平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
どれも、すぐに読めちゃう短編なので、読んで頂けたら、うれしいです。

創作劇場は、ここをクリックしてください。⇒⇒⇒

散散歩歩(943)。青春18きっぷで、剣山ユダヤの秘宝旅(4)

8月5日(月曜日)。
青春18きっぷでの旅の2日目だ。
今日こそ、この旅の目的の剣山に登る日である。
徳島駅の近くのアパホテルを06時前にチェックアウト。
駅地下のセブンイレブンでサンドイッチを買って、改札を通る。
06時09分、徳島発。JR徳島線、阿波池田行き。
それにしても、兎に角、今は天気も晴れている。
どうか、このまま持ってくれと祈った。
天気予報では、台風が向かっていて、その影響が昼過ぎから、この四国にもでるらしい。
列車が、各駅に泊まると、ホームや線路に草が生えている。
凡は、こんな風景が好きだ。
そんな駅の1つひとつを窓から眺めながら、時間を過ごす。
IMG_9630.JPG
列車と公共のバスを使って剣山に行こうと思えば、今、凡が向かっている穴吹駅からバスに乗る方法と、阿波池田からバスに乗る方法がある。
徳島からなら、穴吹が近いし、路線が単純なので分かりやすい。
というか、1日1本なので、悩む必要がないのである。
しかし、この1本と言うのも、少し不安は残る。
バスがいっぱいで乗れなかったら、もうその日は剣山に行けないと言う事だ。
なので、もう1本後の列車でも間に合うのだが、念のため1本早い列車に乗った。
それに、駅に着いて、トイレに行きたくなったりしたら、時間に余裕がないと、これまた不安じゃない。
IMG_9632.JPG
07時14分、穴吹着。
IMG_9634.JPG
まず、駅員さんにキャリーケースを預かってもらう。
410円。
予め、預かってもらえることを調べていた。
有料とは言え、ありがたい。
んでもって、駅舎の隣のバス停を確認。
さて、後はすることが無い。
バスの時間まで1時間だ。
兎に角、トイレへ行っておこう。
ポットン便所だったが、毎朝、掃除されているようで、気持ちよく使わせていただく。
駅のベンチに座ると、天井の扇風機が涼しい。
この駅にしたって、すこし街中より標高が高いのだろうか、兎に角、田舎なので、普通より涼しく感じる。
IMG_9637.JPG(どこか懐かしい駅舎)
駅の前に、和菓子屋さんがあったので、名物の「ぶどう饅頭」というのを1本だけ買って食べてみる。
原材料を見てみると、ぶどうは入っていないけれども、見た目が、ぶどうということだろう。
そういえば、可愛い見た目だ。
IMG_9645.JPG
通学の時間のため、女子高生が集まってくる。
田舎だと思っていたが、意外と利用客は多いのかもしれない。
そんな朝の風景を眺めながら、待つこと1時間。
駅の横のバス停に、マイクロバスが到着した。
乗れないのではと心配していたが、何のことは無い、乗客は凡だけだった。
08時20分、美馬市営バス 穴吹駅発。
IMG_9646.JPG
進行方向に向かって左側は、日差しは強いが景色が良いというので、左側の1番前に座る。
運転手さんは、話好きというか、親切な方で、道中いろいろお話をしてくださった。
バスは、穴吹川に沿った道を山の中に向かって走ってゆく。
穴吹川は、水も綺麗で、今頃の休日は、水遊びの人で渋滞が起きるほどだそうだ。
途中、かなり道が狭いところもあって、1車両通れるかどうかというところも進んで行く。
そんな道を進んで行くと、ワクワク感も増してくるのである。
「この右が三木家。」と運転手さんが言った。
途中下車できるなら、寄り道をしたいところだけれど、兎に角、剣山に行くバスは、この1本のみだ。
この三木家と言うのは、昔から天皇陛下が即位した年に行われる大嘗祭の時に、献上される「麁服(あらたえ)」を作ってきた家だ。
あらたえとは、麻で織った布の事で、その材料の麻を、この三木家が大嘗祭の時にのみ作る役目をしている。
麻とはいうが、実際は、大麻だ。
今年は、まさに天皇陛下が即位されて、つまり大嘗祭のある年であって、ちょうどその麻を植える行事も行われたので、普段は見学もできるそうですが、今は見学不可だそう。
新しい天皇陛下の即位が決まってからタネをまいて、住民のボランティアで、24時間体制で育てたというような話を、運転手さんから聞きながら、その三木家の横の道を通り過ぎる。
しかし、この徳島の山の中で、そんな大事な麻を作っているとは、これはまた、剣山という山に、何か知られていない歴史が隠れているのかもしれない。
この三木家は、阿波忌部族の直系だそうで、このあたりも、歴史好きには堪らない話だろう。
道を進むにつれて、こんなところは、車が無ければ住めないなと、ペーパードライバーの凡が思っていると、運転手さんが、道沿いに家はあるけれども、住んでいる人は少ないという。
しかも、穴吹川の向こう側に見える山の中腹に建つ家なんて、どうするの。
もう年寄りばかりだし、病院に行くにしたって、バス停まで歩けない。
と、思っていると、コミュニティバスというのがあって、3日前までに予約をすると、バスが家の前まで迎えに来てくれそうだ。
成る程と納得した。
そんな話をしていると、バスの利用者数の話になって、多い時は4、5人の時もあるけれども、ゼロの時もあると言う。
そして、次に言った言葉に、凡は思わず、腰を浮かして運転手さんに、話の続きを求めた。
一昨日だったか、そのバスに乗り込んだのは、1人だったそうだ。
