平 凡蔵。の 創作劇場

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散散歩歩。(1065)青森あたりから始める旅。(6)

6月7日(月曜日)。
今回の旅行の最終日。
今日は、もうただ大阪への帰路につくだけの日である。
まずは、仙台ビジネスホテルの朝食を頂きに、1階の食堂に行った。
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客は、1名ぐらいで、テーブルに座ると、スタッフの男性が、松花堂のお弁当を持って来てくれた。
豪華なものではないが、メインの白身魚は、ちゃんと調理したもので、それだけで、作る人のおもてなしの気持ちが伝わってくる。
いくらコロナ禍で値段を下げているとはいえ、1泊して、この朝食が付いて、税込み2900円とは破格の値段設定だろう。
美味しい朝ごはんを頂いて、部屋に戻って、今日の予定を考えるが、別にどうしようという計画も無い。
折角の旅の締めくくりだから、美味しい昼食でも食べて、んでもって、ビールでも飲んでやろうと思う。
お昼からビールなんて、贅沢な計画じゃないか。
ゆっくりホテルを出て、まずは、朝市なんてのをやっているみたいなので、覗いてみる。
とはいうものの、生ものを持って帰るのも面倒くさいので、買おうと思うものは無い。
お客は、それほどいなくて、やっぱり比べると、あの八戸の朝市は、すごかったなと思っていた。
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その後、仙台銀座で、美味しそうな麻婆豆腐のお店を見つけたので、まだランチ客の来ない11時頃に、再度、来店してビールでも飲もうかと、一応の予定を考えた。
そして、まだ時間があるので、大きな通りの商店街や、その路地である壱弐産横丁、文化横丁などを散策。
まだ時間が早いので路地の方は、大半のお店は閉まっていた。
或いは、昨夜に来たなら、楽しいお店を発見できたのかもしれない。
さて、そろそろ11時前になったので、例の麻婆豆腐屋さんに行ったら、店が閉まっている。
定休日だった。
なんで、あの時、確認しなかったのか。
仕方が無いので、また商店街などをウロウロ歩き回る
そして、路地の入口にあるお店を見つけた。
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笹屋さん。
麺類や定食を食べさせるお店のようで、入口にどんぶりとラーメンの日替わりセットの写真があって、なかなか美味しそうである。
店に入ると、客の入り様は、3分の1ぐらいか。
小さなテーブルに座って、先に見た日替わりの「笹屋のこぼれ丼」を、小ラーメンを付けて注文。
写真で見ると、食べられるかなと不安だったが、サーブされたのを見ると、思ったより小振りな丼なので、これは楽勝であろうと思った。
丼は、海鮮あんかけ丼となっていて、実に見た目が色とりどりで楽しく仕上げてある。
その理由は、具の種類が多いのである。
1つひとつの具を確認しながら食べ進む。
ああ、面白い。
食べ終わって、ふと見ると、斜め向かいのテーブルに、年配の男性がひとりお酒を飲んでいる。
凡も、ビールを飲むかと悩んだが、今の時間は、定食を食べさせることで回転を上げようと考えているだろうと、勝手に想像して注文するのを控えた。
しかし、斜め向かいの男性は、日本酒をまた追加したのである。
窺うと、少しばかり酔いも回っているようだ。
店のお姉さんに、大きめの声で、何かと話しかけている。
そこで、最後の締めにと注文した。
その注文した後に、その料理名に掛けたダジャレを言った。
時間が経つので、今となっては、その料理が何であったのか思いだせないが、小学生でも考えつくようなダジャレだ。
スタッフの女性は全員、それを聞いて無視している。
たぶん、客は常連で、いつもこんな調子なのだろう。
そんな雰囲気だ。
1分か2分か、やや時間があって、堪らず男性が言った。
「ねえ、ねえ、さっきのダジャレって解った?ねえ、ダジャレ言ったんやけど。ほら、〇〇やから、〇〇ってさ。」
(〇〇のところは、その料理名とダジャレだ。)
スタッフの女性は、頷いて「解りましたよ。」みたいなことを、軽く答える。
「そう、解ってくれた。いや、〇〇やから、〇〇ってな。ダジャレやってん。解ってた?そう、ダジャレやってん。解ってくれたんやね。」
ああ、憐れである。
自分が言ったダジャレやジョークを、相手に解ったかどうか確認するなんて、恥ずかしすぎるぞ。
さて、そろそろお会計をするかと思って、立ち上がろうとしたら、その男性の料理が運ばれてきた。
その若い女の子に、男性は言った。
「あのさ。これ〇〇やろ。せやから、さっきの〇〇って言ったんや。ダジャレやな、、、。」
とまた、さっきのダジャレの説明をしようとしている。
「オッチャン、その辺にしとき。悲しいことになってるで。」
そう、言ってあげたかったけど、言えなかった。
しかし、このオッチャンも、寂しいんだろうなと、しみじみと思う。
人間は、寂しいと感じている方が、弱者になってしまうものだ。
このお店の場合だって、寂しくて女性のスタッフに構って欲しいと思っているオッチャンの方が、圧倒的に弱者だ。
