9月6日(日曜日)。
凡は、4日間の休みが出来たので、新潟にやってきた。
新潟へは、ピーチで、ひとっ飛びである。
とはいうものの、これから山形へ向かおうとしている。
この辺り、すでに迷走をしかけているのだが、新潟から山形、そして山形から新潟への移動を予定しているのであります。
1543、新潟駅発。白新線 村上行き。
列車に乗り込んで、今から山形へ行き、明日、山形から新潟へ戻って、フェリーに乗る段取りを考えていた。
「これはちょっと、、、、。。」
列車の時刻を考えて、ビックリした。
フェリーに、ゆっくり間に合うように山形を出るとなると、午前中に出なきゃいけない。
んでもって、少しだけで、山形を散策して新潟へ向かうと、新潟からタクシーでギリギリかというところだ。
山形から新潟へ向かう米坂線の本数を、甘く見ていた。
あまりにも本数が少ない。
後で、坂町駅の時刻表を見たら、1日に6本だった。
どうするか。
山形に行くんだから、みゆきさんの出身校、山形市立第6中学校に行ってみたい。
いわゆる聖地である。
とはいうものの、そこには、みゆきさんは、当然の事いない。
でも、折角に山形へ行ったなら、ちょこっとだけ行ってみたいじゃない。
ということで、山形で、少し散策することを優先した。
なので、アイフォンで、新潟、秋田間の新日本海フェリーの予約をキャンセルした。
キャンセル料発生は、仕方がない。
そして、今日のホテルを予約する。
楽天トラベルで、ゴーツーキャンペーン適用である。
1650、坂町駅着。
坂町のホームにいると、何かの機械に、ブルーのシートが掛けられていて、その横に「YAMAHA」の文字が見える。
何かは知らないけれど、街中で、いや、この場合、田舎でというべきか、ヤマハの文字を見かけると、妙に嬉しくなる。
しかし、この機械は、何なのだろう。
冬の雪かきとかに使う道具なのだろうか。
不明なまま、うれしくなって、写真を撮って、結局、何なのか解らないまま、また列車に乗り込んだ。
1712、坂町駅発。米坂線、米沢行き。
米坂線は、楽しい。
山々を遠くに望んで、広い田んぼが広がり、高圧線の電線が、空高く、どこか知らない山の向こうの村に続いている。
そんな風景があるかと思えば、山の中に線路が踏み分けて行く。
ふと気が付くと、その山の中に、住宅が見えたりするのである。
田舎の村が、何とも真面目な日常を感じさせてくれる。
働き場の無いように思えるこの村に住む人たちは、どうやって、たつきを立てているのだろうと考えるが、そんなの分らない。
でも、生活しているんだよね。
たぶん、米沢あたりに働きに行くのか、田んぼで稼いでいるのか。
川に沿って走る列車から、渓谷が見えた。
次の瞬間、鮮やかな色の鉄橋を発見する。
ああ、面白い路線である。
停車する無人駅も、趣があって良い。
その無人駅(簡易委託だそうですが)の越後下関駅に停車した時だ。
ふとホームを見ると、観光案内板が、誇らしげに立てられている。
無人駅の観光案内。
思わず目を凝らして見てみたしたが、どうも詳細は分からないのですが、何やら、モデルコース的な説明もある。
ここで、旅の達人なら、いや、達人でなくてもいいや、凡のように4日間、どこに行くとも考えずに出かけて来たものなら、ここで、キャリーを持って、すぐに降りてみるべきなのだろう。
そこで、思わぬ美人に巡りあるということもある。
いや、見渡す限り田んぼのようであるので、可能性は極めて少ないが、その美人が、サラサラロングヘアーのミニスカートであるということもあるかもしれない。
ひょっとするとだ、その美人と、鄙びた温泉旅館で1泊なんてこともね。
ここ越後下関には、温泉があるそうである。
