平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
どれも、すぐに読めちゃう短編なので、読んで頂けたら、うれしいです。

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散散歩歩。(1009)東北迷走の旅(1)

酔っぱらった頭でパソコンに向かう。
ゆらゆらと、上半身を揺らしながら、キーを打った。
ヤフーの検索画面で、「山形 不思議」「新潟 観光」など、そんなキーワードである。
明後日の、9月6日の日曜日から4日間、何故か連休が出来た。
新型コロナの政府の特別措置で、会社が、そのお金をもらうためには、従業員の休みを増やさなければならないためだという。
新型コロナという、忌まわしき存在ではあるが、休みに関しては、ややオマケが付いてきたようである。
そういえば、青春18きっぷが、あと1回分残っている。
これを使ってどこかへ行こうと思う。
凡の大好きな内田百閒さんは、「阿房列車」という紀行文を書いているが、その旅のモットーは、
「なんにも用事がないけれど、汽車に乗つて大阪へ行つて来ようと思ふ」
ということだ。
ただ、汽車に乗ることだけが目的なのである。
旅の理想だろうと思う。
思うけれども、それは凡には無理だ。
なので、1日1つだけ目的を作って旅をしようと思う。
その為の、ヤフー検索である。
とはいうものの、酔っぱらった頭では、何も決まらなかった。
ただ、関西から西は、台風が来ているので、そこは避けようと思う。
んでもって、前日である。
4日あるのだから、取り敢えず、どこかの土地へワープしてみよう。
ということで、ピーチで、新潟へ行く便を押さえた。
酔っぱらって、昨夜に調べた時は、5000円台だったのだけれど、前日は、そのお得なプランは選択できなくなっていて、結局、手数料など込みで、8610円になった。
とはいうものの、バリューピーチというプランなので、荷物も預けられるし、席も予約できるので、良しとするか。
んでもって、それと同時に押さえた予約がある。
新日本海フェリーである。
新日本海フェリーは、舞鶴や敦賀から、北海道の苫小牧や小樽へ航行する船である。
便によっては、途中に、新潟、秋田も経由する。
それなら、新潟へ行ったあとは、秋田に、このフェリーで移動するのも面白いかもしれないと思ったのだ。
新潟を、2230に出航して、秋田に、翌0505に到着する。
夜中なので、レストランや売店も閉まっている。
ただ寝るだけだ。
でも、移動も出来て、寝る事も出来て、お風呂も入れる。
それで、7700円(ツーリストSプラン)なら、まあ納得である。
(本当は、もっと安い雑魚寝のスペースもあるのだけれど、そこは満室だった。それと、相部屋の2段ベッドは、ちょっとシンドイ。)
ただし、初日の6日は、新潟、秋田の便は無く、翌日の予約を押さえた。
この辺りの判断が、この後、旅の余裕の無さの始まりだったのかもしれない。
ということで、兎に角、当日の朝であります。
京阪電車で京橋に移動。
0733発の関空快速に乗り込む。
この時点から、青春18きっぷを使用。
0853、関空着。
何か、旅のテンションを上げるものでも食べようかと、第1ターミナルを歩いてみるが、ガラガラで、店も時短で開いていない。
仕方なく、ピーチの第2ターミナルに移動。
ホットドッグを食べる。(500円)
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手荷物検査をして、搭乗口で待っていると、途中、機体が揺れるので、シートベルトのサインが点いたままになるかもしれないから、トイレは今のうちに行っておいてとアナウンスが入る。
1040、関空発。
やっぱり飛行機は、乗っているという、それだけで嬉しいですね。
台風の影響で、揺れるとアナウンスがあったけれども、結局、すごく安定していた。
1155、新潟空港着。
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なかなか、雰囲気の良い空港で散策でもしたかったけれども、バスの時間が、ちょうど良かったので、そのままバスに乗り込む。
んでもって、新潟駅に移動。
さて、ここで、これからの予定である。
今までの、行程の中で、考えていた。
山形へ行こう。
以前に、鶴岡市には行ったことがある。
でも、山形市には行ったことが無い。
山形は、何と言っても、みゆきさんの聖地もあるのだ。
聖地と言っても、数か月住んでただけなんだけれどね。
兎に角、行ったことが無い土地なので、行ってみたいのである。
それに、青春18きっぷを、京橋から関空まで使った。
これじゃ、元が取れないので、もう少し列車に乗りたかったというのある。
でも、その前に、折角だから、新潟も数時間だけ、観光をしよう。
まずは、観光案内所に行く。
んでもって、色々聞きたかった。
明日フェリーに乗るときの交通手段とか、新潟で行こうと思う會津八一記念館とかについてだ。
まあね、今まで、観光案内所の人には、毎回、色々質問をしてきたんだよね。
んでもって、想像以上に親切にしてきてもらったんだ。
あれは、今考えると、普通の対応じゃなかったんだよ。
特別に、親切にしてくれていたんだ。
今回、新潟で教えて貰おうと思った時に、そう感じた。
