平 凡蔵。の 創作劇場

恋愛ストーリーや、コメディタッチのストーリー、色んなストーリーがあります。
どれも、すぐに読めちゃう短編なので、読んで頂けたら、うれしいです。

創作劇場は、ここをクリックしてください。⇒⇒⇒

散散歩歩。(373)どこかへ行ってきてと言われて出かけた金沢の旅(4)

冤罪。
濡れ衣を着せられるということが、誰にでも簡単に身近に起こりうることなんだということを実感した。
皆さんは、やってもいない犯罪の濡れ衣を着せられたことがあるだろうか。
凡の知っている人は、地下鉄に乗る時は両手を上にあげて乗るそうです。
痴漢に間違われないようにね。
そう言う風に考える気持ちは解るよね。
凡も、混んでいる電車に乗る時は、周りの人と等間隔になるように立つ。
それでも、周りの人と接触してしまうことがあるけれども、それが女性だったら、その分よけいに距離を置く。
誤解されないようにするためだ。
それでも、凡じゃない人が、その女性に触れたらどうしますか。
しかも、ちょっと不埒な意図を持って、触ったらどうしますか。
そして、その触った場所に凡の手が近かったら、どうしますか。
そんなことを考えると、知り合いの両手をあげて電車に乗るという事は頷ける。
でも、その両手をあげている自分を、見ている人が確かにいるという保証はない。
今手は上にあっても、お尻を触った後に、手をあげたと取られるかもしれない可能性を含んでいるのである。
だったらどうしますか。
その上げた手を、何も起こらない状態の時に、周囲の人に認識してもらう必要がある。
私は、ずっと手をあげていますよってね。
それについて最も簡単な方法は、両手をブラブラと振ることだ。
ここです、ここです、私の手はここにありますよって。
そんな用心深い人が増えてくると、電車に乗る人はみんな、両手を上げてブラブラと振ることになる訳で、車内の半数が両手をブラブラ、ブラブラ。
どうせなら、車内に阿波踊りの音楽でも掛けて欲しいね。
そうだ、阿波踊りの練習も必要だな。
踊る時は、ちゃんと踊りたい。
いや、しかし、凡は踊りやダンスが苦手である。
寧ろ、阿波踊りの車内音楽はない方がいいか。
無音で踊る阿波踊り。
静かな車内に電車のモーターの音だけで踊る阿波踊り、幻想的だ。
まあ、その辺のことは置いておいて。
でも、電車の中の痴漢なら、誰でも想像できるものでありまして、対策も事前に用意が出来る。
阿波踊り作戦。
でも、想像もしていない状況なら、対策を立てようなんて考えないですよね。
凡も、立てていなかった。
金沢の出来事であります。
鈴木大拙館から、金沢21世紀美術館に移動したときの話だ。