知り合った美人は、湯上りの髪をアップにして、縁側の籐椅子に座っている。
お仕着せの色あせた浴衣が、汗の引かない身体に、しっとりと貼りつく。
団扇で、襟のところを扇ぐと、おくれ毛が、可愛く揺れた。
そんな温泉旅館で、月を見ながら、差し向かいで一盞なんてことも、、、。
ゼロに近い妄想であるけれども、そんな面白そうなことも、途中下車すれば見ることもできる。
「ねえ、凡ちゃん、あたしと死んでくれない?」
冗談ともつかないことを、口にする美人。
「、、、。」
「あたしね、実は、死ぬために、この地に来たのよ。」
「なんで、越後下関なの。」
「付き合ってた彼がね、ここの出身なのよ。あたしを、利用するだけ利用して、あたしの預金が無くなったら、それで、あっさりポイなのよ。」
「ひどい男だったんだね。」
「それでさ、あいつをこの世に産み落とした両親の家の前で自殺してやろうと思ったのよ。あいつは、あたしなんか死んでも、どうとも思わない男よ。でも、親に、あいつを生んだことを後悔させてやりたいの。」
「ふーん。」
「ねえ、ふーんって、まったく興味ないみたいね。ねえ、死んでくれるの、死なないの。どっち。」
「いいよ。死んでも。」
「本当なの。」
「ああ、でも、少し待ってくれないか。10年か、20年か、いや、もっとかな。」
「あたしのこと、バカにしてる。」
「いいや。凡には、ミニボンという奥さんがいるんだ。ミニボンが生きている間は、ダメだ。彼女の事が心配だからさ、先に死ねないよ。」
「ふーん。じゃ、凡ちゃんは、今、幸せなんだ。」
「そうかもしれないな。」
「いいよ。じゃ、待ってあげる。でも、本当に、あたしと死んでよ。10年先か、、、忘れちゃいそうだな。」
「気分を変えて、もう少し飲みませんか。」
「とことん飲んじゃう。」
美人は、酔いが回ると陽気になる酒癖なのだろう。
浴衣の裾をめくって、赤いパンツをチラチラと、お銚子を器用に頭のてっぺんに乗っけて、「あら、えっさっさー。」と踊りだす。
あんた、本当に死ぬ気だったのか?
うん、そっちの妄想の方が、楽しいかもね。
とはいうものの、どっちの妄想も、まあ可能性ゼロだけれどね。
朝起きると、横で寝ていたはずの布団に、彼女の姿は無く。
ただ、枕の上に、葉っぱが1枚。
あ、タヌキだったのか。
まあ、タヌキでも、美人なら騙されても楽しいのではあります。
田舎の妄想には、タヌキだって登場しちゃうのね。
とはいうものの、美人は無理でも、美味いまんじゅうぐらいには、巡り合うことは、これはあるかもだ。
それはきっと、旅のオマケに違いない。
とはいうものの、凡はそのまま、列車に揺られていた。
1915、米沢駅着。
駅から、米沢の街を見ると、あまり賑やかな感じはしない。
ただ、東横インが見えたので、ビジネス客なども、普段は多いのかもしれない。
向かいのホームに、駅弁のブースが見えたが、もう閉まっていた。
どっちにしたって、乗り換え時間が短いので、駅弁は買えない。
1920、米沢駅発。奥羽本線、山形行き。
米沢を出たら、日も暮れて真っ暗な中を、列車は走り続けた。
2013、山形駅着。
今日のホテルは、楽天で予約した。
リッチモンドホテル山形駅前さんだ。
(ホテルの窓から)
1泊朝食付きで、税込み 7000円。
ゴーツーキャンペーン適用で、2450円引きになり、最終、税込み 4550円。
焦って予約したせいか、喫煙で予約をいれてしまっていた。
それを、禁煙に変更してもらおうとしたら、研修生なのか、女の子が困っていた。
ごめんなさい。
部屋は、ゆったりとしていて、ストレスなく過ごせそうである。
なかなか、良い感じのホテルである。
さて、これから夜の山形を楽しみに行きましょう。
ホテルのさっきの研修の女の子に聞いていたお店に行ってみる。