「あの、明日、フェリーに乗りたいのですが、行き方は、どうしたら良いですか。」
「バスがありますよ。」
「、、、、ありがとうございます。それで、そのバスは、どこから乗って、どこで降りたら良いですか。」
「バスに関しては、バスの案内所で聞いてください。」
「そうですか。すいません。バスの案内所は、どこにありますか。」
「駅の向こうです。」
「駅の向こうには、(連絡通路を知りたかったので)どこから行けばいいですか。」
「(駅の地図を見せて)ここです。」
「これが駅で、、、通路は、どこですか。(地図が、簡単すぎて解らないので)」
「指さして、ここです。」
そうだ、自分で探そう。
「あ、それから、會津八一記念館に行きたいのですが、今日はやってますか。」
「だいたい、記念館とかは、月曜日が休み多いんです。」
「すると、今日は、日曜日だから、やってるのかな。」
「調べますか。」
「(パンフレットを見て)あ、やってますね。」
「ありがとう。」
どうも、少し拍子抜けした感じ。
彼女の対応は、間違ったことは、何一つ言ってはいない。
理論的には、正確だ。
でも、凡が、知らないということを理解していれば、ここをこう行ったところに、バスの案内所があるので、そこで聞いてくださいと言えば、1言で終わる内容だ。
見た目も、感じも、悪い人じゃない。
これが素朴というものだろう。
んでもって、凡は、通路を通って、駅の向こう側に行った。
そして、バスの案内所の若い女の子に聞いた。
「明日、新日本海フェリーに乗りたいのだけれど、バスの時間を教えてください。」
そう言うと、1枚の時刻表を出してきて、凡に見せた。
「、、、、で、どれに乗れば良いですか。」
「フェリー乗り場は、末広橋のバス停から、歩いて15分ぐらいです。」
見せてもらった時刻表の、どこを見ても末広橋の名前がない。
「、、、、えーっと、末広橋ですか。、、、、どこかな。」
しばらく、若い女の子を前に、バス停を探していた。
すると女の子が言った。
「この時刻表は、バス停が省略されています。」
「それじゃ、その末広橋は、この時刻表の、省略された、どのあたりにあるバス停なんでしょうか。」
と聞くと、時刻表を裏返した。
そこには、路線図が書かれている。
それを見て、凡は末広橋を探した。
「、、、、えーっと、末広橋は、、、。」
「ここです。」と指さした。
彼女も、凡の質問に正確に答えている。
でも、何となく肩透かしな感じだ。
たぶん、これが普通の対応なんだろうなと、今までの、案内所の人に、改めてお礼を言いたい気分になった。
いや、ちょっと皮肉っぽく書いてしまったが、今回の案内所の方や、バスの案内所の女の子、色々、教えて頂いて、ありがとう。
それにしても、今回の凡は、何となく余裕がないと、凡自身思う。
こんな状況でも、これを楽しめば良かったと、今なら思う。
折角の東北の旅だ。
でも、凡に余裕がなかった。
先を急いでいたのかもしれない。
まだ、決まっていない目的地へ急いでいた。
それに、何でも人に頼ろうとする甘い考えを反省した。
今日の予定だって、2つだけだ。
その予定も、別に出来なくったって、構わない。
何しろ、予定の立てていない4日間なんだ。
ここで、案内所の人や、女の子と、ゆっくり会話を楽しむべきだったんだよね。
お姉さんに、お姉さんが普段通うお店だとかさ、そんな事を聞いても良かったし、バス停までの道順を聞くときに、冗談の1つも言えば良かった。
そう言えば、旅の達人を、もう1人思いだす。
「男はつらいよ」の寅さんである。
こんな時に、寅さんだったら、案内所の女性を、きっと笑わせたりしているんだろうな。
だいたい、寅さんは、旅先では、女の人にモテるんだよね。
あの寅さんを、もっと見習わなくちゃだ。
ああ、凡は、なんて、余裕が無いんだろうね。
さて、気を取り直して、山形には、JRで向かう予定なのだけれど、それまで、ミニ観光といきましょう。
新潟に来た目的は、2つある。
まあ、今回の目的は、1日に1つと言ったけれども、1つとオマケ1つということにしておこう。
1つは、バスカレーというものが食べたかったのです。
もう1つは、會津八一記念館だ。
まずは、バスカレー。
駅から歩いて行ける距離に、バスセンターがある。
ここで昔から店を構えているカレーや麺類を提供している立ち食いのお店がある。
新潟では有名なお店で、みんなは、バスカレーと呼んでいる人気店だ。
なのだけれど、ちょうどバスセンターが耐震工事中で、本来の店は営業していない。
その代わりに、向かいの万代シルバーホテルの3階の宴会スペースのようなところで、臨時営業しているという。
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ということで突撃。
3階のお店に行くと、券売機があって、入口の前には行列ができていた。
結構待つのかなと思ったら、すぐに案内されて、中は意外とゆったりとスペースをとっていて、入ると快適だ。
もちろん、立ち食い。
カレーは、見た目、黄色くて、昔ながらのカレーという感じだ。
甘口に見えるが、コショウ系の辛みもしっかりあって、美味しい。
ルーは、小麦粉の粘度が、やや強めに感じられた。
たまねぎや、福神漬けが、たっぷりなのも嬉しい。
途中で、ソースを掛けた。
これが、新潟流だと言う。
よし!
