平 凡蔵。の 創作劇場

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散散歩歩。(601)凡凡列車。(1)

旅に出ようと思う。
そう書き出して、いささか旅という言葉の大袈裟さに微苦笑してしまう。
それなら旅行と言い換えてもいいのだけれど、それも同じだ。
むしろ旅行と言った方が、その言葉の意味が限定されてしまう。
家族旅行や修学旅行、或いは九州旅行など、そこに計画性を感じるので、凡の今の気持ちからいうならチト違う。
旅とはAという地点からBという地点まで移動することである。
そして、その移動は、ほとんどの場合、最終的にAまで戻ってくる。
戻らないのは、死出の旅路ぐらいだ。
凡は、こうやってこのブログを書いているということは、今回の移動は死出の旅路ではなかったということである。
単に移動が旅と解釈するなら、近所のスーパーに行くことも旅だ。
でも、それを旅とは一般的には言わない。
日常の移動は旅じゃない。
ただ、永六輔さんは「知らない横道を曲がるとそれはもう旅だ」(言葉の細かいところは違っているかもしれませんが、こんなかんじの言葉。)ということをおっしゃったことがある。
それなら、近所のスーパーもいつもと違う道を歩けば旅になる。
何が違うかというと「好奇心」である。
あの曲がり角を曲がったら、何があるのだろう、どんな風景なのだろうという気持ち。
面白いことがあるのじゃないかという期待。
これをもっと進めて言うなら、毎日歩いている同じ道でも好奇心をもって歩けば旅になるのかもしれない。
そう考えると、幾分か気が楽になった。
なら、改めて言おう。
旅に出ようと思う。
そう考えるきっかけとなったのは、JRが発売している「青春18きっぷ」だ。。
この切符は、国内のJRの快速を含む普通電車に自由に乗り降りできるものであって、5回分、或いは5名分が1枚になったものだ。
1枚の切符にスタンプを押すところが5か所あって、その日に1番最初に乗る駅でスタンプを押してもらったら、その日1日はそのスタンプを見せると自由に普通電車に乗れる。
同一行動なら複数人で使用することもできるが、今回は凡1人だ。
いつもは金券ショップで2日分残った使いさしを買ってきて、1泊2日で旅行を楽しんできた。
休みが取れないので1泊がいいところなのだ。
でも、今は時間があるので1度5日間全部を使ってみようと思ったのです。
出発は3月の13日の日曜日だ。
行き先は、今までは帰路のことを考えて中国地方や四国など、東なら東京あたりまでが多かった。
でも、今回は北を目指そう。
出来るなら、北海道まで行って見たい。
そんな思い付きで、出発したのであります。
持っていくのはスーツケースと、横道を曲がる小さな好奇心である。
何故行きたいかということを考えると、理由はない。
どこへ行きたいかというと、漠然としかイメージできない。
目的はと問われれば、これから理屈を作るしかない。
旅の予定は、極めて曖昧だ。
説明するのも面倒だから、人に聞かれたら電車に乗りたいからとでも答えることにした。
内田百閒さんは、「阿房列車」という旅の随筆を書かれている。
用事がないのに出かける旅を、そう言っているですが、今回の凡の列車は、何もかもが曖昧でボンヤリとした旅である。
旅に出なくてもボンヤリとしている凡なのでありますから、旅に出て列車に揺られでもしたら、さらにウトウトと睡魔に襲われてボンヤリとしてしまうだろう。
とすれば、阿房列車ならぬ、居眠り列車の「愚う愚う列車」とでもいきたいところだ。
とはいうものの、どうしようもない愚人である凡ではありますが、百閒さんの「阿房」に対して、凡は「愚」といってしまうのでは、いささか「愚」の荷が重い。
そこまで、開き直った「愚」ではないのでありますから、今回はもうチト控えめに「凡凡列車」と行きましょうか。
さて、3月の13日だ。
朝の7時前に家を出る。
目的もないのに、いやに早いなと思われるかもしれませんが、1日目は少しばかり距離を稼ぎたい。
京阪電車の京橋でJRに乗り換える。
ここから青春18きっぷ使い切りの旅が始る。
改札口で切符に1日目のスタンプを押してもらった。
大阪駅まで出て、7時30分発の新快速に乗り込む。
日曜日なのだけれど、乗客は満員だった。
ドアの近くで立ったまま京都まで移動する。
京都で乗客も大勢降りたので、ここで席につくことができた。
そこでゆっくりとアイフォンを取り出して、ヤフーの路線情報で東京までの行き方を検索してみる。
そして、それをノートに書き留めた。
それにしても、便利になったものだとアイフォンの画面の手の脂のあとを拭きながら思った。
今までだったら、時刻表を開いて電車の時間を確認して、そのページに指を挟んだまま、更にその電車に接続しているページを開いて、そこに指を挟み、更にその電車に接続しているページを開いてなんて、そんなことをしていた。
ただ、それが楽しかった