飲食店などは、駅を挟んだ向こうがわに集中しているそうだ。
んでもって、向こう側に行くと、賑やかなのかと思ったら、駅前なのに、まったく車が走っていない。
結構、田舎なのかな。
教えて貰ったお店の前に行くと、明々とお店の看板が灯っている。
おお、雰囲気が良いじゃない。
で、店の前まで行くと、メニューが書かれている。
これもまた、よし。
格子戸になったドアから、奥を窺うと、カウンターに常連らしき年配の男性客が1名。
その後ろのテーブル席なのか、小上がりなのか、そこに主人が、グタリと腰かけている。
その店の疲れた感じに、ドアを開ける勇気が出なかった。
そういえば、メニューも、1品600円から700円といったところがメインか。
これにビール代を加えると、安いというイメージでもない。
ここで、ホテルの女の子の顔が浮かぶ。
研修で慣れないのに、郷土料理が美味しいとか、営業時間もすすんで調べてくれたりしてくれたんだよね。
あの努力に報いてあげたいけれど、やっぱり、止めよう。
店を後に歩き出した。
研修の女の子も、あれだけ熱心に勧めてくれると言う事は、、、まさか知り合いのお店じゃないだろうね。
それにしても、後から思うと、実に余裕がないね。
折角の、山形の夜だ。
ホテルの新人お姉さんのオススメに乗っかって、ここは思い切ってというか、アッサリと入ってみるべきだったんだよね。
それで、その店が、失敗だったら、店を出た後、「ああ、失敗したね。」と笑えばいい。
これもまた旅のオマケというものだ。
それを、この凡と来たら、たとえば、5000円を、晩御飯に使おうと思ったら、どうにかして、7000円分ぐらいの内容にならないかと思っちゃうんだよ。
2000円分ぐらいの得をしたいとね。
それか、店の店員さんに、優しくサービスして欲しいとかね。
我ながら、ミミッチイよね。
ひょっとしたらさ、今、店の中には、疲れた空気になっているけれども、凡が入って行ったらさ、奥から、サラサラロングヘアーのミニスカートの娘さんが出てくるかもしれないじゃない。
それか、さっきのホテルの新人お姉さんは、実は、この店の娘。
「あ、来てくれたんだ。」なんてさ、横に座ってくれて、「明日、休みだから、山形、案内して差し上げましょうか。」なんてね。
そんなこともあるかもだ。
、、、、まあ、可能性はゼロか。
でも、無くても、それはそれで面白い。
とはいうものの、その時は、そんな余裕もなく、別のお店を探しに歩き出した。
ぶらぶら歩いて、すずらん通りあたりを歩いてみる。
ここは、幾分、賑やかだ。
若者向けのオシャレなカフェや、バーもある。
大衆的な焼き鳥屋などもあって、このあたりの何処かへ入ろうかと思う。
もう少し行くと、七日町という場所もあって、そこも賑やからしいが、歩くのが面倒だし、時間も遅い。
と、ぶらぶら歩いてみたが、これと決められずに、また駅前近くまで、戻ってくる。
すると、あるビルの階段に、2階の店の案内板が出ていた。
北野水産というお店だ。
この何とか水産というお店は、大阪でも、また地方でも、よく見かける。
おそらく、地元の水産会社が経営しているお店なのだろうと想像するのだけれど、疑い深い凡は、本当に、水産会社が、その日に水揚げされた新鮮な魚を持って来て提供しているのだろうかと疑ってしまう。
ひょっとしたら、名前だけ水産と付けているのではないのかと。
なので、今まで、好んで店に入ったりすることは、あまり無かった。
でも、今、店の前の看板を見ると、伊勢エビ造り盛り合わせ500円、伊勢エビフライ690円とあるではないか。
凡は、伊勢エビを、ことさら珍重する気持ちはないのだけれど、何しろ、そこは高級食材の伊勢エビだ。
面白そうじゃない。
