ゆったりとしたシートに体を預け、機内の空調の排気音を心地よく聞きながら、今まさに自分が地面から高く空中に浮きあがり、ものすごい高速で地面と平行に移動していることを想像する。
こんな空中に快適に座っていることが、不思議だ。
さて、そろそろプレミアムなフライトも終わりに近づく。
気持ちを地上に戻すために、ANAプレミアムブレンドコーヒーを頼んだ。
メニューのコーヒーの文字の前に、プレミアムブレンドと付くところがいい。
コーヒーと一緒に、クッキーも頂く。
芽吹き屋「穀」クッキー。
岩手県花巻市で作られているこのお菓子は美味しかったです。
ミニボンもスチュワーデスさんに、美味しいっていったら、おかわりを呉れました。
しかし、このクッキーは只者ではないのであります。
個包装のその下部に、「PREMUM CLASS ORIGINAL」の金色の文字が印刷されている。
つまりですよ、このクッキーがどれだけ美味しくても、どれだけ食べたくても、このプレミアムクラスに座ったものしか口にすることが許されていない正にプレミアムなクッキーなのであります。
プレミアムなクッキーにプレミアムなコーヒー。
貧乏人は、今にも満面の笑みになりそうなのを、スチュワーデスさんに見られるのが恥ずかしいのでクールを決めこんで一口飲んだ。
それにしても、と凡は思うのです。
それにしても、凡と言うのは欲深い。
この欲はどこから来ているのだろう。
脳なのか、何なのか。
ゆったりとしたシートで考えてみるに、凡という存在は、肉や骨や、そんなもので出来ている。
そして、その肉や骨はタンパク質やらカルシウムなどから出来ているのだ。
そのタンパク質などは、アミノ酸から出来ていて。
アミノ酸は、いくつかの分子から出来ている。
分子はいくつかの原子がくっつきあったものであります。
さて、その原子は原子核とその周りを回っている電子から出来ている。
その原子や電子もまた、もっと小さいものから出来ているのかもしれない。
この電子と言うものも不思議なものだそうです。
学生時代に教えてもらったのは、原子核の周りを電子と言う丸いものがぐるぐると規則正しく回っているというものだった。
しかし、この電子というものは、形があるものなのか形がないものなのかなど、まだ分らない部分もあるようですね。
しかも、人間が観察してないときは、規則正しくではなく、適当に動いているようです。
科学は楽しい。
もっと勉強していれば良かったと思う。
それにしてもだ。
原子核も電子も、大変に小さな存在だ。
しかも形が無いかもしれないという。
仮にだ。
仮に形があったとしても、すごく小さい。
とすればなのです。
その他の部分はなんだろうと思うのであります。
原子核と電子の、その存在している場のほとんどは、何もない空間ということになる。
スカスカの空間。
人間の何パーセントかは水で出来ているなんてことを聞いたことがある。
でも、そうじゃない。
人間のほとんどは、空間で出来ているのであります。
スカスカの空間で出来ている。
なのにスカスカの空間が、プレミアムクラスのシートに座って喜んでいるのであります。
理解不能な現象。
このスカスカは何も凡だけではない。
今座っているこのプレミアムなシートでさえ、飲んでいるコーヒーだって、よくよく分解してみると、すべてスカスカの空間なのだ。
♪スッカスカのスッカスカー。♪
メロディを付けて歌ってみた。
意味のない行動。
凡は突き詰めると、スカスカの空間なんだよね。
スカスカの空間が、あれが欲しいこれが欲しいなんて、どういうことだ。
凡のノイローゼは、シャンパン2本ではまだ治りそうにないようである。
ただ、原子核と電子が結びついて、分子が出来て、そこからプレミアムのシートにならずに、凡と言うダイナミックな生命に結実していった奇跡を楽しみながら、残りのコーヒーを飲みほした。
それにしても、プレミアムクラスは楽しいなあ。
スカスカの凡は嬉しかった。
コメント
やっぱりプレミアムクラスはこうでなくっちゃね!
コーヒーやクッキーもプレミアムってのが、実に優雅な気分にさせてくれる事でしょうね~
あ~、羨ましいですよ~
ありがとう、とっちゃん。
ゆったりとしたシートでコーヒーもいいですよ。
でも、やっぱり乗っている時間の長い路線がお勧めですよ。
せっかくのプレミアムでも、時間が短かったら、ちょっともったいないような。