平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
どれも、すぐに読めちゃう短編なので、読んで頂けたら、うれしいです。

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散散歩歩。(605)凡凡列車(5)

凡凡列車の3日目。
ホテルイマルカ八戸で迎えた朝。
昨夜、チェックインの時に朝食を頼んでいた。
600円だったか。
魚の焼いたのがメインの典型的な旅館の朝ごはんでボリュームも十分。
2階の食堂に行くと、他に1人だけ客がいた。

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昨日までの目的だったキリストの墓を断念したのだけれど、八戸という場所は初めてなので、今日は半日程度の観光をすることにして、夕方青森まで移動しようと思う。
まずは、チェックアウトをして、本八戸の中心街へ歩いていき、「はっち」という観光などの情報発信基地のようなビルに行った。
ここで無料のコインロッカーに荷物を預ける。
八戸は、この中心街からバスがいろんな方面に出ていて、それを使って観光をするプランなど、なかなか観光客に楽しんでもらおうという試みも熱心なようで、「わくわくバスパック」という冊子を凡は貰ったのですが、この冊子は良く出来ています。
そこに書かれている「是川縄文館バスパック」というコースを試してみよう。
まずは、「はっち」でチケットを購入。
これはバスチケットと縄文館の入場チケットがセットになっていて400円。
後は路線バスを利用して自分で回るのである。

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バスは各バス停を回って縄文館の前まで行ってくれる。
そこで降りて中に入ると、受付の人がボランティアで説明をやっているけれど、どうですかと勧められた。
とはいうものの、凡は1人である。
そんな1人に対してボランティアの人が説明して回ってくれるなんて申し訳ないと思ったが、でも折角言ってくれているのでお願いすることにした。
現れたボランティアの人は65歳ぐらいだろうか男性の方です。
まず、展示物を見る前に説明したいことがあると、その方は階段を下りてあるパネルの前に凡を連れて行った。
そして質問をされたのです。
「縄文時代と言ったら、今から何年前の頃だと思いますか。」
凡は答えられなかった。
知識がなかったからだ。
「紀元前3000年ぐらい、、、。」
と何か答えなきゃいけないと思って言った。
するとボランティアの方はパネルを指して紀元前13000年前ぐらいから紀元前3000年ぐらいだと説明をした。
実に縄文時代だけで10000年あるんですね。
凡はその長さに驚いた。
青森は縄文時代の遺跡が多く、この是川縄文館は縄文時代でも晩期のものを中心に展示しているらしい。
しかも、青森と言う土地は、掘ればまだまだ遺跡が出てくるという。
面白いですね。
もっともっと掘り返してほしいと思うのは、そこに住んでいないからなのかもしれないが、きっと八戸の人も実は掘り返したい人がいるのじゃないかな。
そして、展示場の中の土器や道具などについて説明をしてくださるのですが、縄文時代の物を作る技術の高さや、デザインの豊かさにすごく興味を抱いたのであります。
縄文時代と言うと、岡本太郎さんが絶賛した火焔土器や名前の元となった縄の目のデザイン、そして竪穴住居ぐらいしか思い浮かばないが、そこに陳列されている物や、遺跡の再現された状態の展示から、いかに縄文時代の人の考え方が豊かで、生活も助け合いの精神があったのかということが感じられのである
今まで貝塚や使用済みの土器とかが発見されたゴミ捨て場と呼ばれる場所も、この縄文館では、物に感謝するという縄文人のこころとつなげて説明をされていた。
とにもかくにも、凡はこの縄文館を見て、縄文時代というものにすごく興味を持ちました。
もっと知りたいと感じたし、もっと知っていこうと思う。
そんでもって、不思議つながりでいうと、遮光器土偶も陳列されていて、本物を見ることができてうれしかった。
何故なら、遮光器土偶は宇宙人がモデルではないかという説もあるんです。
不思議大好き中年は、いろいろ想像を膨らませて嬉しくなっちゃうのでありました。
1時間20分ぐらいだろうか、急ぎ足のボランティアの方の説明を聞いて回ったが、まだまだ時間が足りないというかんじで、また来たいと思いながら、ギリギリまで話をしていて、来たバスに飛び乗った。

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(観光案内所にあった合掌土偶。本物は国宝だ。)
バスは八戸中心街バスターミナルまで戻る。
さて、もう1か所ぐらい行きたいけれどと考えていたのですが、この中心街にある「はっち」で紹介されていた「種差海岸」(たねさしかいがん)も面白そうだ。
白い砂浜があり、ごつごつとした岩場があり、その風景は作家の佐藤春夫さんや井伏鱒二さん、画家の東山魁夷さんなど、多くの人が褒めたたえている場所である。
作家の司馬遼太郎さんは、「どこかの天体から人がきて地球の美しさを教えてやらねばならないはめになったとき、一番にこの種差海岸に案内してやろうとおもったりした。」とおっしゃってられるそうである。
これは見てみたいではありませんか。
中心街から歩いて本八戸駅まで行く
その途中に、これは「本八戸本通りまちづくり促進協議会」というところがやっている試みのようですが、お店の窓や入口など、また個人の家などに、そのお店のことや、個人的なこと、街の案内など、一言を吹き出しにして書いたシールを貼ってあるのです。