といことで、北野水産のある2階に上がった。
そこでちょっと、迷う。
靴を脱いで入るお店だったからだ。
なのだけれど、すぐにスタッフが来て、思いのほか丁寧に案内してくれたので、そのまま靴を脱いでカウンターに座った。
何とか水産という名前から想像するのは、威勢の良い兄ちゃんと、ちょっとヤンキーっぽい女の子だ。
でも、ここは接客が丁寧なので、落ち着ける。
まずは、名物の伊勢エビの造りと、伊勢エビのフライ。
それに、ホヤ焼きを注文。
すると、お通しの後に、ホヤを焼くコンロと一緒に、イカを持って来た。
あれ、イカは頼んでないのだけれどと思っていると、このイカは、カウンターに座った人のサービスだという。
これは、うれしいサービスである。
しかも、形だけのサービスじゃなくて、イカもちゃんとした1品だし、付いているレモンも厚く切られていて、マヨネーズも、たっぷり添えられている。
ちゃんと楽しんでもらおうという気持ちが伝わるサービスなんだな。
それを焼きながら、ビールを頂く。
カウンターを覗いたら、スタッフの方が、イカを食べ終わるころ、ホヤをお持ちしますと説明してくれた。
ホヤは、レアに焼いて食べてという。
新鮮なものだった。
それを食べ終わると、伊勢エビのフライ。
これもまた、タルタルソースとトンカツソースが、たっぷりと添えられている。
これが、うれしいんだな。
凡は、濃い味付けが好きだからね、何が悲しいっていって、添えられているソースとかの調味料が少ないのが嫌なんだ。
本当は、もっとソースをたっぷり付けたいのに、配分を考えて付けなきゃいけないなんて、寂しいんだよね。
素材の味を楽しむには、薄味だとか、調味料は少なめにだとか、そんなことを主張するお店や客もいるかもしれないが、凡は、そんな上品には慣れていない。
ソースも、マヨネーズも、たっぷりがいい。
伊勢エビフライには、味噌汁も付いていた。
そうだ、このお店では、凡が行った時は、地酒1杯100円という期間限定のフェアをしていた。
これも嬉しいじゃない。
なので、サバイバルとかビーチサイドとか言う、面白そうな名前の地酒を4杯ほど頂いた。
んでもって、いよいよ、伊勢エビの造りだ。
この辺りの順番が、面白い。
普通なら、造りが最初のような気がするけれども、スタッフも丁寧だし、値段も、メニューを見ると安いので、これが正解のような気もしてくるから不思議だ。
造りは、伊勢エビの他にも、3種類の刺身が盛り合されている。
ツマに刻み生姜というのも、さっぱりとして美味しい。
肝心の伊勢エビは、さすがに小振りだ。
大きさとしたら、ザリガニぐらいだろうか。
身も1口で食べ終わる。
でも、何と言っても伊勢エビなんだからね。
海老の王様だよ。
そんでもって、しょっつるピザというのを注文。
こういうのは、大阪では食べることが出来ないからね。
これもまた、塩味が効いていて美味しかったです。
(イカの胆を使った料理も食べた)
ということで、入店したのが、ラストオーダー1時間前ということで、やや駆け足で飲み食いしたのでありますが、想像以上に楽しく山形の夕食を頂きました。
お会計をしたら、端数切捨てで、ちょうど5000円だった。
6円のことだけれど、端数切捨ては、気持ちが良いね。
店を出たら、最後の締めにラーメンでも食べたいところだけれど、何しろ田舎、、、失礼、山形の23時だ。
深追いは止めて、コンビニで、あんパンと缶コーヒーを買って、ホテルで締める。
今日、思いついたことをメモしようと思ったが、1杯100円の地酒が効いたのか、気絶。
5時ごろ目が覚めたが、またウトウトしていた。
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