しかも、線路は1本じゃない。
詰まりは目的地には幾通りもの行き方の組み合わせがあるものだから、何度も何度も指を挟んで調べなきゃいけなかった。
しかも目的地が決まっていなかったりしたら、そんな時刻表とのニラメッコで時間を費やしてしまって、せっかくの車窓の景色を見てなかったなんてことも出てくることもあるのでありまして、何をしているのだか。
そんなことも含めて楽しいのではありますが、ネットでの検索は、一応の目安があるぶん安心材料となるのでありまして、ここからポケット版の時刻表で凡なりのアレンジが生まれるのであります。
8時55分米原着。
ここで乗り換え時間が19分ある。
トイレを済ませて、朝食でもとろう。
ここは青春18きっぷの旅行者を気取って、ホームのベンチでパンと缶コーヒーで済ませた。
9時14分米原発の特別快速。
名古屋で小倉トーストのモーニングでも食べたいところだけれど、ここはやりすごす。
11時24分豊橋着。
ここでは18分の乗り換え待ちである。
改札口まで上がると駅弁を売っていた。
旅の気分を味わうためにも買ってみるのも悪くない。

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(壷屋弁当部の幕ノ内)
イナリ寿司が押しのようなのだけれど、幕ノ内を購入。780円。
次に乗る電車がどんなシートなのかも分からないので、ホームで弁当を開けた。
真ん中に小さな甘く煮た揚げが入っているのを見ると、やはりイナリ押しなのだろう。
揚げもの、焼きもの、揚げを煮物とするなら、とりあえずは一応のものが揃っているし、おかずの割合も多めでいい。
ただ、ご飯がやや硬くて残念だった。
後で知ったのだけれど、ここ豊橋には豊橋稲荷というお寺があるそうです。
お稲荷さんというと神社を思い浮かべるのですが、ダキニシンテンという神様をお祀りするお寺だそうです。
なので、イナリつながりでイナリ寿司押しということらしい。
ホームで食べようと思って開いたが、意外と早めに次の電車が入ってきた。
しかも、ロマンスシートだったので、急いで弁当をもって電車に乗り込んだ。
11時42分、豊橋発。
浜松へ向かう。

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sansanpopo@tairabonzou.jp
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コメント

  1. ゆけむり より:

    北海道まで足を延ばされたとの事なので、あらためて最初っから見させていただきました
    そうしたら北の方まで、できたら北海道まで行きたいと書いてありましたね
    うっかり見逃していました
    「持っていくのはスーツケースと、横道を曲がる小さな好奇心」>良いですねこのセリフ、旅の達人みたいです
    それはそうと青春18切符で旅とは羨ましいですね
    詳しい使い方は知らなかったのですが、なかなか楽しそうですね
    なんだか自分が旅に出るような期待と高潮感を感じます

  2. 凡蔵。 より:

    ありがとう、ゆけむりさん。
    そうなんですよ。
    私も、ゆけむりさんのブログを拝見してビックリです。
    時期的にも同じような時だし。
    ゆけむりさんは釧路まで行かれてたんですよね。
    私は、帯広までいきました。
    道端に残っている雪の写真を見て、北海道を思い出しました。
    でも、青春18きっぷは、時間がかかりますもんね。
    私も、今までだったら行けなかったです。

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