しかも、なんと、若い女の子のひとり旅。
「ほれ、見てみろ。」
いや、この「ほれ、見てみろ。」と言ったのは、誰に対してでもない、んでもって、誰の意見に対してでもない、凡に向けた、凡のこころの呟きだ。
この女の子は、場所は忘れたが、関東から、わざわざ、この剣山に来たそうだ。
いるんだね。
いや、実際にいたんだ。
世の中には、こんな徳島県の美馬市という場所の、しかも、路線バスを乗り継がなきゃ行けない、行くには不便なところにも、行ってみようとする若くて可愛い女の子が。
いや、若い女の子というのは、バスの運転手さんに聞いた事実だが、可愛いというのは凡の勝手な妄想で付け加えた修飾語ではありますが、きっと可愛いに違いないと思うのであります。
というか、そうであってほしい。
どんな女の子なのだろうね。
本格的な登山が好きな女の子だろうか。
それは、ちょっと付き合うには難しいな。
山が好きだと言う女の子は、何かしっかりとした芯を持っている気がするな。
山を登るのは楽しいよ。
頂上に到達したときの高揚感と、そこから見渡す景色は、素晴らしいものだろう。
でも、山登りの服装という、およそファッションとしては女の子らしくない服装をして、汗をかきながら、ただ、ひたすら山道を登っていく。
そんな女の子が選ぶのは、ちゃんと目標を持って進むことを苦にしない男に違いない。
凡の様に、ヘナヘナで、優柔不断で、すぐに目標への道を、ツライという理由で投げてしまう男に魅力を感じることは無いだろう。
やっぱり無理だ。
とはいうものの、運転手さんの情報によると、剣山以外にも、四国を観光して帰るという話もしたということなので、本格的な登山が好きな女性ということでもなさそうだ。
関東から、わざわざ剣山に来るっていうのは、やっぱり剣山に興味を持っているからだろう。
ということは、凡と同じ興味でもって、やってきた可能性は、思ったより高いのかもしれない。
詰まりは、ムー民。
雑誌ムーを毎月読んでいる女の子だ。
「あー。一昨日来てたらなあ。」
思わず、口をへの字にして、悔しがってしまった。
剣山に、ユダヤの三種の神器があるかもしれないとやってくるような変わった女の子なら、凡とだって話をしてくれるかもしれない。
バスに乗った瞬間、凡のピンク色のトートバッグに気が付いて、面白がってくれたかもしれない。
凡のトートバッグには、フリーメイソンのアップリケと、666の数字のアップリケを付けてある。
ミニボンに作ってもらったものだ。
嬉しがって作って貰ったが、それを持って出歩いても、未だかつて1度も、そのことを指摘してくれた人はいない。
「あ、そのバッグ、面白ーい。」
なんてね、そんな言葉から始まる出会い。
IMG_9326.JPG(ミニボンに作ってもらったフリーメイソンと666のアップリケのトートバッグ)
足は、山に登るんだから、まあ、スニーカーだろうね。
でも、山の知識がないからスカートなんか履いちゃってるわけだ。
しかも、ミニスカート。
素材は、ジーンズかな。
上は、Tシャツに、パワーストーンのネックレス。
そんな、女の子だったら最高じゃないか。
「ねえ、この岩の下にも、何か埋められてるかもしれないよ。」なんてさ、そんな話をしながら剣山に登る。
「一昨日来たら、最高の出会いがあったのに、、、、。」
凡は、への字のまま、下唇をグイッと前に出して、気が付いたら、膝がしらを何度もゲンコツで叩いて悔しがっていた。
しかし、今日のバスの乗客は、凡だけだ。
親切な運転手さんと、お話するしかない。
とはいうものの、地元の話を沢山聞かせていただいて、すこぶる楽しいバス旅になったのではあります。
09時34分、滝の宮のバス停に到着。
穴吹駅から滝の宮まで、1440円。
ここで、次のバスに乗り換えだ。
IMG_9655.JPG(向こう側が、今まで乗っていたバス。手前が、これからのるバン)
09時50分、滝の宮バス停発。
普通は、大きめのバスが運行しているらしいのだが、凡が行った時は、バスが調子が悪いということで、バンでの移動となった。
とはいうものの、乗客は、凡だけなので、ゆったりと乗っていられる。
前のバスも、これからのバスも、路線バスなので途中にバス停はあるものの、誰一人乗ってくる人がいない。
今度の運転手さんも、話が好きな方で、途中、いろいろお話をお聞きしながら、さらに山の道を進んで行く。
道を見ていると、どんどん山の中に入っていくのが解る。
道の状態もあり、また時間調節もあって、バンは、20キロぐらいの遅いスピードで進んで行った。
かなり上まで来た時に、ふと木々の隙間が出来て、そこから凡と同じ高さの山々と、下に広がる谷が見えた。
随分と、山の上まで上って来たなと思うと同時に、これから行くところは、どんなところなのかと、期待と不安も高まってくる。
上に行くにしたがって、道も狭くなり、ガードレールはあるものの、その横は、急な斜面で、高所恐怖症の凡には、いささか、ゾクゾクとする怖さを感じた
IMG_9664.JPG(上手くは撮れないが、山の中という景色)
10時45分、見ノ越のバス停に到着。
滝の宮から見ノ越まで、1020円。
IMG_9666.JPG(見ノ越の駐車場。ここからリフトが出ている)
ここから剣山の西島駅というところまでリフトが出ている。
車でやってくる人も、ここの駐車場に止めて、簡単に登ろうと言う人は、リフトを利用する。
さて、いよいよ剣山だ。
その前に、駐車場のちょっと下にある剣神社に参拝していこう。
IMG_9669 - コピー.JPG

コメント

タイトルとURLをコピーしました