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(道案内も吹き出し)
これは面白い企画だと思う。
歩きながら、ついつい読んでしまう。
そして、思わず吹き出してしまう。
何となく、知らないお店の知らない人だけれど、そのお店や人を好きになってしまうような内容なんです。
これって、もっともっと広げて行ったら、地域の活性化にきっとつながると思うし、これを全国で展開しても面白いんじゃないかなと思う。
そんな吹き出しシールを見ながら本八戸駅まで来て、八戸線に乗る。
愛称はうみねこレール八戸市内線というそうだ。
海岸にはウミネコが沢山いるのだけれど、電車からというかディーゼルなので「電」ではないのだけれど、電車の窓から飛んでいるのが見えて楽しい。
種差海岸駅まで行って、そこで降りた。
海岸まで歩いて行くと、天然芝の海岸が広がる。
少しばかり強い風が吹いてくるが、気持ちがいい。
そこにインフォメーションセンターがあるので入ってみる。
建物は新しいが人はいない。
「サバまん」というのがあったから食べてみた。
サバを使った肉まんだ。

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少し待って出てきたものは、今風なクラフトな感じの袋に入ってサバのスタンプが押してある。
若い人の企画だろうなと思う。
あらかじめ4つに切れ目が入ったのを割って1つを口に入れる。
周りは肉まんの生地のようなもので、その中にアンが入っているのだが、これが周りの生地とバラバラに分離してしまって、食べ難いこと甚だしい。
結局、生地とアンを別々に食べることになるのだけれど、そのアンがまたどうだか。
アンの真ん中はサバを使ったものだろうけれど、サバのインパクトはない。
そのサバのアンの周りを何かの練り物で覆ってある。
詰まりは、サバのアン、かまぼこ、肉まんの生地という3層構造になっている。
結構大きさがあるので、不本意な満腹状態となってしまった。
さて、電車の時間から考えて1時間ぐらい散歩できそうだ。
海岸へ歩いて行って、天然芝から左回りに岩場の遊歩道を進んでいこうと思う。
それで時間の半分頃まで歩いたら駅に引き返そう。
岩場に入ると、その景観は素晴らしく、何度もアイフォンのシャッターを切るのだけれど、どうにも目の前に広がっている景色のようには映らない。

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(何枚も撮ったけれど、本物の素晴らしさが撮れないんですよね。)
それにしても、人がいない。
1度だけ反対側から2人組が歩いて来てすれ違ったが、凡の前にも凡の後ろにも人がいないのである。
何度も、何度も、足を止めて風景の変化を愉しむ。
海に向かうと波が打ち寄せる。
大きな岩にぶつかる波。
小さな岩にぶつかる波。
遠くの岩にぶつかる波。
近くの波にぶつかる波。
右の方にある岩にぶつかる波
左の方にある岩にぶつかる波。
それらのすべての岩から、波がぶつかる音が聞こえてくる。
ザザーン。ザザーン。
遠くから、近くから、右から、左から、大パノラマで聞こえてくるのである。
そんな音に聞き入っていると、頭のてっぺんからシャーという音が降ってきた。
松林に当たった風の音だ。
すると時折、ウミネコの鳴き声がする。
怖い。
凡は、誰もいない曲がりくねった海岸線の松林の陰から、海から打ち寄せる波が岩にぶつかる様を見ていると、言い知れぬ怖さを感じた。
自然が作り出す音や空気の流れに、そして松林の陰の岩の後ろに、日常にはない異界への入口を見てしまう。
ふと遊歩道から違った方向に足を踏み出すことで、違う世界に迷いこんでしまうんじゃないかという恐怖。
誰もいない恐怖。
もし凡がここで行方不明になってしまっても、誰も気が付きはしない。
いなくなってしまうことが日常とさえ感じる湿った空気感。
歩道に落ちた松の葉の上を、ぬめぬめと滑る感触を気持ち悪く感じながら足が速くなる。
ただ、その風景があまりにも美しいので、その風景は見たいのである。
遊歩道が海岸に沿って曲がり、上り、下がっていくので、その見えない先にどんな風景があるのだろうと気になって先に進んでいってしまう
そうやって歩いていると時間の半分が過ぎた。
回れ右をやって駅に引き返す。
天然芝の砂浜まで出たら、急に恐怖感が消えて、晴れ晴れとした気持ちになった。
種差海岸駅から本八戸駅まで引き返して、中心街まで戻る。
荷物をコインロッカーに預けているからだ。
お腹も減ったので、さくら野百貨店の食堂で、かつとじ定食1120円を食べてから、本八戸駅まで引き返した。

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さて、今日は青森の駅前にホテルを予約した。
これから青森に向かおう。

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sansanpopo@tairabonzou.jp
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コメント

  1. ゆけむり より:

    え~と、この日で3日目ですよね
    この後青森から青函トンネルを使って北海道に上陸するのかな?
    なんだか楽しみです
    結論はブログで拝見しますが、恐らく帰りは飛行機なのでしょうかね?
    北海道ではどこで途中下車したのかな?
    なんて、人の旅を想像するのも楽しいですね(自分だったらこうしようとか、なるほどとかって思えるしね)
    自分は電車でのんびりした旅って経験がありませんが、なかなか楽しそうですね
    早く続きが見たいです

  2. 凡蔵。 より:

    ありがとう、ゆけむりさん。
    さすが、ゆけむりさん。
    ご名答です。
    この後は、在来線で乗る最後の(といっても25日が最後なんですけれど)青函トンネルで北海道に上陸です。
    そんでもって、北海道で青春18きっぷの5枚を使い切って、あとは千歳から飛行機で大阪に帰ります。
    さすがに、帰りも普通電車というのは、疲れますもんね。
    それに、23日に奥さんと旅行する予定があったので、20日には帰ろうという予定だったんです。
    のんびりと途中下車と行きたいのですが、何しろ移動が普通電車だけなので、移動に時間がとられて、途中で寄り道する時間がないので、のんびりした旅なのか、のんびりしていないのか分からない旅んですよ。

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