これで、今日の目的の半分は達成である。
まずは、安心。
そこで思った、新潟と言えば、もう1つご当地グルメがある。
「イタリアン」だ。
このイタリアンというのは、他の土地で食べる、或いは、想像するようなスパゲティではない。
簡単に言うと、ソース焼きそばの上に、ミートソースが掛かったものだ。
新潟では、「みかづき」さんというチェーン店で食べることが出来る。
アイフォンで調べると、バスセンターの中にお店があるようだ。
ということで、探して行ってみた。
見た目は、庶民的なファーストフード店という感じか。
ほぼ、満席状態だった。
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イタリアンは、掛けるソースの違いなど、バリエーションが、かなり多いけれども、初心者は、まず1番オーソドックスなイタリアン(350円)を注文。
それと、コーヒーフロート(230円)をプラスした。
さて、実際に食べてみると、縁日の屋台で食べるような感じの味付けで、これが嫌いな人はいないだろう。
たまに、食べたくなるのも解る気がした。
もうお腹いっぱいだ。
これから會津八一記念館に行こう。
バスセンターから歩いても、そう遠くない。
新潟日報メディアシップの5階にある。
以前にも、凡は、會津八一記念館に行ったことがある。
でも、その時は、海の近くにあったのではないかと思うのです。
なので、受け付けで聞いた見たら、その海の近くの記念館が、今の場所に移転したそうだ。
1つ謎が解けた。
記念館は、書を中心に展示されている。
凡は、書については、解らない。
字を書いてみたって、凡自身ですら解読不可能な字しか書けない。
字を観賞しようとしたって、何と書いてあるのか、知識が無くて読むことが出来ない。
でも、見るのは好きだ。
凡は、書家では、徳島に行った時に、小坂奇石さんという書家を知って、ああ、美しい字だなと感心したことがある。
でも、読めない。
とはいうものの、見ていて、美しいと感じるのである。
そして、いいなと思う。
詰まりは、文字の形が見せる美しさなのだろう。
會津八一さんの字も、見ていて、いいなと思う。
他の書家と字の形というか見た目が少し違う気もする。
普通の書家が書いた字は、読めない。
何が書いてあるのか、凡には解読できないのだ。
たとえ、ひらがなであってもね。
でも、不思議なことに、會津八一さんの字は、ひらがななどは特に、何故か読めてしまうのだ。
だから、余計に見ていて面白い。
何と言っても、字は伝えるためにあるんだ。
読めてこその字だものね。
説明書きを読んでいると、驚くことに、會津八一さんは、明朝体を手本に字を練習したそうだ。
スゴイね。
どんなものでも、そこに美しさのエッセンスを発見できるものなのですね。
そして、だらかこそ、見て通じる字なのかと、妙に納得をしたのであります。
ああ、凡も、美しい字を書きたいと切に感じた。
30年前に来て感銘を受けた「学規」は展示されていなかったが、今回また好きになった言葉ができた。
「苟日新日日新又日新」
(まことに、日に新たに日々新たに又日に新たなり)
学規の「日々真面目あるべし」に通じるものがある。
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そうだ、みゆきさんって、好きな言葉とかあるのかな。
お気に入りの本とかさ。
そんな事を知りたいものだ。
そうすれば、みゆきさんの考え方とか、そんなものに少し触れることが出来る気がする。
みゆきさんの絵本「もっぷでやんす」に出てくる「はろう」だろうか。
あれは、いいね。
ただ単なるハローじゃなくて、その奥に、相手を気遣う気持ちが潜んでいる気がする。
凡も、あの「はろう」を誰かに言ってあげたくなるよ。
大丈夫?みたいなね。
あ、そんな意味じゃないのかな。
みゆきさんの歌詞や詩や文章に書かれていることが、何を意味するのか、なんて考えるなんて、本来の凡らしくないね。
ああ、みゆきさんに会いたいな。
最近は、どうしているんだろうな。
寂しいよ。
いくら寂しく思っても、まあ、この新潟にはいないだろうからね。
さて、會津八一記念館の出口でパンフレットを買ったら、カラーコピーで作った手作りのものだった。
なんか、うれしかった。
駅に戻って、暑いのと、喉が渇いたのと、お札を両替したいのとで、生ビールを飲む。
サントリーのプレミアムだが、機械の洗浄が出来ていないのではと疑った。
嫌な雑味を強く感じた。
さて、これから山形へ向けて移動しよう。
山形美人に会えるのだろうか。
みゆきさんに会えないなら、みゆきさんのような人に会いたいな。
山形美人ではなく、みゆきさん美人に。

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