お店のお姉さんに、「きゃ、面白―い。」なんて、言って貰えることを期待して言ったのに、それを無視される。
ここで強者なら、無視されても、その反応を捨て置けばいいだけの話なのだが、弱者になってしまうと、それを確認せずにはいられなくなる。
自分の言ったダジャレというよりも、自分自身の存在が他者にとっても歓迎されるべきものであることを確認したくなる。
そこに、悲哀が生まれるのだ。
その気持ち、解るんだよね。
凡自身も、常に弱者であることに焦っているからだ。
しかし、これがダジャレぐらいなら、傷は浅いけれど、恋愛感情になると、さらに悲しいことになってしまう。
「みゆきさん、これケーキ買ってきたんだ。」
「、、、。」
「ねえ、聞いてくれてる?あれ、怒ってるの?」
と返事がないと、確認をしてしまうだろう。
「あ、そう。怒ってないのね。あのね、このケーキ、みゆきさんが好きなんじゃないかなって思ったから買ったんだ。」
「、、、。」
「あ、ひょっとして、このケーキ、好きじゃなかったかな。え?たまたまじゃないよ。わざわざ買ってきたんだよ。みゆきさんに喜んでもらおうと思ってね。ねえ、このケーキ、貰って嬉しい?ねえ、ケーキ、食べたかった?」
「、、、。」
「ケーキ、買ってきて良かったんだよね。嬉しいと思ってくれてるんだよね。じゃ、良かった。」
と、喜んでくれてるかどうかを確認してしまう。
「っていうかさ。みゆきさん、あんまり返事してくれないけど、凡のこと愛してくれてるよね。」
「、、、。」
と、堪らなくなって、最悪の質問をしてしまうに違いない。
どこまでいっても、凡は、弱者でしかいられないのである。
愛して貰えてないと思う方が、弱者になってしまう。
とはいうものの、みゆきさんとの関係なら、弱者でもなんでもいいんだよね。
ただ、そばに居られるならね。
「みゆきさん、凡の事好き?」
「いえ、大嫌いです。」
でも、大嫌いでも、救われる気がする。
「あなた、誰?」
なんて、言われるよりはね。
このお店のオッチャンは、常連のようだから、また明日も、このお店に行くのかもしれない。
そして、また「今の、ダジャレって解った?」って確認するのだろうか。
そう思うと、オッチャンを応援したい気もしないではないな。
さて、これからどうするかと思うも、帰路のピーチの時間も気になるし。
時間はまだ十分にあるのだけれど、これから、どこかの観光地へ行くという気持ちにもなれない。
そうだ、ビールを飲みたいな。
それなら、空港まで移動しやすいように、仙台駅まで行って、そこで飲もう。
仙台駅には、ちょっと飲むことのできるお店が入っている。
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駅まで行って店を探す。
どの店も、意外と混んでいる。
どこにするかと悩んでいたら、決めかねてしまって、とりあえず、1軒のお店に入って、ビールを飲む。
これで、まあ、ビールを飲みましたということしにておこうか。
IMG_7434.JPG(泡はいらないんだけれどなあ)
さて、早いけれど、空港に向かおう。
仙台空港鉄道があるので、アクセスは楽だ。
空港でチェックインして、やっぱりビールだなと、1軒のお店に入って、再度、ビールを注文。
それに合わせて、バラ焼き御膳の単品を注文した。
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甘辛い牛肉は、ビールが進む。
もう1杯もすぐに追加して、空港にいることを楽しんでいた。
店を出ると、そこに「とぶっちゃ!」という仙台空港エアポートミュージアムなる小さなコーナーがあったので入ると、飛行機のシュミレーターがあるじゃない。
こういうのは楽しいね。
でも、凡は機長にはなれそうにもない結果だった。
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さて、いよいよ帰路のピーチである。
1625時、仙台空港発。ピーチM136。
CAさんが出発の準備をしているのを、ちょこんとシートに座って見ている。
しかし、このCAさんと凡の関係も、強者と弱者だなと、つくづく思う。
何故か、CAさんを前にすると、小さくなってしまうのだ。
飛行機なんて、庶民が乗るものではなかった。
初めて乗ったのは、新婚旅行の時だっただろう。
CAさん=英語が喋れる。
凡=英語が喋れない。
CAさん=大企業。
凡=中小企業。
CAさん=美人。
凡=カッコ悪い。
何を取ってみても、凡が弱者なのである。
たまに、飛行機に乗って、CAさんに偉そうな口調で命令している人がいるが、どうやったら、ああいう風な感じでCAさんと喋れるのかと思う。
でもまあいいか。
何しろ飛行機なんて、特別な乗り物だから、有り難がって乗るのが丁度良い。
だから、CAさんも、有り難がって拝見するのが良いのである。
1800時、関西国際空港着。
運賃は、10900円だった。
ということで、今回は、東北を南下する旅でしたが、八戸ではピザ屋のピーマンさんのマスターにも会えたし、綺麗なお姉さんのオススメのうに弁当も食べたし、楽しい旅になりました。
最後まで、お付き合いくださいまして、ありがとうございました。

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