい、完成。
(ラッキョを半分に割る)
(これを混ぜ合わせる)
(はい、完成)
鳥取の居酒屋では、細かくラッキョを刻んでいたが、凡の好みでは、ラッキョを半分に割るぐらいが、食感もあって、ちょうど良い。
今回は、セブンイレブンのラッキョと、ポテトサラダを使用。
先ずは、ラッキョを半分に割る。
そして、ポテトサラダと混ぜる。
これだけだ。
ラッキョのシャキシャキとした歯触りが楽しくって、それでラッキョの香りが口の中に広がる。
お酒のおつまみには最高である。
ただ、凡の好みとしては、ラッキョは、もう少し酸味があった方が、ポテトサラダとの相性が良いかもしれない。
それと、ポテサラは、もっとマヨネーズが効いていてもよいかな。
今回は、セブンイレブンのを使ったけれども、他にもっと合うものが売っているかもしれない。
ポイントは、ええ?ラッキョ入れ過ぎじゃないのってぐらいに、大量に入れるのがベスト。
これも、1度、お試しあれ。
んでもって、3つ目。
「トマトのポン酢掛け。」
これは、昨年だったか、八戸のピザ屋さんというか、パブに行った時に出会ったものだ。
そのお店は、「ピーマン」さんといって、店内も、昭和の青春を感じるような雰囲気があって、勿論、食べるものも美味しい。
マスターは、音楽が好きで、日曜日にやっている朝市でも、その後ろで若者を招いてライブをするぐらいパワーのある人だ。
お客さんは、そんなマスターに惹かれてやってくる人ばかりじゃないかな。
実は、昨年に行ったのは、2回目で、随分と前に1度行って、すごく気に入ったので、昨年再訪したのである。
そんな昨年の再訪の時に、カウンターの隣に座った女性がいた。
この人も、バイオリンをやっている音楽好きな人で、常連である。
その女の人が買ってきたトマトを、凡にご馳走するために、マスターにカットしてくれと頼んだ。
そして、厨房からカットされたトマトを持って来てくれたのだが、その時のトマトが、これから紹介する食べ方だ。
そのレシピとは。
トマトを、適当にカットする。
小鉢に盛って、ポン酢を掛ける。
はい、完成。
(トマトにポン酢を掛けるだけ)
実際には、ピーマンのマスターは、トマトの皮を剥いてくれたのだが、面倒くさければ、カットだけでも十分美味しい。
とはいうものの、皮を剥くと、表面にポン酢が纏わりやすくなるので、より美味しくなるのは間違いはない。
これも料理と言えば料理だが、ただカットしてポン酢を掛けただけのものだ。
生のトマトというと、何かを掛けて食べることが多いけれど、それは、ウスターソースだったり、マヨネーズだったり、お酒のアテには、塩を掛けるのも美味い。
でも、ポン酢は、この時までは、考えたことも無かったんですね。
これがまた、さっぱりとして美味しかったんだなあ。
そんでもって、気になるのが、その女性だ。
凡のことなんて、すっかり忘れてるだろうなと思っていたら、今月の16日に、フェイスブックのメッセージに、お誕生日のおめでとうメールが入っていた。
嬉しかったね。
また、行きたくなっちゃったよ。
っていうか、行きたくなったって言っても、そんなことは考えてないですよ。
考えてませんって、そんなことは。
八戸の雨宿りする暗きパブの片隅。
色白き女を隣に置いて、叶わぬ未来のあだ情け。
なんてことは、考えていませんよ。
考えて、いません、いません、本当に、、、、ね。
ということで、これもまた、家に帰って、何度もお酒のアテに作っております。
どうぞ、お試しあれ。
んでもって、最後の4つ目。
これは、凡が発明したレシピであります。
「マヨしょうがトースト。」
そのレシピとは。
紅ショウガ、または、ピンクのすし屋のガリ。
それを小鉢に入れて、マヨネーズをたっぷり掛けて、かき回す。
それを、食パンをトーストして、バターを塗った、その上に、乗っける。
はい、完成。
(ショウガは、真っ赤なのでも、ピンク色のでも、どっちも美味しい。)
(マヨネーズと混ぜる)
(パンをトーストして、バターを塗って、マヨショウガを乗せる。このパンはちょっと焦げてしまったけどね。)
この紅ショウガは、焼きそばの端に添えられている真っ赤な紅しょうがでも良いし、スーパーで寿司を買った時に、付いて来るピンク色の甘酸っぱいショウガでも良いです。
形も、みじん切りでも、薄切りでも何でも良い。
真っ赤な紅ショウガの方が、インパクトはあるかもしれない。
それを混ぜてトーストしたパンに乗せるだけ。
簡単ですよね。
ショウガのサッパリとした風味と、マヨネーズの濃厚な味が、絶妙にマッチして、トーストがいくらでも食べれますよ。
まあ、どんな食材でも、マヨネーズを混ぜたら、何でも美味しくなるって言う説はあるけれどね、紅ショウガも、まあ、その1つということかな。
これもまた、お試しあれ。
ということで、凡の料理教室でありました。
こんなものは、多分、どこかで、誰かがやっていることだろうけれど、もし、まだ未経験なら、騙されたと思ってやってみてくださいね。
ただし、味の保証はいたしません。
だって、こんなの料理が好きな人にしたら、バカみたいな料理とも言えない代物だものね。
なんて、書いていると、あれ?ひょっとして、ラッキョポテサラに、紅ショウガを混ぜてもイケルんじゃないかと思いついた。
いつか、これも試してみようと思う。
ああ、それにしても、またどこかで、新しい味に出会いたいなあ。
どこか、遠い街で。
サラサラロングヘアーの白いニットのワンピースの片えくぼの女の子が悪戯っぽい笑顔で、、、
「ねえ、凡ちゃん。こんなの作ってみたの、食べてみてくれる?はい、お口開けて、あーーーん。」
なんてね、やっぱり、そっちに行っちゃうのね。
コメント
マグロの上にガリのっけて甘ダレですか?
けったいな兄ちゃんですね
自分はパスです
それにしても凡蔵さんが家の料理をアップするなんて珍しいですね
青唐醤油にらっきょポテサラ
きっと凄く美味しかったから再現されたんでしょうね
紅ショウガマヨをトーストに乗せて食べるのがお奨めなんですね
今度試してみます
ありがとう、yukemuriさん。
普段は、ほとんど料理はしないですからね。
まあ、このぐらいの簡単なものなら、作ってみようかと。
ただ、味は、庶民的な感じですよ。
特に、ショウガマヨネースのパン乗せなんて、駄菓子かっていうぐらいの味です。
旅先で出会った美味しい料理でも、それを再現するほどの腕が無いので、これぐらいでも、作ったって感じになって、アップしてしまいました。
それに比べて、yukemuriさんの再現は、本格的ですよね。
いつも、写真を見て、美味しそうだなあと思っています。