画像

この21世紀美術館は、凡にはその良さがよく解らなかった。
それで、何処かへ行こうと、美術館の前に出ると、鈴木大拙館に向かう時に見かけた赤色や黄色、青色の透明なアクリルのような素材で出来たオブジェあった。
これについても、その良さは分らないけれども、その前に来たら、記念に写真でも撮りたいなという形と色合いをしている。
凡もその前に来て、どの割合で色を重ね合わせたら綺麗かなとか、青空と一緒の方が面白いかなと、デジカメで写真を撮っていた。
それで、まあこんなものかなと気が済んで立ち去ろうとしたときに、凡に向かって足早に2人の警察官が近づいてきた。
「今、何をしてましたか?」というのである。
「え、写真を撮ってましたけど。」
「じゃ、カメラを検めさせてさせてください。」と来たのだ。
何のことか分らずにいると。
「あそこに座っている女の子を撮ってませんか。」と威圧的に説明した。
見ると、そのオブジェの近くの芝生に女子大生ぐらいの女の子がスカートで体育座りをしていた。
その女の子のスカートの中を写真で撮ってたんじゃないかというのです。
こんな時に、その警官にハッキリと抗議することができるだろうか。
相手の威圧的で不遜な態度に対して、失礼であるという事が出来るだろうか。
凡は出来ない。
そして、出来なかった。
兎に角、今は、不遜で、権力を持った警察官に疑いを掛けられているのである。
凡は、自分の身の潔白を証明することしか思いつかなかった。
「じゃ、どうぞ見てください。」とカメラを素直に渡して、ご丁寧にも画像の拡大の仕方まで説明をして見てもらった。
勿論、凡は女の子の写真なんか撮っていないので、疑いは晴れたのではあった。
そして、帰り際に警官が、「紛らわしいことをしないで下さい。」と言った。
その後ろ姿を見ていると、今度は女の子に声を掛けて、注意をしているようだ。
しかし、その瞬間に女の子が凡を見た。
推測するに、「そんな座り方をしたら、あんな中年のヘンタイにイヤラシイ写真を撮られるよ。」なんて言っているに違いない。
だって、そうじゃなきゃ凡を見ないだろう。
「あー。腹が立つ。」
それまでは、凡の無実を証明するために必死で協力したけれども、今考えると、無性に腹が立ってきた。
どうして、あの時にもっと警察官に抗議できなかったんだろう。
もっと、口の上手い人間に生まれたかったと思う。
それにね、そんなイヤラシイ写真を撮る場合、女の子の間近で、凡のようにカメラを上に向けたり、横を向けたり、目立つ行動をするだろうか。
普通に考えるだけでも、それは無いだろう。
凡が、もし、もしという仮定でありますが、そんな写真を撮るならば、望遠で遠くから撮るとか、小さなカメラで歩き
ながらカバンで隠して撮るとか気づかれないように撮るだろう。
それに、色のついたボードを通して撮るなんてことは、しないよね。
凡には、女の子に気づかれずに、イヤラシイ写真を撮る自信がある。
勿論、撮らないけれどもね。
でも、いつもこうなんだ。
他のシチュエーションでもね。
その時は、何も言えない。
言われて、あたふたしている間に、相手に威圧的に言われるだけだ。
そして、終わってから、無性に腹が立ってくる。
あの時、どうして何も言えなかったのかと。
ああ言えば良かった、この点を問い詰めれば良かったという、自分の不甲斐なさにまた悲しく落ち込んでしまう。
さて、折角の金沢だから、取り敢えずは、どこかの資料館でも行こうかと歩き始めた時に、恐ろしくなった。
凡は、女の子の存在を知らなかった。
なので、そんな写真を撮っていないと、安心して警察官にカメラを渡した。
ここが怖い。
女の子の存在を知らなかったのである。
怖すぎるのだ。
知らないので、凡は自由に、色んな空間に向かって写真を撮っていた。
でも、知らないからこそ、知らないで写真の片隅に女の子が移り込んでいたかもしれないのだ。
その可能性はかなり多いのではないか。
今回も、安心して渡したカメラの画像の中に、知らないで女の子が移り込んでいたら、どうなっていただろう。
間違いなく逮捕されていただろう。
そして、言い逃れも出来ずにヘンタイの肩書をつけられることになる。
しかも、盗撮という恥ずかしい肩書だ。
もう大阪に帰っても針のむしろだろう。
「あの人、盗撮魔やねんて。」
「うそ。そんな風に見えへんけど。」
「見える、見える。あんなお腹出た人が、盗撮するんやで。」
「そう言えば、鼻の下いつも延ばして、エッチな目で私を見てるわ。」
「きゃー。気を付けや。」
「怖いわ。あの盗撮魔。」
なんて、女の子が陰で噂するようになって、仕事にもいけないよ。
そうだ、ミニボンは信用してくれるだろうか。
「今度また、東京にみゆきさんのコンサート行ってくるね。」
「何言ってるの。みゆきさん、みゆきさん言うて、また東京の女の子のスカートの中、撮りに行くんちゃうやろね。疑われることしたら、あかん。そやから、みゆきさんのコンサートはダメ。」なんてね。
そんなの最悪だ。
盗撮の肩書は仕方ないけれど、みゆきさんのコンサートは行かせてほしい。
いや、仕方ないことはない。
濡れ衣なんだから。
それにしても、ミニボンも信じてはくれるだろうけれど、ミニボンもまた友達に肩身の狭い思いをすることになる訳で、これはもう耐えられない。
そう考えると、普通に行動している、身近な、ちょっとした行為が冤罪に繋がるということだから、その対策を用意しておかなくちゃいけない。
カメラで写真を撮るときもね、誰でもが写真を撮っている凡を認識できるようにする必要がある。
ここに写真を撮っている凡がいますよってね。
だから、コソコソと変な写真を撮っている訳じゃないですよってね。
その為には、大きな動きが必要だ。
カメラを抱えて、そのカメラを大きくグルグルと回したりね。
「イエース。」とか突然に大声を出したりね。
それを自然に見せるには踊るのもいいか。
カメラを持って、マイケルジャクソンのムーンウォーク。
いや、そこまでは無理か。
じゃ、阿波踊りか。
でも、どっちにしても踊りやダンスは苦手である。
写真を撮るのみ一苦労だ。
それにしても、今思い出しても腹が立つのでありまして。
どうしたらいいのだろう。
冤罪にならなかっただけでも、いいというものだろうか。
情けないね、凡。
(実際に撮ってた写真は、こんな感じ。)

画像
画像

コメント

  1. ゆけむり より:

    いや~、これは腹が立ちますね
    疑われた事にも腹が立ちますが、警官が言った紛らわしいこちしないでという言葉に腹が立ちますね
    大変失礼しました
    御気分が悪くなった事お詫びしますぐらいの事を言うべきですよ
    それと自意識過剰な女学生、この女学生も自分を写されていたと勘違いしたからこんな事になった訳で、本来なら謝るべきですよね
    そもそもスカートで体育座りをする方がどうかしている
    あ~、気分悪いですよね
    しかし偶然でもその女が写りこんでいなくて良かったですよね
    万が一ちょこっとでも写り込んでいたら、変な言いがかりを間違いなくつけられそうですからね
    電車の中で痴漢に間違えられたら、あるいは疑いを掛けられたら
    疑いを晴らすのは簡単ではないでしょうね
    考えると恐ろしいですよね
    自分はちょっとシチュエーションが違いますが、スーパーで警備員が陰からこちらをうかがっているんです
    最初は気が付かなかったんですが、どうも自分の事を監視しているように感じたんです
    そうです、万引き犯かと思ったんでしょうね
    カゴを持たず、たしかどこに買いたい物があるのかウロウロしてたんです
    その時は腹が立って警備員のところに行き、何見てるの?万引きするか見てるの?
    そんな事はしないからと言ってやりましたよ
    自分が万引きするような人間に思われた事が情けないやら悔しいやら、だから凡蔵さんの気持ち分かりますよ
    こんな事があると、金沢の事がキライになりそうですよね・・・

  2. 凡蔵。 より:

    ありがとう、ゆけむりさん。
    腹が立ちますでしょ、私の気持ちを分かってもらえて良かったです。
    まあ、警察官という職業だったら、そういう人を疑うという行為は仕方がない部分があるかもしれませんでも、もし間違っていたら、いくら警察官でも、一言謝ってもよいですよね。間違えてスイマセンぐらいは言っても良いと思うんですね。それを紛らわしいことするなというのは、ちょっと勘違いしていると思うんですよね。
    でも、偶然にでも、その女の子が写ってなかって助かりました。ホント、あの場面で、ひょっとしたら偶然に写り込んで連れていかれる人もいるんじゃないかと、そんな人もゼロじゃないと思いますね。
    しかも、この後に、街をブラブラしていると、この警官2人が、自転車を盗んだんじゃないかと気の弱そうな青年を職務質問してました。それで、その横を、これは絶対に何か悪いことをしているぞという風体のグループが、周りを威嚇しながら歩いて行きましたが、警察官は見ないふりをしてましたね。
    一体、金沢の警察はどうなってるのかと、これまた腹が立ちました。
    んでもって、ゆけむりさんも万引き犯かと監視された話。
    これなんかも、腹が立つでしょうね。もし、それで何か職務質問のようなことをされたら、それって人格を否定されたようなものですよね。
    ちゃんとした人間じゃなくて、万引きをするような人間だと、思われた訳ですもんね。
    兎に角、人には疑われないようにしなきゃ、大変な事になりますよね。

タイトルとURLをコピーしました